4話 隆信、武具を作る
鉄がないし、あったとしても鍛冶はできん。
あの猿どもを鍛えれば…無理か。
とりあえず、砕いた岩で鋭利なものをこの木の棒に巻き付けるか。
手ごろな蔦があったが力加減を間違えると結びが強すぎて千切れる…いや、爪で切ってしまう。
加減が難しいが、昔を思い出すな。
「さてと、ふん!」
うむ、なかなかの出来栄えだ。
振っても、突いても石は落ちない。
木を割って挟んでいるが、その挟んでいる木の先も鋭利にしているから、石が外れたとしても突き刺さるだろう。
だが、通常の獣であれば突き刺さるが、先に殺し合った熊や蛇だと難しいかもしれんな。
あの猿の硬さはどれぐらいか。
弓も作ったが、弦が難しい。
蔦と蛇革を編んで作ったが、使えるものになるかどうか。
何本か弦を作っておくか。
矢は整えた木と、弓柄などは木と皮を重ねて…ん?わしは弓を構えれるのか?
今は考えまい。
出来てから試せば分かる事だ。
しばらくは、熊と蛇の肉があるが腐っても食べれる。
そう!素晴らしい異に熊は腐肉でも食べれる。
籠城戦や食料のない戦いがどれだけ辛かったか…
あの時熊だったら!
いや、違うな。
しかし、考え方が少し幼くなっている気がする。
畜生道に生まれ変わると若返るのか?
さてと、この木刀を振ってみるか。
「ふん!」
良い感じだな。
「おりゃ!とぉ!」
横に払う、突きを入れる。
この木刀は中々の強度だな。
試しに両手で挟んで潰してみたら固くなったな。
現世の時と比べて木の性質が違うのか?
「ふん!」
中々良いな。
次は槍だ。
「とりゃぁ!」
う、括りつけていた石が外れて飛んで行った。
次のは…これは気に突き刺さって柄だけになってしまった。
だが、挟んでいた先が尖っていたからか、木に突き刺さったな。
これも手のひらで力任せに握った結果か、固くなったのか。
ふむ、これなら石の穂先は邪魔だな。
「ふん!」
ここら辺の木を切り倒して、予備を含めて数本用意するか。
矢の羽は無理だが、矢の作り置きするか。
しかし、槍や木刀より己の爪の方が威力あるのはしっくりこないが…
さて、今日は森の探索を始めるか。
弓の用意は出来た。
試し打ちしたが、そこそこ使える。
二人張りの弓とは行かないが、なかなかの強さだった。
後ろに数十以上の折れた弓柄の残骸は見ない事にしよう。
ちゃんと完成したのは三つだけだが、あの猿どもに通じるのか。
ん?
「しゅっ!」
「ギャッ!?」
ドサっと、何か落ちたな。
警戒しながら確認しに行くと、あの時の猿が落ちている。
矢は足に刺さっているな。
矢は通じるのか、この猿の皮は分厚くないか。
そして、周囲を見ていると、猿どもが手に糞を持ってこちらを見ている。
倒れている猿は痛みにのたうち回っている。
「ふん、別に殺す気はない。連れて行ってやれ。ただし、わしに敵対するなら始末するぞ」
糞を投げる程度なら遊びと思ってやる。
しびれさせるのは敵対行為だがな。
背を向けて森を出ると、後ろでガサガサしていたが攻撃する事無く去って行ったか。
攻撃が通るなら怖くはない。
この木刀や木槍でも始末できるからな。
人の体と違い、この身体の体力はかなりあるからあの程度の数であれば始末できるだろうし、食料にもなるか。
ん、何だ羽の音が聞こえてくるが、虫の羽の音だな。
それも蜂だが厄介だな。
だが熊は狂暴なスズメバチの攻撃も聞かないから、この身体なら大丈夫…って、何だあの大きさは!?
まだ、遠いが一尺は超えているぞ!?
顎が凶悪だな、まるで刃物のようだ。
だが、あれを使えば、投擲に使えそうだな。
まだ一匹だが、奴らは仲間を呼ぶから、どれだけの数が来るか。
こちらを見て警戒音を発しているな。
取り合えず、木刀と木槍を周囲に刺していつでも使えるようにして、弓を構える。
「ジリリ、ジリリ、ジジジジジ」
下手に刺激すると、大量に来るからな…
来たか!
「ジジジ!!!」
「ふっ!」
1射では躱されるか、ならば、連射だな。
「しゅ!しゅ!」
連続で撃ち、3射目で射たが…
ん?
何か匂いがするな。
まさか、これが奴らの仲間を呼ぶためのものか?
ちっ、火があれば焼き払うのだが、土をかけるかとりあえず。
羽の音がしてきたな、結構な音だな。
うん、見渡す限りの数だと…
数百はくだらんな。
先手必勝だな。
「しゅっ!しゅっ!しゅっ!」
密集しているからか、1射で倒せるな。
倒された瞬間一斉に、こちらに向かってきたな!
「「「ジッ!ジッ!ジッ!」」」
「しゃぁ!!!」
距離が詰まってきたな、弓では十匹程度しか仕留めれんか。
くそ早いな!
早いから距離がとれんか!
木槍は意味はないか、木刀しかないか!
この身体ならば、両手で持ってもやれるか?
「しゃぁ!」
鈍重と思ったが、案外このからでも早く動けるか。
いや、人の身体の時の動きは出来る、だが、それ以上の身体能力だな。
大きなスズメバチさえ、一撃で仕留めれる!
まして、早さにも対応できる!
「はははははははっ!死ね死ね死ね!」
どれぐらい経ったのか分からないが、周囲は暗く月が出ているな。
作った木刀がすべて折れ、槍も束ねて使ったがそれもすべて折れ、最後は爪で始末したな。
ああ、爪の方が簡単に倒せた。
周囲にはうず高く積まれたスズメバチの死骸、数百どころではなかったな。
しかし、木刀や木槍より、爪の方がスズメバチを切断できるとは、いや木の武具だと撲殺するためのようなものか…
武具を懸命に作ったのに、何だろうスズメバチに勝ったのに敗北感が半端がない。
「はぁ」
そして、周囲に放置されているスズメバチの死骸をどうするか。
ため息しかない、わし一人で出来ることは限られている。
ん?
また何か声が聞こえるな。
『ファウジー・ビドを討伐しました』
何だお前は?
答えが返って来ないか、前に比べたら気分の悪さも気を失う事もないか。
畜生道であれば、馬頭観音か?
「はぁ、返事はないか…」
わしが寺で学んだものと違うな。
この者たちも元は人だったのだろうか。
蒲池や赤星の連中かもしれんな。
「ふふふ、もしそうだったとしても、お前らはまたわしに討伐されたのだ!身の程を知れ!」
まあ、叫んでみたとて、意味がないか。
この死骸の多さにはうんざりだ、数百どころか千は超えているだろう。
とりあえず顎は外して、毒針はどうなるかな?
何かしらに使えそうだが、保存しておくところがない。
とりあえず、それぞれ保存する穴を掘って入れておくか…
まさか、それだけで、十数日かかるとは…
ため息しかない。




