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ブラッドドールとヴァンパイア  作者: 詩月結蒼
二章
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二章⑤

 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎




『本当に君の血はうまいな、●●』


 圭の一つ前の少女の主人が、少女の血を誉めた。

 美食家のヴァンパイアだった。


『ごしゅじん、さま』


 一度に飲む量が多かったその主人に、少女は警告した。

 その主人が現れるのは、いつも吸血する時だけだった。


『そんなにのまれ、ると、すぐになく、なっ、てしまい、ます』

『君の血かい? それとも、君の命かい?』

『ど、ちら、も、です』


 輸血よりも吸血を好んでいた主人は、一日に何度も少女の血を飲んだ。その回数に、一度の量に、少女は耐えられそうになかった。

 自分のこともあったし、主人のことも考えて、少女は言った。


『きゅう、けつする、の、やめて、くだ、さい……っ』


 自分が死ねば主人の食事がなくなる。

 だから、少女は淡い期待を抱いていた。

ーーきっと自分を、大切にしてくれると。


『ブラッドドールのくせに、ヴァンパイアに歯向かうんだ』

『!? そうい、う、ことじゃな……、っ!』


 首元の近くの皮膚に強い衝撃が走る。噛まれていると気づいたが、その時にはもう遅かった。


『ごしゅじ、さま、ごしゅんじん、さま……っ』

『これはお仕置きだ、●●』

『いっ……あっ、うっ……』

『僕の言うことを聞け。命令だ。何も考えず、主人のために従え……!』


 前の主人との記憶はそこで終わった。少女は大量に血を吸われ、意識を失った。事に気づいたブラッドドール育成に関わる管理者によって少女は保護され、前の主人は謹慎を言い渡された。

 少女は今、新たな主人ーー圭のブラッドドールとして生きている。


「…………」


 少女の目が開く。


『今日から君は明梨だ』


 少女は自分が新たな名前を与えられたことを思い出した。

 少女ーー明梨はベッドから起き上がる。


「……ごしゅじんさまのところ、いかないと」


 圭は一つ勘違いをしている。

 ブラッドドールはヴァンパイアに忠実に従うよう育成されるが、決して感情をなくすようなことはしない。一人の人間として生きられるよう、教育される。

 明梨が感情を持っていないのは……いや、正確には感情を()()()()()()()()のは、前の主人に奪われてしまったからだ。


(ごめんなさい、ごめんなさい……)


 拙い話し方になったのも、人形のようになってしまったのも、すべて、すべてーー。


(すてないで、ごしゅじんさま)


 明梨には何人か主人がいた。その中で一番ひどいことをしたのが圭の前の主人で、一番優しかったのが圭だった。


(ひとりにしないで、ごしゅじんさま)


 優しさを知ってしまった少女・明梨は、圭を強く求め、そばにいたいと思った。




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