9
更新遅くなりました。
少し短いですが、読んでいただけると嬉しいです。
目の前にあるたくさんのご馳走に涎を飲み込む。
「いただきまーす」
両手を合わせると、目の前にあるグラタンを大きな一口で頬張る。
クリームソースが絡みついたマカロニと、こんがりと焼けたチーズが口の中に広がる。
「おいしいっ!」
「よかったな、少年」
「うん。ママが作ってくれるグラタンみたい」
「いっぱいあるからな。落ち着いて食べろよ」
「うん」
一口、また一口グラタンを頬張る。
口の中が幸せでいっぱいになるまで夢中で食べ進めた。
ふと顔を上げると、案内人は机に肘をついてクッキーを口に放り込んでいた。
なにも話さずに、次々にクッキーを食べて頷く案内人は満足そうにしている。
「クッキーもおいしい?」
「あぁ、おいしいぞ。食べてみな」
握りしめていたスプーンを置いて、クッキーを一枚口に入れてみた。
サクサクでほろほろで、このクッキーもグラタンに負けないくらいおいしい。
「ほんとだ、めっちゃおいしいね」
二枚くらいクッキーを食べて残っていたグラタンの続きを食べる。
やっぱりママのグラタンと似ている。クッキーよりもやっぱりグラタンのほうがおいしい。
一口、また一口と味わって食べるごとにママと喧嘩したことを思い出してしまう。
大っ嫌いはママを傷つけたかな。
「暗い顔して、どうしたんだ?」
案内人が不思議そうに首をかしげている。
ママは僕の誕生日よりも仕事が大事なんだから、どうだっていいや。
ママのことを思い出さないように頭をブンブンと横に振った。
「ううん。なんでもないよ」
そう言って、クッキーを一口かじった。
まだまだ無くならないグラタンをまた食べる。
お皿の底が見え始めたくらいで案内人の視線を感じて顔を上げた。
「なに?」
「おいしそうに食べるんだな」
「いいでしょ」
案内人に自慢するように、グラタンを一口頬張った。
「一口分けて」
「やだ、これは僕のグラタンだもん」
「そうか、残念だな」
紅茶を片手にそういう案内人は、全然残念そうには見えない。
案内人の機嫌が悪くなると思っていたから、びっくりだ。
「怒らないの?」
「冗談だからな。大人は子供の食べ物は取らねぇよ」
「そっか。大人ってかっこいいね」
「いや、こんなことはカッコよくないぞ」
案内人は少し恥ずかしそうに、紅茶をすすった。
「ふぅ、おいしかった。次はなに食べようかな」
クッキーもチョコレートもいいけれど、今日はやっぱりケーキが食べたい。
白くてふわふわの生クリームと真っ赤で大きい苺がのったショートケーキに手を伸ばす。
口に入れると甘酸っぱい味が口の中に広がった。
きっと幸せは苺のショートケーキの味がすると思う。
「今日誕生日なんだ。誕生日にはケーキを食べないとね」
「誕生日おめでとう、少年」
「ありがとう。ママもケーキを用意してたかな」
案内人に目をみてお祝いされると少し恥ずかしく感じた。
「あぁ、ケーキ屋でホールケーキを買っていたぞ、少年が好きな苺がのったやつをな」
「そうなんだ」
胸が少しざわざわした。
「そんなことまで知ってるなんて案内人はすごいね」
「まぁ、案内人だからな」
紅茶を飲みながら視線を外した案内人を不思議に思いながら、ケーキの最後の一口を口に運んだ。
「ごちそうさまでした」
「満足したか?少年」
「グラタンもケーキもいっぱい食べられて、幸せ」
「よかったな」
「でも、いっぱいおいしいものを食べたのにお腹いっぱいじゃないのは夢の世界だからなのかな」
立ち上がる案内人を見上げた。
「あぁ、そうかもな」
眉をさげて困ったような表情をした案内人は少し黙ってから、そう言った。
「まだ食べててもいいんだぞ」
案内人が指さした机の上の食べ物を見る。
おいしそうだけど、これを食べても満足感は変わらない気がする。
「ううん。今はもういい」
「そうか」
案内人は優しく微笑んで扉の前で待つぬいぐるみに目線を移した。
「ぬいぐるみがバスケットにクッキーとキャンディを用意してくれたぞ。食べたくなったらこれを食べればいい」
「うんっ」
ぬいぐるみに駆け寄ってバスケットを両手で抱える。
結構重い。これはたくさん入っていそうだ。
「お菓子がいっぱいだよ、案内人」
思わず笑顔になる。食べるのが楽しみだ。
「よかったな、少年」
案内人がニヤニヤと笑った。
「まだ食べるとは少年は食いしん坊だな」
「うるさい」
案内人が開けてくれている扉を通るときに軽く案内人を蹴った。
「痛ってぇ」
大げさに足を押さえて痛がる案内人が面白すぎて、思わず声を上げて笑った。




