3話 隆信、周囲を確認する
あれから熊を食べて、眠気が来たから寝た。
寝床がないが、戦場を考えれば野宿など国もならない。
まあ、今は熊だからか身体はきつくはない。
背伸びをしたが、何か違和感がある。
人としての感覚と、熊の体の感覚は違うか。
首を動かすと、コリコリと音がなるな。
しかし、周囲を見ても木しかない。
木の高さが多いから遠くまで見ることができないな。
ここは、元々小さな広場のようだったみたいだが昨日の殺し合いで周囲の木々が折れて、少し広くなっているが…
「これは、早朝夕方、悪天候では森のなかは暗くなるな、襲撃を受ければ防ぎにくいか」
はあ、声を出してしまったが…ん?おや?何故、言葉が話せるんだ?
今更ながらだが熊が言葉を発するのはおかしくないか?
それとも畜生道とはそういう所なのか、ありえるか元が人が亡くなったなら言葉も話せるか。
だが、この熊は話せなかったが…
「誰かいるのか?」
「シャァァァァ!」
周囲を見ていると、森の中の草むらが揺れたり、他の場所からは何かがいる気配がする。
気配に敏感であったが、今は相手の強さを感じれる。
何故だ?
ふむ、こちらを見ているというより、この死んだ熊を見ている感じか。
山犬や狼のように獲物を狙っているのだろう。
カサカサ…
「な!?」
咄嗟によけたが、何だこの巨大な蛇は!?
顔だけで1間あるぞ?!
頭が尖っているな、そうなると毒をもっているかもしれんな。
もっていなくても嚙まれれば、あの大きさだと致命傷だな。
鎌首をあげて威嚇してやがるな。
とりあえず、この口に生えた木を抜き取るか。
「シュゥゥゥ」
「ちっ!」
飛び掛かってきやがったな。
木を抜くことを理解しているのか?
だがな、足を狙ってくるならば半歩足を下げながらって、そこから胴を狙ってくるのか!?
ふん、半身に下げて…
「ふん!」
「ギャワ!?」
首に脇に挟んでこのまま倒れて首を折る!
ドサッ!ゴキ!
「グギャ」
ふう、上手くいったようだな。
速攻で始末しなければ、締め付けてくるだろうからな。
強さはそこまで感じなかったが、毒を持っているだろうから危険だったな。
ん?他の気配が消えたな。
夜になったら来るかもしれんが、まあよいか。
この蛇も食べれるか?
毒が身体に回っていなければ、食べれるだろうが味は分からないか。
だが、蒲池に逃れた際に食べたのはおいしかったが、あれは塩があったからもしれんな。
さて、捌くか…
ふむ、やはり頭部には毒袋があるな。
直接は触れないから、捌いた蛇の皮にくるんでおくか。
熊の皮で腰をまく帯は無理だから紐を作るか。
やはり、手先の器用な奴がほしいな。
何処かに職人の生まれ変わりはいないか、いないだろうな、畜生道に落ちるような鍛冶屋とかはいないな。
ふむ、食べた事のある蛇と同じだな。
淡白であっさりしている。
やはり塩が欲しいし、火も欲しいな。
さて、少し周囲を散策するか。
周囲は木々ばかりだな。
大きな生き物も見当たらない。
あの蛇は何処から来たんだ?
そう言えば、蛇の異名を持った武士が美濃あたりに居たが、頭がきれる武士だったらしいからあんな単純な攻撃はしないか。
ん?猿か?いや、猿にしては白いしでかいな!?
畜生道とは、巨大化するのか?
「うぉ!?」
何を投げてきた!?
ん?匂いが…まさか、糞か!?
それは嫌すぎるな!
熊だから気にしなくても良いのか?
いや、駄目だ!
くそ!籠城戦で敵にぶっかけたことはあったが、まさか、自らがぶつけられるとは!?
「くそ!何匹いる?!色々な場所から投げつけてくるな!」
ん?
運が悪かったのか、糞がぶつかった鼠か?
猫ぐらいの大きさだな…やっぱり、この世界は巨大化するのか?
いや違う、鼠が痙攣して動かなくなっているぞ。
まさか、あの糞は毒が入っているのか?!
くそ、嫌らしいな、だが、あれがあれば籠城する時には使えるな。
ちっ、相手は木の上だから攻撃が届かないし、弓もない、周囲に石らしいものはあるがこの手では握れるが、しっかり投げれるのか。
「ふん!」
こぶし大の石を握って投げたが、躱されたか。
これだけ距離があれば躱されるか。
撤収した方が良いが、後ろから攻撃されても怖いな。
…そうか、この木を倒せばよいのか、今のわしならば…
「ふん!ふん!ふん!」
おお、四方の木殴ったら折れたな。そして、奴らの方に倒れていった。
奴らは驚いた顔をして混乱しているなが、しっかり気に飛び移っているか…
引き時だな!
「ふう、疲れたな」
のどが渇いたが泥水しかない。
まあ、熊だし大丈夫か。
「うむ、美味しくないな、泥の味がするのは当たり前か」
おや、何故、普通に味が分かるんだ?
熊も人と同じ味覚をしているのか?
いや、ここは畜生道だからか?
まあ、これも考えても仕方ないか、とりあえず土を掘って、水が出るか試すか。
「…出ないな」
縦に掘っても、上に登れない可能性もあるから斜めに掘り、周囲を一応固めながらだから時間がかかっているが…
もう5間ぐらい掘ったが…
ん?
何か下が湿っている気がするが、もしかしたら…と、思った時がありました。
ふう、普通ならここまでの深さだと、息も苦しくなるはずだが。
お、水が浸みだして来たな、もう少しか。
「よし、水が沸き上がってきた」
もう少し、ここら辺を広く掘って固めるか。
水の湧き出方も急ではないから、溺れることはないだろう。
「そのうち水が溜まるだろう」
その間に木を切り倒して、掘っ立て小屋でも作るか。
屋根は、蛇の皮を使うか。
ただ、死骸の近くは肉食の獣が来るかもしれないし、病の危険もあるな。
よし、格納するように、水場から離して掘って草や木の皮を引いておいておくか。
これだけ動いたら、人の体だと身体が持たなかったろうが、熊の身体は頑丈だな。
「よし、とりあえず、此処で大丈夫か」
森に入った場所と逆の場所を少しだけ入ったら岩があった。
もしかしてと思い殴ってみたら、粉々に砕けた。
流石にびっくりしたわ、わしにこんな力があるとは、もし、現世でその力があれば愚か者たちを…
「はぁ」
今更だな。
未練だな。
さてと、雨風をしのげる状況は作れた。
しかし、月が明かる…なんだと、月が二つ?
なんてことだ、畜生道がこれならば、他の六道はどんな空なのか。
起きたら武器を作るか。
材木と熊の皮で簡単な弓でも作るか。
弓が出来れば、森の中での活動も変わるかもしれん。
この森がどれぐらいで、周囲がどうなっているか調べないと動けないからな。
配下もいないから自らしないといけないのは面倒だがな。
だが、口うるさい信生はおらぬし、好き勝手にできるのは気分がいい。
まして、力任せで行える、これほど素晴らしい状況があるのか?
畜生道であろうと、敵がいるならば踏みつぶせばよい。
歯向かうものは殺せばよい。
あの猿どもを従えれば、戦いの幅も広がるが…
猿は頭が良いはずだから、何とか家臣にしたいものだ。
馬鹿でかい蛇もいたようだし、森の中にはまだまだ色々な獣もいるだろう。
刀が槍があればな。
竹があれば竹やりが作れるが、木材を適当に加工して作るしかないか。
壊れても良い様に数をそろえねばな。




