No.24:敵襲その3
次の日、アーサーはまた紅丸のところへ赴いた。地下の部屋に入ると紅丸は刀を振っていた。かなり汗をかいていることから長時間振っていたのだろう。紅丸はアーサーが入ってきたことにも気付かず夢中になって振っていた。アーサーは出来心で刀を抜き、紅丸めがけて刀を向けた。紅丸は咄嗟に判断しアーサーの刀を弾き天井に突き刺さった。
「わるい、わるい。ちょっとした出来心だったんだ。あまりにも夢中だったから」
「そういうことならいいけど。びっくりしたよ、いきなり斬りかかってくるなんて」
紅丸は刀をおろし鞘に納めた。びっくりしているのはアーサーも同じだ。昨日まであんな性格だったのに次の日に来てみれば顔つきがガラリと変わっているなんて思わなかった。
「そういえばなんで刀振ってたの?」
「何回も敵が押し寄せて来てアーサーがその度に敵に立ち向かうところを想像するとなんか自分が恥ずかしくなってきて、年も近いアーサーが頑張ってるのに自分は何もしないのはなんか、いやになるんだ。だから少しでも強くなって変わりたいんだ。また青い空を見たいしこの体質も制御もできようになりたい」
紅丸が初めて自分の意思で強くなりたいと言った瞬間だった。アーサーは昔の自分と紅丸を重ねた。紅丸はアーサーと似た者同士。だからこそ紅丸の言葉もアーサーの心にグッと突き刺さる。
「紅丸、君は本当に強くなれると思うよ。力もだけど心も強く立派な人になる。多分俺よりも……」
「君ほどじゃないよ。僕はまだまだ未熟だけどいつか君と一緒に戦えるように頑張るよ」
「うん、その日を楽しみにするよ」
そしてまた爆音が響き渡る。今までよりも激しい揺れだった。
「紅丸、俺は行くよ。それとこれを渡しておく。これは将軍様からの贈り物だ」
紅丸に渡したのは大きな袋と一本の刀。紅丸は受け取ると「ありがとう」と言い、アーサーはそれを聴くと地上へ出る階段を上っていった。紅丸は袋を開けると一通の手紙と新しく新調された服が入っていた。紅丸は手紙の中身を見た。
『紅丸へ。お前が生まれて16年、過酷な日々を過ごしたことだろう。生まれてすぐに母親を殺してしまい、周りの人も次々と死んでいった。紅丸はそれに耐え切れず地下に籠ることを選択した。すまなかった。父親としてお前に何もできなかった。特殊体質で苦しむお前を見て、悲痛の声を聴いて何もしてやれなかったことを許してほしい。アーサーが任せてほしいと言われた時、もしかすると変わるかもしれないと喜びの反面自分を恥じた。父である私ではどうにもできないと悔やんだ。私はやはり親として失格だ。戦うことしかしてこなかった故にお前の気持ちにも添えることができなかった。だから私は今日この国を守るために戦うことにする。久しぶりに戦うので死ぬかもしれないため新しい服と刀を添えここに全てを記します』
土御門環からの手紙は紅丸の心に響いた。手が震え、涙を流し、必死に声を漏らさないよう耐えたが我慢の限界だった。紅丸は子供のように泣いた。ごめんないさいと何回も何回も言い、少しの間泣き崩れた。
「父上、ありがとうございます。僕は父上の元に馳せ参じます。どうかご無事で」
紅丸は新しい服と刀を身にまとい涙を拭き深呼吸をした。そして紅丸は地下に籠って十数年、初めてその場から旅立った。




