◆第86話:賑やかな夜の囁き◆
次回は、『10月12日(日)13時ごろ』の投稿となります。
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その夜、近くの別荘にて。
食卓に並べられた料理の中に、地元名物の蛸料理が一品――蛸のカルパッチョがあった。
「「「「…………」」」」
無言のまま、エクリナ・ルゼリア・ライナ・ティセラの四人が、ぬるりとした視線をセディオスに向ける。
そして次の瞬間、四人は無言のまま、目の前の蛸の大皿を
――ぬっ、と同時にセディオスへ差し出した。
その目には、惨事に間に合わなかったセディオスへの抗議の意を含んでいた。
◇
エクリナ、ルゼリア、ライナ、ティセラの四人は同室に宿泊し、寝間着姿でベッドに座っていた。
セディオスは別室で休んでおり、彼女たちは安堵と共に晩酌を楽しんでいた。
「はぁ……今日は色々ありましたね……」
「ほんとだよ、あんな気持ち悪いの、二度とごめんだよ……」
ルゼリアがグラスを手にため息をつき、ライナも小さくうなずいた。
その中で、ティセラがふと、ニヤリとした笑みを浮かべて口を開いた。
「そういえば、エクリナ? 今日の騒動のときに言ってましたよね、
“そこは、まだ触れられてはおらんところだぞ?”って」
「んなっ……!?」
エクリナがピクリと肩を震わせ、顔を赤く染めて振り向いた。
「そ、それは……っ、あのような状況で無防備に……っ! 我が意図とは違うぞ…っ!」
「へぇ〜? じゃあ、セディオスとは、まだ……なんですか?」
ティセラの声音には、どこか嬉しそうな響きが混ざっていた。
「う、うぬはっ……! 馬鹿なことを言うなっ……!///」
ルゼリアとライナは、その様子をバーボンを口に含みながら見ていた。
「エクリナの顔が真っ赤に……本当に変わりましたね……」
「この表情、初めて見たかも!」
「う、うるさいっ! 寝るぞっ、もう我は眠るっ!」
そう叫んで布団に潜り込むエクリナ。
賑やかで、 姦しくも温かな笑い声が部屋に広がり、夜の静寂に溶けていった。
──こうして、最悪の一日の終わりは柔らかな笑顔と共に幕を閉じた。




