5話 隆信、人と接触
ふう、感覚的に数か月は立っているな。
木刀、木槍もかなり作ったし、周囲の木々を倒して広場を広げた。
小屋と、食料を保存する場所も作った。
掘っ立て小屋にもならない、竪穴住居だが結構快適だ。
この身体は楽だな。
年を取ってガタが来ていたからな、健康そのものだ。
むかつくやつをぶん殴れるな!
「だが、周りは木々ばかりだ!」
バキバキバキ!
くそ、思わず目の前の木を殴ってしまった。
そう言えば、猿どもの来ないな。
蛇はたまにうろついているから食料として狩るか、熊もいない。
蟻やら百足、虫はチラホラ見る。
そう言えば、馬鹿でかい蜘蛛が攻撃してきたときは驚いたな。
糸を絡みつけてきて、ねばねばしていたが引きちぎって頭を潰して倒したが…
あの糸何かに使えないか?
まあ、あれ以来、蜘蛛は見つけても大きくなく攻撃もしてこなかったから放置しているが、虫か蛇とかしかいないのか?
ん?
鳴子がなっているな、直ぐに収まった。
それなりの離れた場所に仕掛けていたが、虫や蛇は反応しない。
飛んでるし、地を這うか木々の上で移動するからな…
さて、なった方に行ってみるか。
猿か?
いや、人か…
此処は畜生道には人がいないはずだが…
まあ良いか。
こちらに気が付いているな。
見える距離にはいないはずなのに、警戒している気配が分かる。
人の時はここまで分からなかったんだがな
ん?
見えてきたな、武器を構えている。
ふむ、装備は鎧ではないな、南蛮や明の装備に見える。
刀や槍と、なんだ、木の棒のようなものを持っているな。
お、散開したな。
「ふん!」
中々の腕前だな。
矢を放ってきたか。
斥候か?
素早いな、何かを投げてきたが…
「は!」
これは、目くらましか。
だが、聞かないな。
「どっ!」
槍を投げつけたが、間一髪で交わしたか。
驚いた表情を浮かべているのを見ると、目くらましの粉の中に毒薬でも入れていたか?
「ふん!」
近づいてきた剣の兵と槍の兵を薙ぎ払ったが、絶えれていないな。
吹き飛んでいる。
おお、大きな盾を持ったものが突撃してきた…!?
火の玉が飛んできたな!
法術か、妖術か知らないが効かないな!
「はっ!」
爪で払い飛ばし、盾持ちを蹴り飛ばす。
絶えたか?
ん?
なんだ、あいつらの身体が光に包まれている。
吹き飛ばした剣と槍の兵が起き上がってきたな。
斥候が何か指示しているが…ん?
ほう、風が強くなっているな、これもあいつらの術か?
何かの煙か何かが?
なるほど、風で周囲に広げているのか。
周囲が見えずらくなる…これで、奇襲をしてくるのか?
そう思ったが、奴らの気配が遠ざかっているな。
ふむ、威力偵察か?小手調べか?
まあ、そこまでの殺気もなかったから見逃してやるか、決して、追いつかないからではない。
面倒なだけだ。
しかし、畜生道のはずなのに、人がいるんだ?
『逃げ出した人たちは、森から出ていた』
「ハァハァ」
「駄目だ、少し休まないと」
「…」
「もう少し行けば、川に出るからそこで休むぞ」
「ああ」
俺たちは、ギルドの依頼で調査をしに来た。
あるパーティーがいつもなら居るはずのエリアボスが居ないとギルドに報告があった。
ランクBのパーティーで、依頼がエリアボスがいる近くに生えている薬草だった為、慎重に確認しながら近づいたが何かがいる気配がなかったと報告にあった。
いつもであれば、火球が飛んでくるので近づいてくることが分かる。
その際は速攻で逃げるのだが、火球も飛んでくることもなく、強力な魔物がいる気配もない。
強力な魔物はそれだけで、周囲に威圧をするから遠くにいてもうっすら感じることがある。
上位の冒険者であれば気が付くし、斥候や僧侶、魔法使いも敏感に感じる。
だから、そのパーティーも薬草を採取した後に、危険を犯してエリアボスの住処を調査したらしいが居なかったと。
そして、何か素材があるか危険をおかして調査したものの大したものがなく。
魔物の死骸があったので使える部位だけとって、戻ってきたそうだ。
魔物には魔石はなかったらしく、ギルド内でも言われている強力な魔物は魔石を吸収しているという説が確証を得てきたと騒ぎになった。
エリアボスは熊の魔物で、種族名があるらしいが故有名は付けられていない。
Aランクでは弱い部類だが、俺たちを含め倒せるほどの弱さではない。
偶に森から出ることもあるが、基本的にこちらに攻撃的ではないので、領主やギルドは刺激しないように近づくなと指示が出されていた。
まあ、冒険者は後先考えない自意識過剰なやつもいるから勝手に討伐に行って討ち取られた奴も多いが。
エリアボスは基本的に支配エリアから移動することはない。
魔物がランクアップして周囲に支配エリアを広げたとしても、住かを変えることは珍しい。
特に獣系は動くごとは本当に稀だと聞いている。
だから、エリアボスが住みかに居ないのは、倒されたとしか考えられない。
魔物の寿命は長いが死ぬことはあるから、その可能性もあるが、まだ、死ぬようなことはないと思う個体だった。
それを踏まえて、ギルドはエリアボスが倒されたと判断した。
Aランクを倒すのは、同等かそれ以上、もしくは相性で倒せた場合。
危機感を感じて、ギルドは俺たち[彷徨える者たち]に指名依頼を出して頼んできた。
危険も伴う為、金額も高く討伐ではなく撤退込みなので、俺たちは引き受けた。
一応は、俺たちはAランクのパーティーだからあわよくば討伐、無理でも情報を持ち帰ると思ったんだろうな。
俺たちは拠点を決めず、国や街を移動しているから偶々いたことをこれ幸いに依頼してきたんだろう。
で、結果は、このありさまだ。
元のエリアボスの話を聞き死力を尽くせば討伐できる可能性が高い感じだったが、接触した奴は無理だな。
何パーティーか集めて、討伐するレベルだな。
あれは、聞いていたエリアボスと違い、人の動きや考えが読めるやっかいなタイプだ。
「はぁ」
「どうしたケイン」
「あれは、俺たちでは無理だ」
「そうだな、動きが魔物っぽくない」
「軽く人あてだったが、こちらと同じ動きに見える」
「…」
「グランエンどうした?」
「…あの蹴りは、人の蹴りと同じ弱いところ、こちらが一番ダメージを食らう点をついてきている」
「盾使いとしての感覚か」
「…そうだ」
「おかしいよ、魔物なら火を躱すか相殺する魔法をぶつける、もしくはダメージがないなら身に受けるのに、あいつは手で払ったのよ。そして、こっちを見て笑ったのよ!」
「アリエル…」
「確かに俺やボーンの攻撃も見切っていた気がする」
「そうだな俺の槍の攻撃を最小限の動きで交わして、アインと一緒に薙ぎ払える位置で手を払っていた」
「そうだよな、でも、あれは爪ではなく手のひらだったから俺たちは助かった」
「そのとおりだ。俺たちを殺す為なら爪で攻撃するだろう」
「不思議だな」
「何がだ、ケイン」
「いやな、あいつの横には木の剣が落ちていた」
「木の剣だと?」
「そうだアイン、木の剣だ」
「あの熊が使っているのか?」
「可能性はあるな」
「馬鹿な、人型の魔物なら分かるが熊だぞ?」
「鉄や鋼などの作られた剣なら冒険者が落としたものだと思うが、木の剣だぞ冒険者が持ち歩いているか?」
「いやいや、おかしいわよ。それなら誰かが作ったって事でしょ。熊が作れるわけないよ!」
「アリエル」
「誰かが協力しているか、人が捕らわれている可能性あるわよ!」
「それはない」
「ケイン!何でよ!」
「ちらっとしか見ていないが、あれは削りだしたものでも職人や人が作り出したものでもない」
「だから、何で分かるのよ!」
「木刀の節々に肉球の跡があった」
「え?」
「何を言っているんだ?」
「アイン達が戦っている間、周囲を確認していたんだよ。何か痕跡はないかとか、エリアボスと言われていた魔物かもしれないと思ってな」
「それで、木の剣があったのか?あの短時間で良く見つけたな」
「ああ、それで確かに木の剣のようだが、肉球が付いているのを見て、この熊が作っていると感じたんだよ。人であればそんなものはつかないし、もっと滑らかだ」
「ええぇ、そんな事おかしいわよ!」
「だな、俺もそう思うが、事実は事実だ。どうしたボーン」
「ん、ああ、そうなると、前にいたエリアボスとは特徴が違うな」
「そうだ、聞いていたエリアボスは、火の魔法を使うし嗜虐的だと聞いていた」
「だが、奴は魔法も使わないし、こちらを試すような動きで、追撃もしてこなかった」
「そう、倒せれば程度で、そこまで本気でなかったのも感じていたのかもしれないな」
「ええぇ、そんなぁ、それで私の魔法は消されたの!」
アリエルが不満顔だな、苦笑を浮かべるしかない。
「それで、どうしますか」
「マール、このまま戻ってギルドに報告だな。これ以上は、俺たちだけでは手に負えない」
「そうね」
やれやれ、厄介ごとだな。
リーダーとしては、このまま報酬を受けて街を離れたいが、領主やギルドが引き留めそうだ…
『逃げ出した人の後姿をみながら隆信は考え込んでいた』
ふむ、人がいる、人がいるんだな…
では、此処は何処なんだ?
パーティー名[彷徨える者たち]
アイン…剣士
グランエン…盾使い
アリエル…魔法使い
ボーン…槍使い
ケイン…盗賊(斥候):リーダー
マール…僧侶




