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「ナナリーは卒業パーティーのドレスはもう決めた?」
「え、と。はい!実家からそろそろ届くはずです」
「そうなのね。ね、ドレスが出来たら見せ合いっこしましょうよ」
「え!したい!是非!」
ナナリー18歳、高等部3年の秋。
もう卒業まであと僅かな時間を残すのみとなった。
「ルルーラ様は何色のドレス……いや、見せてもらうまで楽しみに取っておきます!」
「私も貴女のドレス、楽しみだわ」
「もう卒業ですもんねぇ……はぁ、寂しい。ルルーラ様は王宮に行ってしまうから気軽に会えなくなりますね」
「貴女何でいつも勝手に私がダリス様と結婚する前提で話すのよ!」
「でも、もう流石にルルーラ様もお気付きでしょう?ダリス様が誰を求めてるか」
「……まぁ」
ツン、と照れ隠しでそっぽを向くルルーラに、ナナリーはうんうんと頷く。
「あれだけの猛攻を受けたら流石のルルーラ様も気づかずにはいられませんよね」
「……貴女はもっと早く気づいていたの?」
「少なくとも中等部の頃からは」
「そ、そんなに前!?」
「もっと言えば初等部5年あたりで気配はありました」
「う、嘘でしょう?」
「これが嘘を言ってる顔だと思いますか?」
「うぅ……っ」
まっすぐ己を見つめるナナリーにルルーラはたじろぐ。
「そ、そういう貴女は最近どうなの?」
「……変わらずお茶を楽しむ関係です……」
「……そう。どんなお話をしてるの?」
「え、と最近は私の卒業後の進路の話とかです」
「貴女確か実家に一度戻るのよね?」
「そのつもりだったんですが……ここだけの話にしてくださいね。私全然釣書が届いてないんですって……1枚や2枚くらいと思ってたのですけど……0ですよ!」
「それ、は……」
「それで実家に戻ってもただの穀潰しでしょう?そしたら、アルド先生がいい就職先を紹介してくれるって」
「……」
「でも、内容は詳しく教えてくれないんです。卒業したらそのまま案内してくれるそうなんですけど」
「……」
「なんと、3食お昼寝付き!昼間より夜間の方が忙しいかもしれないらしいんですけど、まあそれはそれで「ちょっとお待ちになって!!」
「―――?」
「あの男、こんな純粋な婦女子を捕まえて……っ!!」
「ルルーラ様?」
「――いえ、何でもないのよ。けれどね、ナナリー。まだ卒業まで少し時間があるもの。すぐに答えを出さなくても良いんじゃないかしら?」
「そう、ですね。……確かに、もう少し考えてみます」
ナナリーは穏やかに笑うアルドの顔を思い出す。
彼はいつも凪のようで、穏やかで。
ナナリーは彼の側に居るといつも心臓がばくばくと煩い。
その煩さを、いつか彼に押し付けてしまう日が来てしまうかもしれない。同じ熱を、鼓動を返して欲しいと思ってしまうかもしれない。
それは、アルドには酷な事だとナナリーは思う。
好きだと自覚してから、一度も好きでなくなった日はない。
「……少し距離を置いた方が良いんでしょうか」
「――それは辞めといた方が良いだろうな」
突然割り込んできた第三者の声にルルーラとナナリーは驚きの声を上げた。
「ダ、ダリス様っ!い、いつからそこに」
「ナナリー嬢に釣書が届かない件りからだ」
「な!!」
ショックを受けるナナリーを無視してダリスは話を続ける。
「それで、だ。アルド先生と距離を置くという話だが、辞めておけ」
「なんで「辞めておけ」
「ダリス様は関係な「辞めてくれ」
「頼むから、辞めてくれ」
あまりにも真剣なダリスにナナリーは頷くしかなかった。
「ルルーラ、この件は君ももう助言は禁止だ」
「何故ですの!?」
「関わる」
「何に」
「国の存続に」
「……」
「頼む、怒らせたくない」
「……わ、かりましたわ―――ちなみに、ナナリーに釣書が届かないのは……」
「―――聞かないでくれ」
「あの、私にも聞こえるように会話を……」
こそこそと話す2人の姿に不安を覚えたナナリーが話しかけるが、ダリスとルルーラから返ってきたのはぎこちない笑みだった。
「あのね、ナナリー。本当にいざとなって、どうしようもなくなったら私のところに来るのよ?」
ぎゅっと力強く、ルルーラがナナリーの両手を握る。
「……はい、ありがとうございます。ルルーラ様」
握られた手は温かく、優しかった。
「アルド先生、最近髪を上げてるんですね」
「うん、ちょっとね。書類を纏める時とかに邪魔で」
「なるほど」
アルドの髪は肩口まである。
それは今後ろで纏めて結えてあった。
(アップも似合うとは……恐るべし)
「……あの、アルド先生。改めてありがとうございます」
「ん?」
「6歳のあの時から、私のこと信じてくれて」
「ふふ、どういたしまして。でも早いね、あんなに小さかった君がもう高等部を卒業するんだ」
「なんか、あっという間でした」
「そうだね……ねぇ、君はさ、この世界を今なんだと思ってる?前世で得た知識の世界?それとも……君が生きる確かな世界?」
「決まってます……私が、私の大切な人達が生きている世界です」
「―――そっか」
細められた瞳が、よく出来ました、とでも言っているかのようにナナリーは感じた。




