No.65:問答
地下牢の鍵を手に入れ、アーサーは地下に向かった。道中、かなり激しく戦っていたんだと感じた。あちこちの壁が傷ついている。
地下に入り椛と合流した。案内されるまま付いて行くとそこには金髪長髪の女性、オフィーリアがいた。持ってきた鍵で扉を開け、アーサーの氷の魔術に火の魔法を使い手錠を破壊した。
「ごめんなさい、アーサー」
「何のこと?」
「お墓の所で逃げてしまって」
「あー、あれね。気にしてないから大丈夫。それよりリアが無事でよかった」
アーサーはオフィーリアの手を引き館を出て後にした。
拠点に戻るとみんなオフィーリアの帰還を大いに喜び、歓迎した。その日はみんな倒れるまで酒を飲み、その場で寝てしまった。
「アーサー、起きてたの」
声をかけてきたのはシャルロットだ。
「まぁ、あまりお酒飲まないし」
「ならこれ買ってきてくれない。実験の材料なんだけど」
アーサーは紙を渡された。かなりびっしりと書かれた材料と裏には地図が書いてある。
「何で俺が?」
「いいでしょ。私も暇じゃないの。ルキアノスも材料待ってるから急いでね」
「はぁ、わかった。行ってくるよ」
アーサーは拠点を出て地図に書かれた場所に向かった。
念のため表の道を避け裏道を使ってその場所に向かう。表は灯りで照らされ明るいが裏道は暗く人気がない。
歩いていると誰かが後ろにいる。一般人じゃない。それなりに修羅場をくぐって来ている者の足取り。アーサーは神速でその者の背後に回ったがその場所に人の姿がない。辺りを見渡していると突然口元を押さえられた。次第に頭がフラフラとしてきて意識が朦朧としてきた。アーサーの記憶はその先しばらくはない。
目を覚めるとそこは見たことのある天井に場所、懐かしさを感じる部屋。そう、皇帝の部屋だ。そしてそこには1人の男が棚の整理をしていた。
「目覚めたようだ。すまない手荒な真似をした」
「まさかお前が皇帝だったりするのか?」
「そう、私は現皇帝エルネスト・デ・ベルナルディだ」
聞いたことない名前だ。官僚級の役職に就いている人ならある程度覚えているがエルネストの名前は知らない。
「何でこんなことを。ザガンでも奪う気か」
「いや、寧ろ逆だ。アーサー君……いや、今はガレスと名乗っていたかな。我々の仲間としてこちら側につかないか?」
「理由も無しにそんなこと簡単に言えない。それにお前の下には絶対につく気はない」
「それもそうだ。なら聞くがガレス君。この星の大地の裏側ではどうなっていると思う」
アーサーは考えた。そもそも裏側に何があるのかもあまり知らない。国はあるだろうがその程度だ。アーサーは首を横に振った。
「もちろん国は存在する。そしてかつてこの国が戦争をしていたように向こうでも戦争が勃発している。私はね、それを止めたいだけだ」
「止めたいだけ? お前は戦争を起こして世界を手中収まることが目的じゃないのか。実際爆弾なんて物を作っていると聞く」
「何処の噂か分からんが何処がで勘違いを起こしているようだ。確かに爆弾を作っているがあれは最終手段だ。できる限り話し合いで済ますつもりだが向こうはそうもいかんだろうな。実際私は皇帝になる前は何度も両者の国のトップに止めるようにと促しているが一向に成果がない」
「それが本当としてもなぜ騎士団員のみんなを無理やりあんな事をしたんだ」
「おそらく彼らは私の言うことは聞かないだろう。なら魔神だけいただいてあとは野に放つ予定だったが君たちから勝手に居なくなって助かったよ。あとディオニスのことだが、悪いようにはしていない。牢にいるが三食の栄養のあるご飯にベッドを置いている。彼が要求した本ならいつでも用意できるようにもしてある」
とりあえず皇帝は無事みたいだ。それなら少しは安心できそうだ。
「さっきも言ったがもう一度考えてはどうだろうか。我々の下につくかどうか。ザガンは人を選ぶからね。私の魔術で無理やり契約できるわからない。だからもうすでに契約していて、お互いを信頼し合っているガレス君が適任だ」
「悪いけどどんな良い条件を提示されてもそっちにつく気はないよ。俺が尊敬する人はディオニス皇帝とフィリクス団長だ。2人を裏切ることは絶対ない」
「厚い信頼関係だ。素晴らしい。そうか。なら仕方ない。もう帰ってもいい。君と話せて良かった」
「話したかっただけなのか?」
「あぁそうだとも」
「もし俺たちがここを攻めるかもしれないのにか?」
「攻められたらその時はその時だ。全力で対応するとしよう。それとこれを持って行くといい。シャルロット君からの言伝なのだろう」
渡されたのはシャルロットから渡された紙に書いてあった材料だった。
「ますます、お前の事がわからないよ」
「シャルロット君の研究は私も評価しているということだ。それと城の中の人払いを済ませてある。まっすぐ帰るといい」
アーサーは材料の入った籠を持って城を後にした。
エルネストの言うこともわかる。戦争を止めるために動いていた。だがそれがどこまで真実であるかがわからない。この出来事はアーサーの頭をより一層悩ませた。




