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第13話月城ひより

「バレた。」


月城さんがそう呟く。


 なんで学校一の美少女――白銀の姫君が、こんな場所にいるんだよ。


「な、なんで月城さんが?」


「なんでって?」


 月城さんは首を傾げながら、当然のようにナイフを投げてきた。


「っ!?」


慌てて身を捻る。


 ナイフは頬のすぐ横を通り過ぎ、背後の壁に突き刺さった。


「危ないだろ!」


「惜しい。」


惜しいって何だ。


殺意高すぎるだろ。


「そんなことより、なんで暗殺者なんてしてるんだよ!」


「簡単。」


月城さんは淡々と答える。


「やらないと殺される。」


「は?」


「隙あり。」


月城さんが銃を向ける。


危機察知が反応した。


――避けろ。


頭の中で警鐘が鳴る。


だが、その瞬間。


 さっきの言葉を口にした時の月城さんの表情が脳裏をよぎった。


どこか悲しそうに見えた気がしたのだ。


一瞬だけ動きが止まる。


 その隙を逃さず放たれた銃弾が、俺の腕を掠めた。


「っ!」


熱い痛みが走る。


「当たった。なぜ?」


「それはこっちのセリフだ。」


俺は腕を押さえながら叫ぶ。


「やらないと殺されるってどういうことだよ!」


「そのままの意味。」


「誰に殺されるんだ?」


「秘密。」


即答だった。


「そうか。」


なら――。


「聞き出すまでだ。」


「なんで?」


月城さんが不思議そうに首を傾げる。


「月城さんには恩がある。」


「恩?」


きょとんとした顔。


覚えてないか。


いや今女装中だったわ。


気付くわけがないわ。


「入学して一か月くらいの頃だ。」


俺は言う。


「俺が東條さんの財布を盗んだって疑われたことがあった。」


「……?」


「クラス全員が俺を疑った。」


あの時を思い出す。


冷たい視線。


ひそひそ話。


誰も信じてくれなかった空気。


「でも、月城さんだけは違った。」


「何のこと?」


「俺をかばってくれたんだよ。」


「覚えてない。」


「結局覚えてないのかよ!」


「結局誰?」


俺はため息をつく。


そしてカツラを外した。


声も元に戻す。


「新山緋色だ。」


「……?」


月城さんがじっと俺を見る。


「同じクラスの?」


「そうだ。」


「すごい。」


「何がだ?」


「全然わからなかった。」


「そうか。」


少し複雑な気分になる。


「まあ、それは今どうでもいい。」


「そうなの?」


「ああ。」


俺は短く頷く。


「月城さんには恩がある。」


「……。」


「だから助ける。」


「助ける?」


「そうだ。」


俺は真っ直ぐ月城さんを見る。


「月城さんに悲しい思いをさせる奴からな。」


「悲しい?」


「ああ。」


さっき見えた表情が頭から離れない。


「人を殺すのを嫌だと思ってるんだろ?」


「……?」


 月城さんは本気で意味が分からないという顔をした。


「思ってない。」


即答だった。


嘘をついているようには見えない。


 なら、さっき見えたものは俺の勘違いだったのか。


「それでもだ。」


「そんな環境に月城さんを置いておくつもりはない。」


恩があるから。


助ける理由は、


それだけで十分だ。


「そう。」


月城さんは無表情のまま頷く。


「好きにするといい。」


そう言って再び銃を構えた。


「ああ。」


 俺も服の中からスタンガンと、自作の短剣を取り出す。


どちらも厨二病時代の遺物だ。


 特に短剣はドラゴンの装飾が巻き付いた厨二全開の代物だ。


「なんでドラゴン?」


月城さんが聞いてくる。


やめろ。


そこに触れるな。


 かっこいいと思って付けただけなんて言えない。


「秘密だ!」


「そう。」


月城さんの警戒が一段階上がる。


違うんだ。


変な能力とかない。


ただの飾りなんだ。


その反応が逆に心に刺さる。


「くっ……!」


精神的ダメージがでかい。


「行くぞ、月城さん!」


「……。」


月城さんは無言で銃の引き金を引いた。


銃声が夜に響く。


そして――。


俺と月城さんの戦いが再び始まった。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

2話投稿します!

18時と21時に投稿します!

続きが気になる方は評価の⭐︎をください!また、ブックマークもして続きを読めるように待っててくれると嬉しいです!感想やレビューもどしどしお待ちしております!

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