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神速の騎士王  作者: 天月 能
3章 大剣魔学院祭『ウラノメトリア』
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No.30:前日の危機

 大和国で色々とあったが帰国した次の日アーサーはアウストラリス学院に戻り勉学に励むこととなった。大和国で出会ったリアはあの後洛陰に避難し家族とともにアルナイル帝国へと帰国していた。アーサーが休んでいた分のノートは完璧にしてくれている。ありがたいの一言に尽きる。

 朝の授業が全て終わり昼休みとなった。廊下はなぜか慌ただしく生徒が何かの準備をしている


「なぁリア、今日か明日何かあるの?」


「知らないのですかアーサー」


「知らない」


「そうですか。明日は大剣魔学院祭『ウラノメトリア』の日ですよ」


「えっ? 明日なのか。完全に頭から抜けてた。俺なんの競技出るの?」


「アーサーはチャリオットとケルヌンノスですよ」


「……」


「どうました?」


「俺、チャリオット乗れない」


アーサーの場合神速がある。これはものすごい速さで駆けることができる特殊体質だ。発動中は周りが止まって見える。実際はかなりゆっくり動いているだけだが。このように馬やチャリオットに乗るよりも自分で走った方が速いためアーサーは今まで一度も馬とチャリオットには乗ったことがない。リアたちは騎士団に入っているからチャリオットくらい乗ったことあるだろうと考えて決めたそうだ。

 その日の授業が終わるとアーサーは寮には戻らず城から離れた皇帝、官僚、騎士団の馬を管理している厩舎に向かった。理由は簡単である。そこを管理している人にチャリオットの乗り方を学ぶためだ。1日もないがやれることはやりたいというアーサーの考えだ。


「ダリウス、お勤めご苦労様」


「やぁ、アーサー。学校は終わったかい」


「終わったよ。それで頼みがあるんだ」


「なんだい?」


「明日、『ウラノメトリア』の日で俺も出ることになってるんだけど、出る競技がチャリオットなんだ。俺チャリオット乗れないから教えてほしいんだ」


「なんだそんなことか。教えるよ、ついてきて」


 ダリウスとアーサーが向かった場所はクラフト家が代々継いでいる放牧場。城壁の外にあり馬、羊、牛や鹿など沢山の動物たちがいる。


「さてチャリオットだけど、やってみると意外と簡単なんだ。注意することは振り落とされないこと。街中で行われるから道はゴツゴツしている。さらに坂道もあるからかなり激しい揺れになる。だからあまり喋らないこと。舌噛むからね。学院祭で使うチャリオットは3人乗りだからチームワークも大切になってくる」


「注意することは大体わかった。なら早速実践をやろう」


ダリウスが連れてきたのは2頭の馬と乗り場。アーサーは早速乗り込んで手綱を持ち走らせた。最初はゆっくり進んだ。そして段々と速くなりトップスピードになる頃にはアーサーはまともに乗れていない。曲がった時には振り落とされそうになり散々な結果となった。

 その日、日が沈み夜になっても練習は続いた。何度も練習していると慣れてきて大方乗れるようになってきた。まだまだ素人だがこれなら明日は乗り切れるだろう。そうして日にちが変わり学院祭当日の朝になった。



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