11話 隆信、猿と会話
そういえば、この猿に名前があるのだろうか?
「おい」
「ナンデショウ」
「名前はあるのか?」
「ナマエハナイデスネ、ワレワレマモノハナマエハアリマセン。アルトスルナラバ、マゾクニナッタトキデス」
「魔族になった時?良く分からんんが、名前がないと呼びにくいな…信胤と名乗れ」
「ノブタネデスカ…」
『固有種 ラジャト・バンダルが支配下になりました』
ん?
また、何かが話しかけてきているな?
これは、この世界で言う神か?仏か?答えろ。
…まあ、答えないか。
「どうかしましたか?」
「ん?お前、言葉がなめらかになったな」
「はい、名前を付けてもらったことで、眷属になったようです」
「あん?どういうことだ?」
「エンゲツ様に名を授けられたことで、眷属となったようです」
「ふむ、なんでだ?」
「分かりません」
「お前が言ったんだよな?」
「眷属になったのは、名を付けられたことによるものと啓示がありました」
「啓示?」
「はい、私が前のボスを倒した時に、進化するとの啓示がありました」
「ほう」
「それが何をさすか分かりません。分かるのは、啓示を受けたのち話せる事ができ、他のバンダルを眷属にすることが出来ました」
「ふむ、理由は分からないと?」
「はい、啓示は一方的で答えることありませんでした。また、この頭に聞こえた声が何かを教えてくるれるものもいませんでした。唯一、分かるかもしれない赤熊は会話が成立しませんでしたので」
ああ、あの赤熊は話す気はないだろうし、考える事より暴れることを優先しそうだったな…
この聞こえた声の正体は分からないのか。
神がいると聞いたから、神のこえかもしれんが人の…熊の頭に勝手に入ってきやがって、まるで、頭の中を見られているようで、監視されているようで気分が悪いな。
「どうかしましたか」
「別に何でもない。しかし、言葉遣いも変わったな」
「名がつけられた影響か、エンゲツ様に思考が引っ張られるようです」
「わしの影響があると?」
「はい」
「そんか感じしないがな。わしは言葉遣いはそこまで丁寧ではないぞ?」
「どうでしょうか。多面的なひとつの側面に思えます」
「まあ、礼儀作法はしつけられたからな…爺様に」
「爺様?」
「会うことあないから気にする必要はない。で、あの猿どもはわしの眷属にならなかったが?」
「私の眷属なので、間接的には眷属と言えますが、直接的な眷属ではないという事だと思います。種族も違いますし、ボスが眷属になれば、自動的に所属になるようです」
「歯向かう事はあるのか?」
「ありますね」
「ほう」
「私も元々、前のボスと戦いその座を奪っています」
「そのボスは?」
「私の眷属になっています」
「え?始末しなかったのか?生きていたら歯向かう可能性があると思うが?」
「負けたものは集団から出るか、留まるかです。同族を殺害することはありません」
「ぬるいな」
「違います。負けたものは眷属になり配下になります。経験、実績も含めて、補佐として役に立ちます」
「恨みに思ったり、歯向かったりしないのか?」
「そんなことをするものは、集団から出て行き、新しい群れをつくり攻撃してきます。その場合は、どちらかが死ぬまでやり合います」
ぬるいな、敗れたものは必ず復讐心を持ち、何れ放棄して敵対する。
…だが、獣だから強いものに従うののか?
そういえば、何匹か猿どもを率いて動いているな。
「ボスの入れ替えは頻繁にあるのか?」
「あります、多ければ年数回、長くても数年で入れ替わる事があります」
「ほう、それはお前たちの寿命が短いからか?」
猿でも人ほど長生きしないと聞いている。
そして、寿命が短いものほど、多くの子を産み、育て、そして多く死んでいく。
だから常に強いものが群れを率いないとすりつぶされる事があるのか。
「何匹か猿を率いているのがそうか?」
「はい、彼らは元々はボスだったものか、それに近い力を持っているものです」
「ほう、お前より強いものはいるのか?」
「今のところ居ません。ここ数年は負けていません。今後は分かりませんが」
「それなら、俺にも歯向か事があるのか?」
「あるかもしれませんが、まずは渡しを倒さないとエンゲツ様に挑戦することは無理ですし、させません」
「ほう、ならお前が挑戦するか?」
「既に、負けましたよ」
「わしに負けたなら、お前を猿の群れのボスと認めないやつが出てきてもおかしくないと思うが?」
「そうかもしれませんが、まだ負ける気はありません」
「そうか、そうか、信胤の名を与えた以上、負けることは許さん」
「はい」
とりあえず、猿どもが配下に入ったから、魔物の解体と武具の製作ができるかな?
遠距離攻撃の糞攻撃は良いが、弓が欲しいな…
簡単なモノなら作れる。
これを作らすことが出来るか?
「なあ、こいつらこれが作れるか」
「それは、人が使う飛び道具ですか?」
「ああ、弓と言って、この矢を飛ばすんだ」
「…作れるとは思いますが、人が作るような精巧なものは無理です」
「かまわん、お前たちは糞攻撃と近接攻撃が主体だろうが、それだけだと怪我や被害が出る」
「ええ、出てます。しかし、数多くの子を産むため数が減ることはありません」
使い捨ての道具のように言うな。
確かに弱肉強食だろうが、鍛えられた兵を失うのは損失だがな。
ああ、だから元ボスや能力のある者たちが猿を率いているのか。
生き残るものだけを生かし、生き残れないものは消えていく、そして、精鋭を作るというのは分かるが、効率が悪いな。
生き残るための習慣かもしれんが、精鋭も入れ替わるだろう。
そうなると、何時まで経っても兵が揃わない。
「そのやり方だと、一定の戦力はそろうが勢力を広げることはできないんじゃないか?」
「ええ、でも、核になる者たちの人数は安定しているので、種族の維持は十分にできます」
成程、勢力を安定させることだけを考えていたのか。
「あとは、森の奥からはじき出された強力な魔物が来襲することがあるので、戦力の安定と精鋭を作るのはどの種族も考えていると思います」
「あの蛇とかもか?」
「ええ、あれは本能で感じていると思います。それで、敵を喰らい力を蓄えようとしているかと。倒された奴もここ数百年生き延びていると思われる個体でした」
「ほう、だが赤熊には勝てないんだよな?」
「はい、赤熊はここは百年ほどに出てきた個体ですが、数百年生きたものでも勝てなかった魔物です」
「そうか…生きた年月だけでは解決しないのか」
「はい、そうです」
「魔物には、石が身体にあります」
「ああ、赤熊にもあったな」
「その石を喰らえば、力を得れると言われています。我らの過去のボスでもそれで進化したものがいます」
「お前はどうだ?」
「私も、他種族を狩り喰らっていました」
「ほう、前のボスが止めなかったのか?」
「自ら狩ったものだので」
こいつ、隠れて狩っていたな?
小さいものをコツコツ倒して、力をため続けていたんだろう。
「よく潰されなかったな」
「他の者も大なり小なりしていますし、一定の数を上納すれば許されますので」
ゆるゆるだな…
いや、それを行う事で強い個体を生み出すようにしているのか?
一匹だけが強くても、相手が強大だあってり、数で来られたら負けるからな。
戦力の平均化と底上げを本能的に行っていたんだろうな。
「そういえば、此処は森の浅い周辺部と聞いたが、強さはどうなんだ?」
「バラバラですが、やはり奥に行けば行くほど、強くなりますね。奥には古代竜がいるとも言われています。我々が代々言い伝えていて、決して奥に行くなと言われています」
「だが、行くやつもいるだろ?」
「ええ、行ったものは帰ってこないか、探しに行ったものが石になったものを持ち帰った事もあります」
「石?石にする奴がいるのか?」
「いるようです、姿を見たものはいません。見たものは石になったんでしょうし…」
おお、耶蘇教の司祭は、神の奇跡で人が塩になったと言っていたが、石になる事があるのか。
確かに、見たやつは石になって生き残ることは出来ないだろうから、正体もわからんか…
いや、あのケインとかいう奴なら知っているかもしれんな。
「ケインたちの顔は覚えているか?」
「ええ、私や幹部たちは見ています」
「一応、情報交換が出来るし、場合によっては物資、食料が手に入るかもしれんから、相手が敵対しない限り放置しておくよう伝えてくれ」
「分かりました」
ますます、奴らとの情報交換、物資交換が必要になるな。
情報が足りなさすぎる。
ラジャト・バンダル…白銀の猿 → 円城寺信胤の名
バンダル…猿




