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神速の騎士王  作者: 天月 能
第6章 アルナイル帝国奪還編
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No.71:最終決戦-5

 魔神の力を最大限まで引き出すと契約者自身がその魔神の姿を模し、より魔神の力の奥底まで引き出せる。その代償として姿が人間へと戻るとき完全に人として戻れるかはわからない。片腕片足や顔場合によっては全身が魔神の姿から戻れないこともある。騎士団では一定の力、50%を基準として力を奮っていた。しかしアーサーは50%や70%の力では勝てないと判断し100%の力を使っている。

 アーサーの戦いぶりはまさに獣そのものだ。ただ敵がいるところに得物を振るう。刀を振るい、生成した巨大斧を振るい地面を割る。


「素晴らしいなぁ! 流石はガレス君そしてザガン。私は君らがほしくてたまらんよ!」


アーサーはその呼びかけには応じず獣のように吠え暴れ狂っている。

 暴れ狂っているのにも関わらず神速を使ったり、剣を生成しても一斉掃射はせず確実に当たるよう狙いを定めたりとどこか理性的な判断をしている。その行動こそエルネストを段々と追い詰めている。しかし根っこの部分は変わらず、折れないことを理由に刀を振り回している。そこには剣技も剣術も一切の面影はない。

 エルネストは動いていた足を止めた。エルネストから放たれる負のエネルギーにアーサーは直感的に感知し近づくのをやめた。


「流石だよ。私をここまで追い詰めるとは。実は理性があるんじゃないか?」


「……」


「ダンマリか。仕方ない。そろそろ終わらせよう」


エルネストは右の親指を少し切り血を流させた。そして人差し指、中指、薬指に小指の先に流れてきた血をつけ、スペルブックを開くと血の付いた5本の指をスペルブックのページに置いた。スペルブックは生き物のように動き出しかつて過去の世界で見たゴエティアを小さくした姿に変化し、ゴエティアはエルネストと融合した。


「本番だ、ガレス君」


エルネストはゴエティアの姿を模している。背中には翼があり、アーサーと同様鋭い爪を持っている。

 エルネストは持っている短剣をアーサーへ向けると、ビームのような閃光が一直線でアーサーの左肩を貫いた。その突然の痛みでアーサーの自我は戻り意識がはっきりとした。


「痛っ、なんだ急に、貫かれたのか」


「アーサー意識が戻ったか」


「ザガン、融合してるのに話せるんだ」


「まぁな、そんなことよりわしにのめり込み過ぎだ。もっと気楽でいろ。わしに飲まれても知らんぞ。傷は修復してやる」


その時初めて自我が無くなっていたことに気付かされた。100%の力の危険な部分だ。

 目の前にいるエルネストはゴエティアと融合したことで人間の時とは全く違う異質なエネルギーを醸し出している。

 アーサーは神速を使い間合いを詰め刀で斬る。エルネストは短剣で易々と受け、体内の魔力を外部へ放出しエネルギー波として放ちアーサーを押し返した。

 アーサーはまた別の方法でエルネストをに対して攻める。今度は神速を連続で使い一振りしてはまた神速を使用し背後に回りまた一振り。

 そうしているとエルネストの皮膚に刀が掠った。好機と思い、ダイダラに封印してあった神速の速度制限を全開放し、重い一突きを繰り出した。エルネストもその異常な速さには付いてこれず硬い皮膚直撃した。アーサーは力むと硬い皮膚にヒビが入った。エルネストも危機を感じ一発顔面を殴り距離をとった。


「やるなぁ、ガレス君。流石に驚いたよ。その速さ今まで手を抜いていたとはな」


「この速さは自分でも制御できるかわからないから今まで封印してた。けどもう終わるんだ。なら制御不能覚悟で突っ込むしかないと思った」


「もう終わるか。そうだな。いやそうなるだろう。私も体にヒビが入れられるとなると黙ってはいられない」


エルネストは手のひらに負の魔力収束し球状にした。ドス黒い色をしており、見るからに危ない。


「風よ、全てを撒き散らし風神のごとく荒れ狂え」


アーサーは風の魔術を剣に纏った。しかし魔力もあまりない。それによりいつもの力強さがない。


「弱々しい風だ。見るに耐えんな」


「仕方ないだろ。魔力があまりないんだから。でもやれる限りはやるつもりだ」


「見るに耐えん。だから小僧にこれをやる」


魔力がある程度まで戻った。それにより剣に纏わせた風の切れ味、威力が上がったのがわかる。


「前契約者が死ぬ前にわしに残した遺産だ。もしもの場合に取っておいてくれとな」


「ほんと有難いよ。ありがとう、前任者とザガン。これで貫ける!」


アーサーは風の魔術をできる限りの力を使い収束し一点に集中させた。


「これで終わりだ。ガレス君」


エルネストはドス黒い球状の魔術を放った。アーサーも準備ができた。


「終わるのはそっちだ、エルネスト! 食らえ! アモネス・ヴリヒスモス!」


一点集中した風の魔術はレーザーのように一直線に放たれた。その魔術はついにドス黒い球状の魔術を貫きエルネストの硬い左胸を貫通させた。ドス黒い魔術は貫通と同時にその場で発動された。アーサーは神速でその魔術の効果範囲から瞬時に離れた。

 ドス黒い魔術が消えると同時に、一世一代のつもりで全力で神速を使いエルネストに向けて渾身の一突きを繰り出した。その突きは先程貫通した左胸に刺さった。アーサーはそこから心臓にかけて斜めにに斬りつけエルネストから刀を抜いた。

 エルネストはその場で背中から倒れた。アーサーは完全魔神化から開放されたが、右腕だけ魔神化が残ってしまった。


「最後は意外と呆気ないものだ。君の勝ちだ、ガレス君」


「アーサーでいい。これでお前の計画も全て終わりだ。けど、戦争を止めたいという意思は認める。そして多分これから造られる国もその意思は風化しない。いや、させない。俺がその戦争を止めてみせるよ」


「ははっ、それは有難いことだ。なら私も死ねるというものだ。……アーサー君、私が築き上げた科学技術だが、全て皇帝の部屋に残してある。もちろん爆弾のことも。それら全てを君に託す。どう使うかは君が決まるといい。捨てるも良し、利用するも良しだ」


「それは要相談するよ」


エルネストは静かに笑い、その場で息を引き取った。

 騎士団員や大和国のメンバーがこちらにやってきた。どうやらそちらも終わったようだ。そしてディオニスの姿もある。


「よく頑張ったな、アーサー」


「いえ、そんなことは」


「エルネストも1人の皇帝として生活基準を上げ、そして他国の戦争をやめさせるよう働きかけ続けた。平和を願うものとして、エルネストはよくやった。エルネストの意思はこれからもずっと我々の中にあり続けるだろう」


全てが終わった。エルネストは立派な墓に埋葬された。そしてスペルブックはその場で焼かれこれで魔神ゴエティアは姿を消したことになる。おそらくもう二度と現れることはないだろう。これからは暴れた分の国の復興及びこれからの国の在り方を決めることとなった。長い様で短い戦いは幕を閉じた。



今までありがとうございました。次回で最終回です。

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