No.66:最終決戦開幕
城での出来事をフィリクスに話した。その話を聞いてフィリクスは答えた。
「だからといってあいつらを許すわけにはいかない。アーサー、言っただろ。あいつらは僕たちの親を殺している。それが皇帝がらみかどうかはわからないがその真実だけは変わらない。僕は本当の目的を知ったところで変えるつもりは無い」
「わかってる。俺も変える気はない。せめてエルネストを打つ役目をほしい。あいつの言うことは理解はできる。そして理解できる俺だからエルネストを打つ役目がほしい」
「僕も全く理解できないわけではないよ。ただ親を殺されたからね……」
フィリクスは一呼吸おいてアーサーの目を見た。
「よしっ、わかった。エルネスト討伐はアーサーに任せる。ただしむやみに街を壊すことは許さないからね」
「わかってる。ありがとう」
アーサーはその場を離れ合同就寝所に行きそのまま寝た。目を瞑るとすぐに寝てしまい朝日が昇り始めた。
次の日、全員集まり明日決行のエルネスト討伐の集会が行われた。エルネスト本人はアーサーに、騎士団員は元騎士団員が受け持ち、それ以外はその他の兵士たちに任せることになった。
集会が終わるとアーサーは拠点を出て墓場に向かった。最期になるやもと手を合わせていく。
墓場に着いて誰もいない、アルカディア一家が眠る墓の前で明日のことを言ってみた。両親と兄姉が聞いてるわけでもないのに喋ってしまう。どこかにまだ家族の死を受け入れてない自分がいる。当たり前と言えば当たり前だが。怒りはある、憎しみもある。だがどこか実感が湧かない。どこかに逃げて生きているのではないか、など色々と考えてしまう。
アーサーはバイバイとお墓に手を振り墓地を出た。出ると椛がいた。
「何でここにいるんだ。そういえば朝いなかったな」
「ちょっと野暮用があったのよ。明日のために準備をしてるだけかしら」
「そんでたまたま墓地から出てきた俺と出会ったわけか」
「そういうことかしら」
「ならちょうどいいや。街歩かないか?」
「悪いけどそんな暇ないかしら。この街に色々と仕掛ける任務があるのよ」
「じゃあ、手伝うよ。できる範囲でだけど」
「好きにするかしら」
アーサーは椛について行った。街に何やら呪符らしきものを貼り付けている。聞けばシャルロット考案の呪符圏内の人間を指定し転移させる魔術らしい。明日は街のど真ん中で戦闘するわけだから民に被害がいないようにするための措置だ。
全てが終わる頃には夕日が沈みそうだった。アーサーの神速を使わず帝国内を歩きまわったのだから時間がかかった。
「これで終わりなのよ。明日の朝に決行し発動させる。発動はシャルロットがやるからアーサーは気にせず自分の役目を果たすかしら」
「やれることはやってきたんだな」
「全て国のためと思いやってるだけなのよ。向こうもこっちも同じかしら」
「何となくわかるなぁ、それ」
向こう、つまりエルネスト側も何年も費やしてまで、戦争を終わらすため動いている。ある意味ではこちらは私情に近いものがあるがそれでも今の騎士団員の在り方に疑問を抱く者や国の政策に異議を唱える人も多い。現に大和国や諸外国との国交も全て断ち切っている。そのため流通が非常に乏しく、人口が増えたこの国ではいずれ食糧難になるだろうとまで言われている。それを払拭しなければならない。
拠点に帰ると皆武器の手入れや作戦の確認、緊張を紛らわす為かボードゲームをやってる人などたくさんいる。明日で全てが決まると思うと身震いがしそうだ。アーサーも皆と同じように武器の確認をして気を紛らわした。
次の日朝、ついにこの日がやってきた。シャルロットが事前に交渉し一部被害範囲になるだろうと推定される地区の国民は避難させておいた。といっても杖を地面に軽く叩く程度で簡単に転移するから楽だ。
元騎士団員、兵士の前にはフィリクス、アーサー、シャルロット、ルキアノス、椛が先頭に立っている。シャルロットが音を拡張させる魔法を使い準備が整った。
「我が名はフィリクス! 皇帝エルネスト・デ・ベルナルディにより無辜の民の虐殺の容認に加え大量破壊兵器の開発。いかなる理由を持ってしても許されない。これにより今この時を持って貴様の首を狩ることを宣言する! 反撃の狼煙を上げろ!」
おぉー! と兵士や元騎士団員たちも勢い付いた。アーサーにとってフィリクスのあのような姿は新鮮さを感じる。その殺気立った勢いは止まることを知らない。アーサーもその波に乗り先陣切って駆け抜けた。目指す場所は皇帝エルネスト。ここに最終決戦の幕が開けた。




