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第五章 決死の攻防と哀しき怪物

本作『レイナ』を開いていただき、ありがとうございます。

この物語は、少し不思議で騒がしいアパートでの同居コメディから始まり、やがて悲壮なモンスターバトルへと一気に加速していく、ノンストップのSF純愛アクションです。

もともとは特撮・アクションの最前線で活躍するクリエイターたちが集結して制作した短編映画であり,映画ならではの「一切ダレないスピード感」はそのままに、テキストだからこそ描ける登場人物たちの細やかな心情や、隠された伏線を丁寧に織り込んでいます。

最後まで一気に駆け抜ける物語です。どうぞ、少しの間、良太とミー(レイナ)の奇妙な日常と死闘にお付き合いください。

荒涼とした採石場の道を、良太とミーが必死に駆け抜けていた。

良太の手には、あの銀色のアタッシュケースがしっかりと握られている。

二人は高い崖の上へとたどり着き、立ち止まって下を見下ろした。

眼下の草むらには、胸を木の槍で貫かれたレイナの亡骸が、静かに横たわっていた。

「レイナ……」

良太は悲痛な面持ちで目を伏せ、震える声で呟いた。

「ママ……」

ミーもまた、悲しげな瞳で崖下を見つめ、力なく声を漏らす。

その時だった。あの蛇の怪物が再び姿を現した。大爆発を生き延びていたのだ。

怪物は咆哮を上げながら、まずミーへと襲いかかった。

強烈な打撃を食らい、ミーは大きくのけぞるようにして地面に弾き飛ばされる。倒れ込んだミーに対し、怪物は容赦なく足で踏みつけ、何度も激しく殴り続けた。圧倒的な暴力の前に、ミーはなすすべもなく、ついに力尽きてぐったりと地に伏してしまう。

ミーが倒れたのを確認すると、怪物はゆっくりと向き直り、ケースを抱える良太へと標的を変えて襲いかかってきた。

良太は咄嗟に手にしたケースを盾にして一撃を防ぐ。だが、その凄まじい衝撃でケースが弾け開き、中に入っていた複雑な機械装置――レイナの遺伝子が組み込まれたメカ――が地面へと転がり落ちた。

良太が慌ててそのメカを拾い上げた直後、怪物がゆっくりと歩み寄り、太い腕で良太の首を鷲掴みにした。

そのまま強引に崖の上へと吊り上げられ、良太は息を詰まらせて苦しむ。

「渡せ!」

怪物は良太の首を絞め上げながら、しゃがれた声で凄んだ。

「それを渡せ!!」

「渡せ!」

何度も身勝手な要求を叫びながら、怪物は良太を執拗に締め上げる。

薄れゆく意識の中、良太は右手に握りしめていた遺伝子のメカを、怪物の腹部めがけて力一杯突き刺した。

バチバチバチッ!!

メカが作動し、強烈な青白い電流が弾けた。蛇の怪物の体内で、新たに撃ち込まれたレイナの遺伝子と、女の遺伝子が一気に暴走を始める。

怪物は狂乱し、自らの頭を抱えながら悲鳴を上げて良太を手放した。

一つの体の中で、三つの意識が壮絶なせめぎ合いを繰り広げる。

怪物の悍ましい顔が歪み、苦痛に満ちた女の顔が浮かび上がった。

「なんて、ことを!」

女が自身の体に起きている遺伝子の崩壊にうろたえた直後、今度はその表情が一変し、悲痛なレイナの顔が現れた。

「りょうちゃん!」

怪物の口から、突然かつての幼馴染と同じ呼び方が飛び出す。

「お願い! 私を早く殺して!」

レイナの意識が表層に現れ、絶望の中で天を仰いで死を懇願した。

「早く!」

哀れなレイナの嘆願に良太が立ち尽くしていると、次の瞬間、怪物の目に再びどす黒い殺意が宿った。女の意識が力ずくで表へ引きずり出される。

「おのれーー!」

冷酷な女は苦しみながらも激しい恨み言を並べ、醜い怪物の姿で吼え猛る。

「お前だけは殺してやる!!」

死を望むレイナ、憎悪を燃やす女、そして本能のままに叫び続ける怪物。三つ巴の魂が引き裂かれるように暴れ回り、怪物はのたうち回った。

奇跡の果てに

怒り狂った怪物が良太へ突進しようとした瞬間、横からミーが飛びかかった。

二人は激しくもつれ合いながら、高い崖から空中へと投げ出される。

落下していく最中、怪物の鋭い爪がミーの首元を襲った。その衝撃で、ミーが首から下げていた銀色のロケットペンダントがちぎれ、怪物と共に下へと落ちていく。

ミーは空中で怪物の体を力強く蹴り放すと、身を翻して崖の岩壁へと跳躍した。驚異的な身体能力で壁を伝い、崖上へと無事に舞い戻る。

一方、突き放された怪物は単独で真っ逆さまに落下していった。

ドスッ!

崖下に横たわるレイナの亡骸の上に、怪物の巨体が激しく叩きつけられた。そして、レイナの胸を貫いていたあの木の槍が、上から落ちてきた怪物の胸をも深々と貫き、その息の根を完全に止めた。

怪物の絶命と同時に、空から落ちてきたペンダントが、レイナの顔の横へと着地する。

落ちた衝撃でペンダントの蓋が弾け開き、中から日焼けした幼い良太の笑顔の写真が現れた。静寂に包まれた崖下に、切ないオルゴールのメロディが鳴り響き始める。

崖の上からその凄惨な光景を見下ろしていた良太の目から、大粒の涙が溢れ出した。

静寂の中、彼の脳裏に愛しい記憶が鮮明に蘇る。

『レイナ、レイナはね! りょうちゃんのお嫁さんになる』

無邪気に笑って約束してくれた、幼い頃の少女のレイナの声。

『今でもレイナのこと……嫁さんにしてくれる』

つい先ほど、命を落とす直前に切なそうに微笑んだ大人のレイナの言葉。

たまらなくなり、彼は天に向かって、ありったけの声を振り絞って叫ぶ。

「れいなーー!!」

「子供の頃しか知らないのに……! 今でも、お前のこと好きかどうかだなんて分からないよーー!」

良太がその場に泣き崩れていると、彼の背後で静かに言葉が紡がれた。

「だったら……」

良太がハッとして振り返ると、背後に立つミーが、愛おしそうに彼を見つめていた。レイナと同じように、ミーの中にも良太への深い想いがしっかりと受け継がれていたのだ。

「これから好きになって……」

ミーは微笑みながらそう告げると、手に持っていた遺伝子のメカを、迷うことなく自分自身へと突き刺した。

その瞬間、眩い光が弾けた。

メカから注入された成分によって、ミーの体内で遺伝子のバランスが劇的に変化していく。猫であるミーの遺伝子よりも、組み込まれていたレイナの遺伝子の方が一気に増殖し、彼女の肉体を書き換えていったのだ。

光の粒子が舞い散る中、良太の目の前に立っていたのは、もはや猫耳の女ではなかった。

黒い毛皮は消え去り、滑らかな人間の素肌が現れる。良太の驚く視線が、彼女のむき出しの足元から、ゆっくりと上へと引き寄せられていく。

「りょうちゃん!」

澄んだ声と共に良太を見つめていたのは、紛れもなく人間の姿へと変わったレイナだった。

魔法でも奇跡でもない。ミーの体内で遺伝子の割合が完全に逆転し、オリジナルのレイナの姿を再構築したのだ。

良太の目から、今度は安堵と喜びの涙が溢れ出した。彼は満面の笑みを浮かべ、目の前のレイナを見つめる。

レイナは両腕で自身の素肌の胸元を隠しながら、嬉しそうに涙ぐみ、良太に向かって最高に無邪気で美しい笑顔を向けた。

穏やかな木漏れ日の中、レイナの優しい笑い声が響き渡り、二人の長い戦いはようやく終わりを告げたのだった。


【実写映像版『レイナ』配信のお知らせと裏話】

最後までお付き合いいただいた読者の皆様に、本作の原点である「実写映像版」についてのお知らせです。

実は本作のもとになった短編映画『レイナ』は、特撮・アクション界の伝説的なトップランナーたちが集結して作り上げた作品です。 ハリウッド版『パワーレンジャー』のアクション監督を歴任した横山誠氏や、スタントダブルとして大活躍した梛野素子氏(なんと本作のヒロイン・ミー役であり、エンディング曲も歌唱!)。 さらには『ゴジラ』や『ガメラ』で数々のメイン怪獣の「中のスーツアクター」を務めた吉田瑞穂氏や大橋明氏など、特撮ファンなら驚愕するような豪華キャスト・スタッフが本気で作り上げた映像となっています。

おかげさまでアメリカ市場での展開も決定し、今後の広がりにもワクワクしています。 現在、映像版の『レイナ』は以下の配信サイトでご覧いただけます。小説で描かれたあのアクションシーンや、最後のアパートのオチ(郁恵)が映像でどう表現されているか、ぜひご自身の目で確かめてみてください!

■Amazonプライムビデオhttps://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0GW1PFGHJ/ref=atv_sr_fle_c_Tn74RA_1_1_1?sr=1-1&pageTypeIdSource=ASIN&pageTypeId=B0GW24BMLN&qid=1777798977978

■U-NEXT https://video.unext.jp/title/SID0295435

改めまして、最後までお読みいただいた皆様、本当にありがとうございました!

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