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第16話柏野楓の曇らせ(中)

side:柏野楓(メイド長)


◇◇◇


彩香が攫われてから3日が経った。


まだ彩香は見つかっていない。


「見つからない……。」


もう3日も経つのに。


生きているのかどうかさえわからないのに。


「どうすれば……。」


コンコンコン。


私の部屋の扉がノックされる。


「はい。」


 そう返事をすると、お嬢様が部屋に入ってきた。


「楓。あなた、ここ1週間休んでいないでしょう。少しは休みなさい。」


私を心配してくださっているらしい。


「お嬢様。ありがとうございます。でも、大丈夫です。」


「それより、メイド長の仕事を疎かにしてしまい申し訳ございません。」


「何を言っているのですか。有給申請などしなくていいと言ったのに、わざわざ申請したのはあなたでしょう。」


「今のあなたは有給を使っているのですから、そんなことは気にしなくていいのです。」


「はい。ありがとうございます、お嬢様。」


お嬢様はそう言って部屋を出ていった。


 私は天堂グループの力を借りて入手した周辺の監視カメラ映像を調べる作業を再開する。


 もちろん、私以外にもお嬢様が雇った捜査のプロたちが彩香を探している。


 もしかしたら、私は意味のないことをしているのかもしれない。


それでも、何もせずにはいられなかった。


もう3日も監視カメラの映像を見続けている。


だが、それでも彩香は見つからなかった。


その後も時は容赦なく過ぎていく。


4日、5日、6日と。


そして、1週間が経ち――。


◇◇◇


私は病院のベッドにいた。


「医者によると過労とのことで……。」


 倒れている私を見つけたメイドがそう説明している。


どうでもいい。


心の底からそう思った。


私がどうなろうと、どうでもいい。


 そのメイドの話によると、私は丸1日眠っていたらしい。


つまり、1日を無駄にしたということだ。


こんな体たらくでは駄目だ。


「最低でも3日は安静に――。」


 病室に来た医師が何かを言っていたが、耳には入らなかった。


その日の夜。


 私は病院を抜け出し、自室へ戻って再び捜索を始めた。


その後も私は何度も過労で倒れた。


 幸い後遺症はないと医師は言っていた気がするが。


 そして、そんなことを繰り返しているうちに、彩香の手掛かりは何一つ見つからないまま1ヶ月が経った。


「そういえば、有給申請がまだだった気がする。」


「お嬢様に提出しに行かないと。」


 私は、以前申請した有給がそろそろ切れることを思い出し、足早にお嬢様の部屋へ向かった。


「開けますね、お嬢様。」


私はノックする事すら忘れて部屋に入る。


「お嬢様?」


しかし、お嬢様の姿はなかった。


机の上に置いておけばいいだろう。


そう考えて机へ向かい、有給申請書を置こうとして――。


「……?」


ある書類に目が留まった。


私の目に留まったのは、


『新山緋色についての調査報告。』


そんなタイトルの書類だった。


◇◇◇


そして、この時の楓は気がついていなかった。


 医者の言っていたことが間違いだったということに。


 過労で何度も倒れた事により少しずつ感情の制御が効かなくなっているということに。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

1日1話20時に投稿します!

好評なら1日2話あげるかもしれません!

続きが気になる方は評価の⭐︎をください!また、ブックマークもして続きを読めるように待っててくれると嬉しいです!感想やレビューもどしどしお待ちしております!


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