No.20:剣豪の名は
目の前にいる男は和装を装っている。見た目の年は30代とみた。そして男から発せられる気がアーサーを弱気にさせている。自分は足元にも及ばないと理解はしているが後ろを通すわけにはいかない。アーサーは刀をぎゅっと強く握った。
男は刀を構えて向かってきた。アーサーも男へと向かいお互いの刀が交わった。アーサーは伊三郎の助言を実行すべく攻めたが男は易々と受け流しアーサーに向かって斬りつけてくる。なんとか避けれるものの突きの速さが尋常じゃない。この短時間でアーサーはいくつもの斬り傷を負うこととなった。
「異国の剣士もこの程度か」
「まだまだこれからだよ」
強気に言ってみたものの力に加え技量も及ばないのはわかっている。唯一優っているのは速さだけだ。今はそれに頼るしかなかった。呼吸を整え神速を使った。男の腰あたりを斬った。手ごたえはある。アーサーは刀に目を向けると血が付着してないことに気づいた。慌てて後ろを見ると斬られ一刀両断されている男が地面に倒れていた。すると突然男の下半身は灰のように崩れていき残った上半身からまた下半身が再生していった。男は何事もなかったかのように立ち上がった。
「お前、何者だ」
「ふむ、斬られたか。侮ってはいたがどうやら速さだけは一級品らしい」
その後アーサーは何度も何度も斬ったが結果は変わらなかった。アーサーの呼吸が徐々に乱れていく。
「さて、そろそろ飽きただろう。カタをつけさせてもらおうか」
男はそう言うとアーサーの神速のごとく目の前に突然現れ拳を放とうとした。アーサーは咄嗟に刀で受けようとした。しかしあまりの拳の重さに刀を手から離してしまい地面へと落ちた。
「今ので壊れないとはな。もしやと思ったがその刀、月光石でできているな。月光石が汝の手にあるということは今の将軍はよっぽど汝のことを気に入っているらしい」
アーサーは拳の重さにより手が麻痺している。男の言葉なんて聞いている余裕なんてない。それでも男は刀を持っている手を挙げた。
「黄泉の国へ誘おう、異国の剣士よ」
男は刀を振り下ろそうとした。しかし男は後方から来る何かに反応し振るのをやめ避けた。飛んできたのはハルバードのようなものだった。アーサーは咄嗟に神速を発動した。神速は自分を加速させる。その時周りはアーサーよりも遅くなり、それを利用し麻痺した手にエンチャントの魔法をかけ飛んできたハルバードのようなものを手にし男に斬りつけた。男はまた真っ二つに割れた。飛んできた方を見るとそこには伊三郎がいた。アーサーは落ちている刀を拾い伊三郎の元へ行った。
「伊三郎さん助かりました。これは?」
「これは方天戟と呼ばれているんじゃよ。それよりもまぁ生きておったとはなぁ。斎藤伊助」
「知り合いですか?」
「奴は元雷皇の1人、斎藤伊助。先の戦にて戦死したはずなんじゃがなぁ」
「伊三郎か久しいな。また会えるとは思わなんだ」
「そんなことは聞いておらんわ。伊助、まさか敵の方へ落ちたとはなぁ」
「私はとうに死んでいる。私はあの方にて蘇っただけにすぎん。主があの方でな、逆らうことはできないのだ。だから私はこちら側だ」
「なら伊助。覚悟はできているな」
「もちろんだとも。伊三郎と戦えるならこの身久しく引き締まるものだ」
伊三郎は方天戟を伊助は刀を構えた。
「剣士、斎藤伊助」
「大和国雷皇が1人、東郷伊三郎。いざ参る!」
掛け声と共に2人の武器はぶつかり合い死闘が始まった。アーサーは何も出来ずただその場で見ることしかできなかった。




