12話 隆信、拠点を作りたい
拠点を作りたいが、猿たちに建築が出来るとは思わない。
まあ、わしも造ることは出来ないが。
「ノブタネ」
「なんでしょう」
「前に居た赤熊の住み家を知っているか?」
「はい」
「どこだ?」
「あそこの山にある横穴です」
「…熊だな、何か建物を立てたりしていないのか?」
「建物とは?」
「そこからかぁ、お前たちは何処で寝泊まりしている?」
「木の上に寝るか、地の上にねるか。落ち葉や枯れ草を集めて寝ています」
「うーん、まあ、そうだな、戦場であればそう言うこともあるが。子育てもか?」
「はい、我々が住みかとしている場所です」
「固定しているのか?」
「いえ、移動しながらです」
「それなら、他の魔物との争いにならないか?」
「移動する場所は、大体決まっているので近づくものは少ないのですが、子ザルを狙う蛇などの魔物はいます」
「罠を仕掛けているのか?」
「罠?」
「ああ、そうか。知らなければ知らないか」
獣が城や館を建てるわけないか。
この大猿でも無理だろう。
知識がなく、技術がなければ無理か…
「決まった場所を移動するだけか?」
「そうです」
「他の魔物に会う事は?」
「ありますが、倒せばエサです。移動するのも魔物が入ってくることも狙っています」
「ああ、そういう見方か。他の魔物が支配している領域に攻めることは?」
「今はありませんね」
「今は?」
「昔は、領域を確定するために、他の魔物と戦っていたと聞いています。今は、木の実など確実に手に入る場所を見つけたので」
木の実、果実、芋とかが自生しているもので事足りるのか?
結構な数が居るのに?
「食料は足りるのか?」
「はい、移動するので必ず魔物が住み着くか、入ってくるので狩ります」
「なるほど」
ある意味、居なくなることにより、魔物を呼び込む罠なのか。
「それなら他の魔物の住み家を見ることはないか…」
「周囲を警戒する為に、魔物を潰したり住み家を見ることはあります」
「ほう、そこに木や岩などを積み重ねたりしたものとかないか?」
「ああ、それならゴブリンやオークなどの住み家で見たことはあります」
「ゴブリン?オーク?」
「はい、人のような獣のようなものたちです。二本足で立ち、武器を使って攻撃してきます」
「ほう」
そいつらを配下に置けば、建築できるか?出来るのか?
常在戦場で地べたに寝るのは良いが、雨風をしのぎたい時もある。
食料や武器を備蓄する場所も欲しい。
「よし、そいつらがいる場所を教えろ」
「…探してみます」
「ん?どういうことだ?」
「見つけたものは危険を排除するために、排除し終わっていますので」
「ああ、そういうことか」
「それに、変異個体や上位個体が居なければ苦も無く潰せますので」
「変異個体?上位個体?」
「殿のような存在で、進化の際に種族が変質して唯一の種族になる事です。上位個体は進化した個体です。私や赤熊がそれになります」
「なるほど」
「私はバンダルが進化したものになりますが、大抵は魔物が進化したものです。しかし、殿は獣である熊から進化して魔物になった個体なので、変質して変異個体になったと思われます」
「ふむ、お前そんなに知識あったのか?」
「殿の眷属になった事で、思考がクリアになったようです」
「そうか…しかし、わしは只の熊なのか…」
頭に聞こえたヒゼンノクマはそういう事なのか。
熊からヒゼンノクマになったのか…、でもやっぱり熊か…
肥前の熊って…
《ガラバナの街》
やっと着いたか、門番がこっちに来るな。
「見つかったのか?」
「ああ、だがあいつらは無理だった」
「新人は助かったようだな。運が良い」
「そうだな、運が良い」
ほっとした表情しているな。
「魔物が怒ってこちらに来ることは?」
「ない、本当に運がいい。あれは交渉が出来たし、状況をしっかり見ている」
「え?魔物だ…まさか、魔族か?」
「多分、進化か変異したんじゃないか?」
「本当か!?領主様に知らせなければ!」
おい、まだ、話し終わってないのに駆けて行こうとするな!
「まて!大丈夫だ、あいつはこちらに来ることは今のところはない。冒険者ギルドで話をするから領主から誰か呼んできてくれ。一緒に説明する」
「わ、分かった」
はあ、これで二度手間はなくなった。
冒険者ギルドが報告上げると思うが、下手すれば呼ばれる可能性もあるから面倒だよ。
「ケイン行くぞ」
「おう」
「ケイン!皆、大丈夫だったか!」
「おう、ゴリムズ」
可愛い女の子の方が良いんだが、まあ、仕方ないおっさんでも、ギルドマスターだから仕方ない。
「ああ、こいつらを頼む。回復させたが、まだ意識を取り戻さない」
「分かった、おい!」
ふう、ギルド職員が運んで行ってくれた。
「じゃあ、話を聞くか…あっちは駄目だったか」
此処では、顔を左右に振るしかないか。
「仕方ない」
深いため息をするなよ。
こっちの気が重くなる。
あんな奴らでも、ここら辺では有力なやつらだったからな。
それに小悪党であっても悪党ではないから問題はなかったんだろう。
そんな奴は山ほどいるからな。
ギルマスも頭が痛いだろう。
「で、どうだった?」
「ちょっとぐらい休ませろよ!」
「茶は出しているぞ」
「はあ、分かってるよ。緊急かどうかは。だが、ちょっと待て、もう少ししたら領主の部下が来るはずだ。門番に頼んだ」
「そうか、なら一休みしてくれてよいが、ひとつだけ」
「今のところ敵対しなければ、こちらに来ることはない」
「はあ、そうか」
明らかに安堵の表情するな。
まあ、魔物だと怒り狂えば死ぬことを厭わず攻撃してくることがあるからな。
前の赤熊はそうだったと聞いている。
一度、昔の領主が森を開拓しようとして赤熊討伐を失敗し、怒り狂った赤熊がガラバナの街を半壊させた事があるとか言っていたな。
よく、追い返したと思ったらある程度破壊して、気が済んだのか帰ったと言っていた。
けど、あの熊と話して思ったが、ある程度、知恵があったんじゃないか、赤熊は。
満足した事と、留まり続けたら冒険者や兵が増えて、倒されると感じたから引いたんじゃないかって思う。
しかし、リーダーって貧乏くじだな。
あいつらは下で休んでいるのに、俺はここで説明する必要があるって…
「酒が欲しい」
「おいおい、説明があるから酒は駄目だぞ。まして、領主の部下が来るんだ。多分、イシムが来るぞ」
「あいつ頭固いからなぁ」
「だが、あいつは話が通じるし、融通も利くぞ」
「時と場合じゃないか」
「それはそうだが、他の街のギルマスの話聞いていたらここは話が通じるから良いぞ」
「まあな、クズの領主は何処にでもいるからな」
「お前たちは色々な街に行っているから分かっているか」
「そうだよ、ここの連中は、領主に感謝すべきだ。いくら独立組織とはいえ、命令してくる領主は山ほどいるからな」
「確かにな…」
ゴリムズも筋肉の塊の図体のでかいおっさんだけど、元冒険者。
色々な街で貴族どもに嫌な思いさせられたんだろうな。
ゴリムズ…ガラバナの街の冒険者ギルドマスター
イシム…領主の側近




