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「遊んでほしいのかな」
木の根元の近くに生えている先っぽにふさふさがついた草に子猫がじゃれついている。
家の庭に生えてる緑のネコじゃらし以外にも水色や黄色のカラフルなネコじゃらしが生えている。
子猫の目に似ている黄色のネコじゃらしを引っこ抜いた。
子猫の近くで振ると、飛びついてきた。
「ほらほら、楽しい?」
小さな前足で必死にじゃれつく子猫に尋ねると、「にゃん」と返事をしてくれた。
「はわぁ、可愛い。ねぇ、シトて名前はどうかな?」
「にゃん」
シトも名前が気に入ったみたいだ。
シトと夢中で遊んでいると、ジト目で僕を見ているクーちゃんが視界に入った。
「あっ」
視線が合うとクーちゃんが猛スピードで僕に向かってきた。
体当たりされて地面に尻もちをつく。
腕に飛び込んできたクーちゃんを倒れた姿勢のまま撫でまわす。
つるつるでひんやりしていて気持ち良い。
「きゅいぃ」
「ごめんね。クーちゃんも可愛いよ」
「きゅい」
不満そうにクーちゃんが鳴く。
きっと人の形をしていたら口を尖らせてほっぺたをふくらませているだろう。
「クーちゃんの背中にまた乗せてよ」
「きゅい?」
不思議そうに首を傾げるクーちゃんにお願いする。
「クーちゃんに乗ってネコじゃらしで遊んだら楽しそうじゃない?クーちゃんも一緒に遊べるし」
「きゅっい」
嬉しそうに背中にクーちゃんが乗せてくれた。やっぱり仲間に入れて欲しかったみたいだ。
クーちゃんに乗って遊ぶと、さっきよりも速く動けて楽しい。
シトもクーちゃんも楽しそうに遊んでいる。仲良く遊んでいるのは僕も嬉しい。
「楽しそうだな」
「うんっ」
クッキーを食べながら笑っている案内人と目が合って手を振った。
夢の世界は楽しくて、幸せだ。
温かくて柔らかい風がふわりと僕の前髪を揺らした。ほわぁとあくびが出る。
「少し休憩」
そういうとシトが眠そうにあくびをした。
今にも寝そうなシトを抱き上げて、案内人のところに歩いていく。
「いいなぁ。僕もクッキー食べたい」
案内人が食べているクッキーを指さす。
「しょうがないな。ほら」
案内人が差し出したバスケットから一枚クッキーを口に入れる。
ほろほろでザクザクなクッキーは何回食べてもおいしい。
「おいしいか?」
「うん。でもあと少ししかないね」
「さっき誰かさんのせいで飛んでいったからな。でもここは夢の世界だろ」
「ていうことは、願ったら増えるってことだ」
「そうだ」
「やってみる」
バスケットに両手を向けてバスケットいっぱいのクッキーを想像するとぽぽぽっぽんとクッキーが僕の両手からバスケットに注がれる。
あっという間にバスケットがいっぱいになった。
「へへへ、すごい?」
「あぁ凄い凄い」
「もう絶対思ってないじゃん」
口を尖らせながら、クッキーを一枚とって案内人の隣に座る。
クーちゃんの熱い視線が僕が持っているクッキーに注がれている。
「食べる?」
「きゅいっ」
クーちゃんは差し出したクッキーを一口で食べると、くるっと回った。
クーちゃんもこのクッキーが気に入ったみたいだ。
「にゃあ」
膝の上で丸くなっていたシトが見上げて、ごはんをねだってきた。
「シトもクッキー食べられるのかな」
「子猫だからな。ミルクのほうがいいと思うぞ」
「ミルクかぁ。今はないよね」
ごめんねとシトのほわほわな毛を撫でながら謝る。
「いや、想像すればミルクも現れるぞ。それか木の実の蜜をミルク代わりにするのもいいかもな」
「確かにそうかも」
案内人はよく良いことを思いついてくれる。
木の実から蜜を指ですくって、シトの口に近づけてみる。
ペロっとシトが蜜を舐める。ざらざらした感触ににびっくりだ。
みゃあみゃあと鳴きながら、必死に蜜を舐めるシトを見ていると自然と笑顔になる。
ほわほわした気持ちでシトに蜜をあげてると、上からクッキーのカスがぼろぼろと降ってきた。
上を見るとクーちゃんがクッキーを頬張っている。
「ちょっとクーちゃんっ。頭の上で食べないで」
「キュイ?」
クーちゃんはカスを落としていることに気づいていないのか、またぼりぼりとクッキーをむさぼり始める。
「もうっ」
落ちてくるカスを手で振り払いながらクーちゃんに大きい声で怒ると、案内人が隣で笑い声をあげた。
シトが僕の膝でまた寝息をたてて寝ている。
ふんわりと温かく柔らかいシトの毛を撫でていると、またあくびが出る。
「眠くなってきた」
目をこすりながら、案内人の肩に頭をあずける。
嫌がられるかなと少し思ったけど、案内人は気にしていないみたいだ。安心して目を閉じる。
「でもまだ寝たくないな」
「どうしてだ?眠いなら寝ればいいじゃないか」
「だってこの時間が続いてほしいもん」
「そうか」
案内人は軽く笑うと、そう呟いた。
「少年は幸せか」
「幸せだよ。クーちゃんもシトも、案内人もいるからね」
レンガの一本道の先に、遠くに見える時計塔を見つめた。
「でも、何か足りないんだよね。案内人は何でか分かる?」
案内人ならきっと理由を知っている、そう思った。
「まぁな。あの街をずっと見てきたからもちろん知ってるぞ」
「なんで?」
勢いよく体を起こして案内人に聞く。
「自分で考えたほうがいいこともある」
残念だ。せっかく理由が分かると思ったのに。
「ただ...」と案内人は人差し指をたてて続けた。
「ヒントをあげることはできる」
そういって、案内人が指を鳴らすとポンっと僕のノートが現れた。
「少年ならすぐ分かるさ」
優しく笑った案内人からノートを受け取った。




