No.69:最終決戦-3
アーサーと紅丸は城門まで来た。目の前には殺気タラタラの男が1人いる。紅丸はアーサーを先に行かせた。
「その体にある痣みたいなのは魔神の力を使ってる証だったりするのかな」
「ヴゥゥゥ……」
「喋れないのか。まるで獣のごとき目と殺気。手には大きな戦斧。これは気合入れないと死んじゃうな。けど僕の雷の前では全てが消し飛ぶ。覚悟しなよ。喋れないおじさん!」
敵は紅丸に猛突進を仕掛けた。紅丸もすぐに刀を抜き迎え撃とうとした。戦斧が持ち上げられ振り下ろされる瞬間、刀では対抗できないと判断して避けた。戦斧は地面を深く抉った。紅丸はその瞬間を狙い刀で突きを放った。しかしその突きは腕にある硬い鎧で防がれた。そうしている間にも戦斧は持ち上げられ今にも振り下ろそうとしている。
--まだだ。こんなとこで終わらない!
「雷光・爆刃!」
雷が刀の先に集中し、それは留まる事が出来ず暴発し磁力が反発し合うようにお互いが爆発と共に勢いよく離れた。
「はぁはぁ、危なかった。物凄く硬い鎧に、刀で対抗すると麩菓子みたいに折れそうな、勢いのある戦斧。相性悪すぎだよ、ほんと」
アーサーに導かれて、地下から出てきてから10年間。他の雷皇の皆に追いつこうと死ぬ気で努力してきた。けれどその努力も今この瞬間無になりそうな、そんな強敵を目の前にしている。勝てる要素があまり見当たらない。刀、剣技、魔法もあの硬さ、そして気が狂っていてもなお残る冷静さの前では使えない。特殊体質の『狂気』も元から狂ってる相手に使っても無駄だろう。しかしただ1つだけあった。代々引き継がれきた土御門家最高にして最強の魔法“雷光・武甕雷”これなら、いやこれしかないと紅丸は考えた。
「行くぞ、覚悟しろ。雷神よ、力を貸してくれ」
紅丸の腕に雷が帯び始めた。雷はバリバリと激しく鳴った。
「雷光・武甕雷!」
紅丸から放たれた“雷光・武甕雷”は敵に直接当たった。しかし敵は何ともかく防御の姿勢で立ち無傷だった。
「そんな、あれを食らって無傷なんて……」
紅丸はすぐに倒せなかったその原因がわかった。敵の魔神はおそらく防御に特化したもの。しかも体だけを硬くするのではない。鎧も身につけているもの全てを硬化させている。
「どうやったらあれに勝てるか分かんない。手は尽くそうとしてもどれも無理そうだ。ごめんアーサー、皆んな。勝てそうにない」
紅丸は膝を崩した。必殺すら効かない化け物に絶望感を抱いた。紅丸は顔を下ろし目を瞑った。
目を開くとそこは何もない真っ白の世界。何が起きてるんだと言わんばかりの顔をしている。すると突然雷の塊のようなものが10コ紅丸を囲んだ。その塊は形を成し人へと変化した。皆が鎧に甲冑を被り仁王立ちしている。10人の中にはまだ死んでいない父親、土御門環もいる。
「何で父上まで」
「これは雷光・武甕雷に刻まれた魂。代々引き継がれてきた我々の先祖の魂だ」
環の言葉に少し驚いた。つまりここにいる10人は将軍でこの魔法を受け継いできた人たちだ。その内の1人が紅丸に近づいてきた。
「何弱気になっておる! お前も雷神を継いできたものなら根性みせんか、馬鹿たれが!」
紅丸は突然の罵倒を受け頭が混乱してきた。
「あーぁ。これだからおやっさんは嫌なんだよ」
「何だと! 我が息子であろうと今の言葉聞き捨てならん! そこに直れ! 死んでなお治らんかったその根性叩き直してやる!」
「あーあー、聞こえねぇよ。そんなことより紅丸くんだろ? 悪いねぇ、わしのおやっさん」
「えっと。あなたは」
「わしか? わしは土御門真多。7代目にして大和国を栄さした大将軍で戦人」
7代目は歴史書で読んだことがある。大和国に魔法を輸入した将軍であり、アルナイル帝国と手を結んだもの7代目。以前から魔法は“雷光・武甕雷”だけだった。それは初代がたまたま発動させたものと言われている。7代目が輸入した魔法はしっかりとした理論付けされたものだ。
「お前さんの雷神はまだまだ半端。お前さんにとって雷神は何なのか。それをはっきりさせんと始まんねぇんだ。紅丸くんにとって雷神は何だ」
「僕にとっての雷神は……」
そうだ忘れていた。紅丸にとってこの魔法は何なのか。ずっと強くなるために頑張ってきたが、その過程で本来の意味を忘れていた。
「分かったのなら良しだ。この魔法はなぁ、受け継がれてもなお進化し続ける魔法だ。進化が止まったらこれはただの雷を放つ魔法に過ぎない。雷ってのは、激しく鳴り響き、全てを貫く刃だ。刃は研がねぇとなまくらになっちまう。だからわしら将軍は常に戦に身を投じその刃を研いできた。だが紅丸はどうやらまだ戦を知らんらしい。自分を磨いても死線を潜らねぇと意味ねぇんだ」
7代目の言う意味がわかった。まだまだ半端で甘かったんだと。
「7代目の言う通り、11代目はまだ戦を知らん」
話したの後ろにいた将軍。見ただけでわかる初代将軍だ。その貫禄は死んでもわかるほどのものだ。
「戦は我々将軍にとって自分を極めるためのものとした。その中で死線を潜り強く、そして賢くあろうとした。今までのお前に死線を潜ぐる機会はあったか? 無いのなら今この瞬間がお前にとっての戦であり死線だ。潜らなければ死ぬ。死ぬかもしれん瞬間こそがその魔法を強くする。我々の出来るのはこれまでだ。後はお前次第」
「待って将軍様。まだ聞きたいことが!」
手を伸ばそうとすると歴代の将軍は雷のように消え、真っ白の世界も無くなり元の場所へと戻ってきた。
紅丸はすぐに状況を把握した。あれは夢じゃない。本当の出来事。敵も動いてないところを見るとほんの一瞬の出来事らしい。でもお陰で何をすべきか理解した。
「僕にとってこれは大切な人たちを守るためだ。忘れててごめん。だけどもう忘れない。行くぞ。この一発にかけてやる!」
紅丸の腕から今まで放ったことないくらいの雷が帯び音もキーンとするような音を発している。敵はその雷の魔力を見て咆哮し猛突進してきた。紅丸はギリギリまで待ち敵が戦斧を振り上げた時、一気に敵の間合いに入った。
「食らえ! 雷光・武甕雷・手刀!」
紅丸は手刀を繰り出し薙ぎ払った。敵はその勢いで吹っ飛んだ。土煙を上げその中から力強い咆哮が聞こえてくる。それは土煙を一掃した。敵は鎧を砕かれ血が出ている。にもかかわらずまだ立っている。
「何でそんなにまで……。わかった。なら次のこの一合で決める。楽に終わらしてやる!」
紅丸はまた雷光・武甕雷の準備に取り掛かった。しかも先ほどよりも強く鋭く。
最後の一合、両者は敵と相対し突っ込んで行った。
「これで終いだ! 雷光・武甕雷・手刀一閃!」
紅丸は雷のような勢いと速さで敵の胸を貫いた。貫いた手を抜くと敵は倒れ決着がついた。貫いた穴は次第に塞がっていき、完治した。
「僕はやっぱり少し甘いのかもね。敵の傷を治すなんて……。魔神も消えたっぽいし、しばらくは動けないだろうから、とりあえず任務終了」
紅丸は勝利を収めた。残るはアーサーのみとなった。最後の戦いが始まろうとしていた。




