7話 隆信、人と話をする
さて、相手は話が出来るかな?
攻撃してこなければ、放置だな。
今は周囲の把握と、どういう事が出来るか確認しなければいけない。
まして、わしは熊、熊だから寿命がどうなるか分からんからな。
「おい」
こちらから声を掛けたらびっくりしてるな。
ふむ、言葉が通じるのか。
…あれか、なんか頭がカチ割れそうだった時に、誰かの声が聞こえたやつか。
共通言語スキルがなんたらと言っていたな。
「聞こえないのか!」
「き、聞こえている!」
「なら返事ぐらいしろ!愚か者か!」
「な、だれが愚か者だ!」
「ふん、言い返すことが出来るなら、話ぐらいできるな」
「ああ」
「ならば、こちらへ来い、ああ、別に攻撃はしないから安心しろ」
「…」
戸惑っているな、仲間だろうか話をしているな。
ふむ、一人だけ来るのか。
なるほど、危険だから犠牲を考えてか、ふん、わしはなめているのか…と、わしの事なんか分からんか。
「とりあえず座れ、わしも座る」
「あ、ああ」
「よっこらしょ」
「え?」
「なんだ?」
「何でもない」
「とりあえず聞くが、こいつらの仲間か?」
「…」
おや、即答しないな。
仲間だと面倒だが、始末しないといけないがな。
「ひとつ聞きたい」
「なんだ」
「お…あなたは、どこまでこちらの事を知っている?」
「知っていると思うか?」
「そうか、そうだよな…」
「だから何だ?質問に質問を返して?」
「ああ、すまない。俺たちは大きい意味では仲間だが、パーティーではないから本当の仲間ではない」
「ふむ?」
「そうだな…人がどういう生活や体制なのか分かるか?」
「さて、分からなければ聞くから言え」
「そうか、冒険者ギルドというものがあるんだが、俺たちやこいつらはそこに所属している」
「ふむ」
「冒険者ギルドに所属しているという意味ではな仲間だが、所属している者たちがすべて顔見知りでも仲が良いわけではない」
「それはそうだな」
龍造寺家は少弐家に仕えてはいたが、馬場とかのように少弐家に仕えている家臣同士が必ずしも仲が良いわけではない、それと同じことか?
「それは、冒険者ギルドというものに仕えているというものか?」
「いや違う、互助会のようなもので、冒険者ギルドの規則や指名依頼もあるが、基本的にみな所属している者たちは自由に活動している」
「なるほど」
座のようなものか?
ふむ、強権的な支配体制ではないという事か。
「なるほどな。では、こいつらの敵討ちはするのか?」
「いや、そこまでこいつらと仲が良いわけでもないし、なんだったら、面倒を起こす連中だったみたいだな」
「みたいだった?」
「そう、俺たちはこの地が拠点ではなく、各地を旅しながら活動している」
「そんなことが許されるのか?領主などは、勝手に移動することを制限するのではないか?」
「…いや、冒険者ギルドはこの大陸のどの国にも属さず、独立した組織だ」
「国か…いや、それは国や領主が嫌がるのではないか?蜂起される危険があるだろう」
「そこまで分かるのか」
「考えれば分かるだろう。国や領主の命を聞かない者たちが各地を移動できるなど、諜報活動や破壊工作などやりたい放題だろう」
なんで、驚いた表情するんだ?
…ああ、そうだった、わしは熊だった。
「ま、まあそうだが。冒険者ギルドはどの国にも属さないが、その国の法律は順守するし依頼受ける」
「だから、それは国にとっては危険でしかないだろう」
乱破、素破は使い勝手は良いが、何時、盗賊になるか敵に寝返るか分からん。
上方の伊賀や甲賀というものであれば、契約は守られるとは聞いているが、胡乱な連中を信じ切ることはない。
まるで、そんな連中と同じではないか、冒険者ギルドというものは。
「確かにそうなんだが、冒険者ギルドがなければ魔物や盗賊などの討伐が出来ないから許されているようなものだ。まして、冒険者ギルド自体が、国や領主に対して敵対することは少ない」
「少ないという事は、あるということだな」
「そりゃ、冒険者ギルドを支配下に入れようとしたり、冒険者を不当に処罰したり追放したりすれば対抗することある。あなたの場合なら、支配エリアをよこせと言われて納得できるか?」
「なるほど、なら、冒険者ギルドを廃止して、兵を使って魔物や盗賊を国が対処すれば良いのではないか?」
「それをすれば膨大な兵が必要になって、維持する金がかかると言っていたぞ。まして、死亡したりしたらその手当や後始末もある」
「…確かにな」
「なら、冒険者ギルドを使った方が安く済むということだろうさ。俺たちの命は軽いんだよ」
「そうか」
「それに、冒険者の行動は自己責任だ。こいつらがあなたに仕掛けて死んだのも自己責任だ。俺たちが同行する気はない」
「ならば何故ここに来た?」
「それは、こいつらに無理やり連れてこられた新人がいると聞いてな。冒険者ギルドから出来るなら助けてくれと言われて様子を見に来たんだが…」
この状況を見て、死んだと思っているか。
まあ、そう思うな。
「こいつらが盾にして、使い捨てにしようとした連中はあっちで気絶していると」
「え?」
「見ていたら哀れになって、とりあえず払っただけだから打ち所が悪くなければ生きているんじゃないか?」
「ほんとうに?」
「疑うか?」
「逆に、この状況を見て疑うなと?」
「…ははは、確かにな!だが、事実だ。ほら後ろの奴らに行かせろ。多分、周囲には獣はいないはずだから大丈夫だろう。死んでなくても怪我はしているだろうがな」
「それは大丈夫だ、マールが回復する」
「何を言っている?骨折や打ち身はすぐにはなおらんぞ?」
「知らないか…まあそうか、魔物でも回復を行えるのは少ないからな」
「だから、何を言っている?」
「僧侶がいるから回復魔法が使えるんだ」
「回復魔法?僧侶?」
僧侶だと、坊主にそんな力はないぞ。
そう言えば、上方に薬草を取り扱う坊主がいるとは聞いたが、回復だと?
法力か?
回復魔法?魔法とはなんだ?
「聞くが、魔法とはなんだ?妖術か?法力か?」
「ようじゅつ?ほうりき?そんなものは知らないが、魔法は魔法だが…少し待ってくれ」
「ああ」
「アリエル」
「何よ、ケイン!」
「こっち来て、魔法について説明してくれ!」
「え!いやよ!」
「嫌とかいうな!来い!」
「…分かったわよ」
「あと、アイン!」
「なんだ」
「森の中に…」
「あそこらへんだ」
「あそこらへんに新人が倒れているらしい。マールらを連れて確保してくれ!」
「…分かった!」
なるほど、あれがマールか。
前は後方にいたから分からなかったが、なるほど、こちらが攻撃した傷が回復していたのはあいつのせいか。
アリエルと言われた奴が、嫌そうな顔で来たな。
「なんなのよ、ケイン。交渉はあなたがするって言っていたじゃない」
「俺は魔法の事は説明できないんだよ」
「はぁ?魔法?」
「そうだ、知らないらしい。そういえば、ようじゅつ、ほうりきって聞いたことあるか?」
「…法力は、はるか昔に回復魔法の事をさしていたらしいけど、今は使われていなわ」
「え、そうなの?」
「そうよ、大半は知らないわよ。マールなら聞いたことあるかもしれないけどね」
「そっかぁ、という事らしいです」
「なるほど、それで、回復魔法とはなんだ?」
「えぇ、それならマール呼んできてよ」
「新人のところに行ってるから無理だろ」
「専門じゃないのに…」
なんだろうな、ぐだぐだと…
死ぬ前のわしだったら即座に殴っていたが、なんておおらかになったんだわしは、偉いな。
「おい、アリエルいい加減にしろ」
「…分かったわ」
なんだ、わしの顔を見て?
「あなたの表情が怖いんだよ…牙が出て唸っているような表情になっている」
…なるほど、わしは変わっていなかったか。




