No.19:敵襲その2
螺旋状に階段を降りて行く。暗いがほんの少し灯されている。コツコツと音が静かな空間に響き渡り余計に恐怖を意識させられる。階段を降りきるとそこにはもう一つ扉があった。先頭にいた将軍が重そうにその扉を開けると今まで以上に寒気が全身を走り、それ以上入るのを躊躇った。アーサーは一度深呼吸をし覚悟を決めて扉の奥へと進んだ。
「だれですか?」
「私だ紅丸。それとお客人が2人いる」
声の主こそ土御門紅丸だった。おそらく自分で切ったであろう整っていない黒髪、それに全体的にやつれている。
「こんな所に来たら死んでしまいます。早くお帰りを願います」
「私たちなら大丈夫だ。魔法により一時的ではあるが平気だ。それより紅丸、お前はこれから外に出て来てもらう。今国が大変なんだ。お前の力も必要になってくるだろう」
「私が外に出たら人が死んでしまいます」
「そうも言ってられない。さぁ出る準備を」
「これ以上、人を殺したくないんです」
「大丈夫だ。魔法で周りには被害が出ないようにできる。さぁ」
「嫌だと言っているんです!」
紅丸は突然大声で叫んだ。声がその全てを語っているようにも思えてくる。細く、震えており人の死に恐怖を感じている声だ。本来は慣れてはいけないものだが紅丸からはそれがよく如実に表れている。その悲痛の叫びを聴いたアーサーはあることを決めた。
「シャルロット、将軍様。紅丸と2人で話させてくれませんか」
小声で言った。将軍とシャルロットはやめなさいと言われたがどうしても話さなければならないと思った。アーサーには紅丸を解放できると確信できた。将軍とシャルロットは渋々了解し2人ともその部屋を後にした。アーサーは紅丸に近づいていった。
「えーと、紅丸って言うだっけ」
「君はだれ」
「俺はアーサー。お客人だよ」
「なら早く帰るべきだ。君も死んでしまうよ」
「大丈夫、大丈夫。優秀な魔術師さんのお陰でなんともないさ。それより特殊体質持ちで発狂して死しんでしまうものなんだって聞いたよ」
「そう、だから早く帰った方いい」
「そうつれないこと言うなって。大変だよなぁ特殊体質って」
「君も持っているの」
「まぁね。神速っていう体質で異常な速さで駆けることが出るんだ。その時は周りの景色なんて止まって見えるくらいに。今はもう制御できてるけど昔は全然言うこと聞かない体質だったんだ」
「そんな君はどうしたの」
「必死に制御できるまで頑張った。制御できない頃壁に強打して死ぬかと思った時もあったし足滑ったら物凄い勢いで地面に転がるしで大変だったよ。毎日が大怪我さ」
「でもそれで周りの人は死なない」
「そう、周りは死なないよ。でも周りにすごく心配はかけた。紅丸、今君は昔の俺と同じなんだ」
「同じ?」
「そう、同じ。こんな所でずっと閉じ籠っても何も変わらない。前進してこそ人だよ」
「でも進み方がわからない」
「わからないなら俺が教える。それに制御できない体質なんてないよ。絶対」
紅丸と話すアーサー。もう少し続けれると思っていたがそうはいかなかった。突然天井が揺れた。何があったんだと考えているとエリスの魔法で連絡が来た。どうやらまた敵が押し寄せてきたらしい。前回とは比べものにならない戦力だ、と報告が頭の中に直接きた。
「ごめん。どうやら行かないといけないから今日はここで。出たくなったらいつでも出てきなよ」
アーサーは走って螺旋状の階段を上がっていった。
「また、来てくれるかな」
そう言って紅丸はその場でとどまった。
アーサーは全力で上まで登った。かなり遠くの方からは煙が上がっている。すると突然異常な魔力がアーサーの全身を走った。場所はおそらく街中。急いでその場に向かった。
そこは彩葉の店の近くだ。一本道を走っていると前方に人が立っていた。アーサーは走るのをやめ刀を抜いた。抜くと立っている男は目を開いた。
「汝が私の相手か」
「あなたがこの襲撃側ならそうなります」
「ならば汝は敵。剣を振らねばならないか。覚悟せよ少年。気を抜くとその首、貰い受けるぞ」
尋常じゃない剣気と殺気を放つ男。近くで対面するとわかる。幾たびの戦場を駆け抜け修羅場を自分の倍抜けて来た男だと察知した。それでもアーサーは負けるわけにはいかなかった。自分の後ろには城があり皇帝と将軍がいる。負けたらここを通すことになる。それだけはさせないとアーサーは決意した。




