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ブラッドドールとヴァンパイア  作者: 詩月結蒼
二章
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二章⑥

 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎




「ごしゅじんさま……っ」


 朝食の時間に明梨はやってきた。


「どうしたんだ、明梨」

「あの、わたし、もしかして……」

「ああ、昨日のことか。よく眠れていたようでよかったよ」


 圭にとってはさほど重要なことではない。


(幼児は寝るのが仕事だと言うしな。疲れたいたんだろう)


 と、普通のことだと思っているのだが……。


「ほんとうに、もうしわけございませんでしたっ」


 明梨にとっては重要なことだった。


「わたしは、ぶらっどどーるなのに……」

「明梨」

「! はい」

「そんなに落ち込まなくていい」

「っ……」


 それでも申し訳なさでいっぱいの明梨に、白百合が声をかけた。


「明梨様。あるじ様がそう言っているのです。さ、朝食にしましょう」

「しらゆりさま……」

「そうそう。旦那の反応をいちいち気にしてるとあっという間に時間が……」

「こ、う、しゅ、う?」

「そ、そんな顔すんなって白百合。冗談だよ、冗談」


 苦笑いを浮かべる紅秋と、疑いの目で見る白百合。


「明梨、おいで」

「! はい」


 圭に呼ばれて行くと、明梨は頭を優しく撫でられた。


「ごしゅじんさま……?」

「元気そうでよかった」

「?」


 圭の言うことはよくわからなかったが、撫でられるのは嬉しかった。


(へんなごしゅじんさま)


 すると圭が明梨を抱き上げる。明梨はなんとなく察した。


「きゅうけつですね」

「いや、違うが」

「!?」


 吸血されるかと思っていたので明梨はびっくりする。


「……そんなに血が欲しそうに見えるか?」

「ぁ、えっと、そうじゃないです」


 吸血する時は距離を縮めなければならないから、吸血されるかと思ったのだ。


「こうして撫でる方が、怖がらないかと思ったんだ」

「こわ、がる……?」

「ああ。上から見下されているように感じたら嫌だと思って」

「みくだす……」


 そんなふうには感じなかった。むしろーー


「うれしかった、です」

「! 感情がわかるのか?」

「っ、えっと……よく、わからないけど、たぶん、うれしいっておもいました」

「そう、か」


 だが、大きな進歩だと圭は思った。


「…………て……い」

「ん? なんか言ったか?」

「っ、いえ、なにも」


 明梨が何かをつぶやいたように聞こえたが、否定されたのでそれ以上何も考えないことにした。


「明梨。私は仕事に行かなければならない」

「!」

「ちゃんと帰ってくる。だから待っていてくれるか?」

「もちろんです。わたしはぶらっどどーるですから」


 明梨はそう言うと、圭の膝から降りた。


「おしごとがんばってください。ごしゅじんさま」

「ああ。……白百合、頼んだぞ」

「はい」

「紅秋は私と来い」

「へーい」


 圭は白百合から外套を受け取り、紅秋から刀剣をもらう。西洋に染まりつつあるここ、大和やまとの安全を守る騎士団の制服を身に纏い、帽子をつけ、害をなすものを討伐する剣を握り、外へと出た。

 御影圭。

 職業、大和国騎士団第二部隊隊長。


「では行ってくる」

「いってらっしゃいませ、あるじ様」

「いってらっしゃいませ、ごしゅじんさま」


 二人の式神と一人のブラッドドールを持つ、ヴァンパイアであった。




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