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―――そして、ついに卒業パーティー当日。
実家から送られてきたドレスは、ナナリーが着たことのない赤色のものだった。
(やっぱりこれ……アルド先生の瞳の色みたい)
ルルーラと試着会をした日、彼女がナナリーのドレスを見て酷く動揺していたのを覚えている。
けどそれはナナリーも同じだった。
ドレスを着たルルーラは誰がどう見てもダリスのパートナーだと丸分かりだったから。
ダリスの執着を感じて、ナナリーは鳥肌を立てたものだった。
ドキドキしながら袖を通したそれは、しっくりとナナリーに馴染んだ。
(悪くない、よね?うん、似合ってる、気がする)
改めて鏡に映る自分の姿に何度か頷く。
大きく深呼吸をひとつして、ナナリーは会場へと向かった。
学園のダンスホールは卒業生で大変賑わっていた。
人の波を縫うようにしてナナリーは壇上近くへと向かう。
(まず、学園長からの挨拶があるはず……!)
見逃す訳にはいかないと、よく見える位置を確保する。
程なくして室内の灯りが少し暗くなり、壇上のみが明るく照らされる。
そこに現れた、アルドの姿にナナリーは息を呑んだ。
アルドの身に纏っている正装がライラック色だったから。
―――それは、ナナリーの髪と瞳の色によく似ていた。
「な、んで……」
ナナリーに気づいたアルドは彼女に向かって薄く微笑むと式典の挨拶を始めた。
あんなに聴き馴染んだ声なのに、今やナナリーの耳には何ひとつ言葉として入ってこなかった。
「……リー……ナナリー!」
「はっ!」
ナナリーが気がついた頃にはとっくにアルドは退場し、立食パーティーが始まっていた。
ルルーラが肩を揺さぶり声を掛けてくれたおかげで、ナナリーは何とか現実に戻ってきたのである。
(何か、夢を見ていたわ……アルド先生が私色の服を着ていて……)
「凄かったわね、アルド様。あれでは宣言なさったようなものだわ」
「え!?」
もしかして現実、とルルーラに聞こうとした時だった。
「ルルーラ・エジー侯爵令嬢!」
ざっと、人々が左右に分かれる。
その真ん中を堂々と歩いてくるのはダリスだ。
ルルーラの横で固まっていたナナリーも慌てて端に寄った。
ルルーラの目の前に立つダリスの表情は固く、険しい。
その顔が、彼の緊張をこれでもかと伝えてきた。
「俺と、結婚して欲しい」
それでも、その口から紡がれた言葉はどこまでも柔らかかった。
「―――っはい!末長くよろしくお願いします」
(―――ああ、今までで1番の笑顔)
微笑み合う2人に惜しみない拍手を送る。
ダリスの告白は、ナナリーの記憶が知るものよりももっと無骨で、シンプルで、愛があった。
(―――……結局、ヒロインは現れなかったな)
「……良かった」
大切な2人の笑顔を見ながら、ナナリーは心の底からの声を出した。
盛り上がり続けるダンスホールをそっと抜け出し、ナナリーは教員棟に向かった。
そこに、アルドが居る気がしたから。
静まり返った廊下を歩きながら、まず何を言おうかとナナリーは考える。
――その服の色は、何故?
――パーティーに参加しないんですか?
――ダリス様が遂に、告白しましたよ。
沢山の言葉が浮かび上がって、扉を開いた時。
「アルド先生、好きです」
1番強い思いが、そのまま出てしまった。




