第六十六話 エピローグ……?
「じゃあ……ホントに、フラれちゃったの?」
電話の向こうで、美香が驚いたような声を出す。
「うん。ホントのホント、大撃沈だよ」
私は努めて明るく返した。
辛くないわけじゃないけれど、不思議と心は穏やかだ。
「んー、ひなたを振るなんて
……アイツ、見る目ないよねー」
いつもからかってくる美香にしては
なかなか分かってるじゃない。
「でしょー? そうだよねー」
「男の子、紹介しようか?」
まだそんな気にはなれないけれど
私はその軽口に乗ってみることにした。
「おっ、いいねー」
「ふーん ひなた、どんな子がタイプなの?」
私は少しだけ考えて、空を見上げた。
「そうだなぁ……
一緒に世界を救っちゃうような子、かな?」
「なにそれー!」
美香の笑い声を聞きながら私は病院の入り口に立った。
「あはは。じゃあ病院 着いたから切るね」
スマホをポケットにしまい待合室へ向かう。
そこには、たーくんとハナコさんが並んで座っていた。
「よ、待った?」
「や、やっと、ひなた来た……」
たーくんが肩を下ろす。……どうした?
「あー、ひなたちゃんだぁ。こんにちはぁ」
ハナコさんも、少しずつ元気を取り戻しているみたい。
会計を済ませ、私たちは並んで病院を出た。
「たーくん、歩くのおっそーい!」
「仕方ないだろー。松葉杖なんて初めて使ったんだから」
「ハナコのせいで……ごめんねぇ」
「あっ……ハナコさん、ごめん!
ハナコさんのせいじゃないからね?」
しまった。たーくんの怪我は
ハナコさんの罪悪感に直結しちゃうんだった。
「ハナコさん。俺の怪我を気にするのはやめようよ」
たーくんが、いつになく堂々とした口調で
ハナコさんの目を見た。
「俺はもう何とも思ってないし……それに
ハナコさんと一緒にいれて、嬉しかったよ」
「太郎くん……ありがとぉ」
ハナコさんが顔を赤らめる。
……おぉ。まだぎこちないけれど
いい感じに恋人、やってるじゃない。
「……明日から、また学校だね」
ほんの少しだけ悔しくて、私は話題を逸らした。
街の被害もあり、今日まで学園は休校になっていた。
「えぇっ……ハナコ、まだ宿題やってないよぉ……」
「最終手段で、天道に写させてもらおうか?」
「もーダメに決まってんでしょ?
ウチ着いたら教えてあげるから
チャッチャとやっちゃうよ!」
私が言うと二人とも「えー」っと悲鳴をあげる。
2人より前に出て振り返り、私は続ける。
「今日は終わるまで寝ちゃダメだからね!」
と、腰に手を当て2人を指差し
久しぶりにお姉さんぶってみる。
結局、世話焼きなんだなー、私は。
二人を見る、たーくんがヨレヨレと
松葉杖で立つのを、ハナコさんが支えていた。
お似合い……って感じでもないなー。
ハナコさんの方が少し背も高いし
たーくんは……まぁ、冴えないしね。
けれど、お互いを想い合っているのは
ちゃんと伝わってくる。
……お幸せにね。
私はもう一度振り返り、
二人を背に、前を向いた。
「あっ、ボール……」
その時、小さなサッカーボールが車道へと転がり出た。
それを追って、小さな影が飛び出す。
――悟くんだ。
「危ないっ!!」
思考より先に、体が動いた。
私は全力でダッシュし
悟くんを抱きしめるように歩道側に引き込んだ。
……間に合った。
……あれ?
視界が、不自然なほど
スローモーションになる。
視界の端に、サイドミラー。
それが、ゆっくりと、迫って――
ゴッ……
………。




