第20話攫われてからの緋色
時は一か月前に遡る。
◇◇◇
side:新山緋色
夢を見る。
急に学校を停学になったと思ったら天堂家に雇われてメイドになり、お嬢様を殺しに来た暗殺者と戦い――そこで……。
「って! それ夢じゃねーわ!」
俺は上半身を起こすと同時にそう叫んだ。
「って! 痛ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
起き上がった瞬間、今までに感じたことがないほどの激痛が走る。
「な、なんだ!? なんでこんなに痛いんだよ!」
腹が痛い!
なんだこれ?
食あたりか?
いや、なんかそういう感じじゃないんだけど!
「なんだこの痛み!? 本当に痛いんだけど!?」
その時、唐突に夢の続き――いや、現実を思い出した。
「あ、思い出した。俺、撃たれたんだったわ。」
「あー、なるほど。今まで危機察知で痛みを回避してきたから、俺って痛みに耐性ないのか。」
そんなしたくもない自己分析をさせられる。
「うるさい。」
唐突に横からそんな声が聞こえた。
「誰だ!?」
「ひより。」
……ってなんだよ。
俺を殺そうとしていた月城さんじゃないか。
それなら安心――
「って! できるわけあるか!」
「なんだこの状況は!? てかなんで俺は死んでないんだ!?」
「ターゲットじゃない。」
「……? 殺さなかった理由か?」
「そう。」
月城さんが頷く。
俺は殺すターゲットではなかったから殺さなかった、ということか。
「なるほど?」
「ちなみにターゲットっていうのは?」
「天堂紫苑。」
やっぱりそうだよなぁ。
どうしようかな。
「それってやめてもらえたりは?」
「うん。」
「そうですよね。できるわけないで――……え?」
「あ、できるんですか?」
「うん。もうやめてる。」
「……? それはなぜ?」
「依頼者が死んだ。」
「あ、なるほど。」
「…………まあ、ならよし。」
うーんでも、暗殺者がいなくなっても、まだ裏切り者は残っているんだよな。
まあ、あの底知れないお嬢様なら、俺がいなくてもそっちはなんとかするだろう。
退学の件の借りも、一回暗殺者を退けたことでチャラと考えていいはずだ。
「ふぅー。なら俺の仕事はもう終わりかな。」
終わりでいいよな?
まだ働くのか?
まあ、それはこの暗殺者が隣にいる状況を脱してから考えればいいか。
「えっと、月城さん? ちなみに僕を家に帰してくれたりは?」
「しない。」
「秘密知るまで帰さない。」
秘密って危機察知のことだよなぁ。
はぁ……。
どうしよう。
とりあえず惚けてみるか。
「……? 秘密? 何のことですか?」
「嘘。ダメ。」
銃創の辺りをぐりぐりされる。
「痛い!? 痛い痛い痛い! やめてーーーーーー!!」
「大丈夫。処置はできてる。死にはしない。」
わあ。
出たよ。
「僕、死ななきゃいいって考え方、嫌いなんですけど。」
「うるさい。教えて。」
「う、うわぁーーーーーーーーーーー!!」
その声を最後に緋色の声を聞いた者はいなかった。(嘘)
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