第5話:東條さんの学校生活
side:新山緋色
東條さんの危機を察知してから二日。
東條さんが学校にやって来た。
「みんな心配かけてごめんね。風邪引いちゃってさ。」
東條さんは、周りに集まった生徒たちにそう言って笑っていた。
「東條さんは強いな。」
無意識にそんな言葉が口から漏れる。
だってそうだろう。
義父に襲われそうになってから、まだ二日しか経っていない。
それなのに、あんな風にみんなの中心で笑っていられるんだから。
本当にすごいと思う。
「ところでさ。みんなに聞きたいんだけど。」
東條さんが周りの生徒たちにそう言った。
「彩香ちゃんって子を知ってる人いない?」
やべぇ。
どうしよう。
どうしよう。
……って、ピンチなはずなのに危機察知は反応していない。
なぜだ。
……ああ。
俺は教室の隅にいる陰キャだ。
そもそも疑われるどころか、話題にすら上がらないのか。
…………。
自分で考えていて悲しくなってきた。
まぁ、俺のことなんてどうでもいい。
今は東條さんだ。
あんなことがあったのに笑えている。
本当に強い。
でも――。
辛くないのかな。
無理していないのかな。
俺にも何かできることはないだろうか。
◇◇◇
それから数日が過ぎた。
俺は東條さんに話しかけたりはしなかった。
いや、できなかった。
教室の様にいるような陰キャが学園のアイドル東條彩乃に話しかけるなんて難易度が高すぎる。
だが、だからといって気にしていなかったわけではない。
むしろ逆だ。
俺は東條さんを気にしている。
朝、教室へ入ってくる姿。
友達と楽しそうに話している姿。
昼休みに笑っている姿。
放課後に帰っていく姿。
特に、最初の数日は心配だった。
無理をしていないだろうか。
精神的に追い詰められていないだろうか。
とそんなことばかり考えていた。
だが、東條さんは強かった。
いつも通り笑い。
いつも通り友達と話し。
いつも通り学校生活を送っていた。
ただ1つ見てて気づいた事がある。
たまに怖い目をしている時があった。
なんて言うんだろう?
迷子の子供?
なんか違う。
そうだわかった。
執着している物が見つからない子供みたいな。
……………。
流石に気のせいだよな。
もしかしたらやっぱり東條さんは無理をしているだけかもしれない。
もう少し見守っておこう。
◇◇◇
二週間後。
俺は東條さんを助けられたことで、少し調子に乗っていたのだろう。
だから――。
こんなことになってしまったのかもしれない。
今俺は囲まれている。
俺を囲むのは数人の男子生徒。
「お前最近、彩乃のこと見過ぎで目障りなんだよな。」
俺を囲んでいる男の1人がそう言った。
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