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私がヒロインだったんですか!?  作者: 宮澤


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7

「ナナリーは卒業パーティーのドレスはもう決めた?」


「え、と。はい!実家からそろそろ届くはずです」


「そうなのね。ね、ドレスが出来たら見せ合いっこしましょうよ」


「え!したい!是非!」


 ナナリー18歳、高等部3年の秋。

 もう卒業まであと僅かな時間を残すのみとなった。


「ルルーラ様は何色のドレス……いや、見せてもらうまで楽しみに取っておきます!」


「私も貴女のドレス、楽しみだわ」


「もう卒業ですもんねぇ……はぁ、寂しい。ルルーラ様は王宮に行ってしまうから気軽に会えなくなりますね」


「貴女何でいつも勝手に私がダリス様と結婚する前提で話すのよ!」


「でも、もう流石にルルーラ様もお気付きでしょう?ダリス様が誰を求めてるか」


「……まぁ」


 ツン、と照れ隠しでそっぽを向くルルーラに、ナナリーはうんうんと頷く。


「あれだけの猛攻を受けたら流石のルルーラ様も気づかずにはいられませんよね」



「……貴女はもっと早く気づいていたの?」


「少なくとも中等部の頃からは」


「そ、そんなに前!?」


「もっと言えば初等部5年あたりで気配はありました」


「う、嘘でしょう?」


「これが嘘を言ってる顔だと思いますか?」


「うぅ……っ」


 まっすぐ己を見つめるナナリーにルルーラはたじろぐ。


「そ、そういう貴女は最近どうなの?」


「……変わらずお茶を楽しむ関係です……」


「……そう。どんなお話をしてるの?」


「え、と最近は私の卒業後の進路の話とかです」


「貴女確か実家に一度戻るのよね?」


「そのつもりだったんですが……ここだけの話にしてくださいね。私全然釣書が届いてないんですって……1枚や2枚くらいと思ってたのですけど……0ですよ!」


「それ、は……」



「それで実家に戻ってもただの穀潰しでしょう?そしたら、アルド先生がいい就職先を紹介してくれるって」


「……」


「でも、内容は詳しく教えてくれないんです。卒業したらそのまま案内してくれるそうなんですけど」


「……」


「なんと、3食お昼寝付き!昼間より夜間の方が忙しいかもしれないらしいんですけど、まあそれはそれで「ちょっとお待ちになって!!」


「―――?」


「あの男、こんな純粋な婦女子を捕まえて……っ!!」


「ルルーラ様?」


「――いえ、何でもないのよ。けれどね、ナナリー。まだ卒業まで少し時間があるもの。すぐに答えを出さなくても良いんじゃないかしら?」


「そう、ですね。……確かに、もう少し考えてみます」


 ナナリーは穏やかに笑うアルドの顔を思い出す。

 彼はいつも凪のようで、穏やかで。

 ナナリーは彼の側に居るといつも心臓がばくばくと煩い。

 その煩さを、いつか彼に押し付けてしまう日が来てしまうかもしれない。同じ熱を、鼓動を返して欲しいと思ってしまうかもしれない。

 それは、アルドには酷な事だとナナリーは思う。


 好きだと自覚してから、一度も好きでなくなった日はない。


「……少し距離を置いた方が良いんでしょうか」


「――それは辞めといた方が良いだろうな」


 突然割り込んできた第三者の声にルルーラとナナリーは驚きの声を上げた。


「ダ、ダリス様っ!い、いつからそこに」


「ナナリー嬢に釣書が届かない件りからだ」


「な!!」


 ショックを受けるナナリーを無視してダリスは話を続ける。


「それで、だ。アルド先生と距離を置くという話だが、辞めておけ」


「なんで「辞めておけ」


「ダリス様は関係な「辞めてくれ」


「頼むから、辞めてくれ」


 あまりにも真剣なダリスにナナリーは頷くしかなかった。


「ルルーラ、この件は君ももう助言は禁止だ」


「何故ですの!?」


「関わる」


「何に」


「国の存続に」


「……」


「頼む、怒らせたくない」


「……わ、かりましたわ―――ちなみに、ナナリーに釣書が届かないのは……」


「―――聞かないでくれ」


「あの、私にも聞こえるように会話を……」


 こそこそと話す2人の姿に不安を覚えたナナリーが話しかけるが、ダリスとルルーラから返ってきたのはぎこちない笑みだった。


「あのね、ナナリー。本当にいざとなって、どうしようもなくなったら私のところに来るのよ?」


 ぎゅっと力強く、ルルーラがナナリーの両手を握る。


「……はい、ありがとうございます。ルルーラ様」


 握られた手は温かく、優しかった。










「アルド先生、最近髪を上げてるんですね」


「うん、ちょっとね。書類を纏める時とかに邪魔で」


「なるほど」



 アルドの髪は肩口まである。

 それは今後ろで纏めて結えてあった。


(アップも似合うとは……恐るべし)


「……あの、アルド先生。改めてありがとうございます」


「ん?」


「6歳のあの時から、私のこと信じてくれて」


「ふふ、どういたしまして。でも早いね、あんなに小さかった君がもう高等部を卒業するんだ」


「なんか、あっという間でした」


「そうだね……ねぇ、君はさ、この世界を今なんだと思ってる?前世で得た知識の世界?それとも……君が生きる確かな世界?」


「決まってます……私が、私の大切な人達が生きている世界です」


「―――そっか」


 細められた瞳が、よく出来ました、とでも言っているかのようにナナリーは感じた。




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