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魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第五章:再起と絆の魔剣

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◆幕間:魔法談義◆

昼下がりの広間。

ローズヒップティーの香りと、焼き立てのクッキーの甘い匂いが漂う中、穏やかな談笑が続いていた。


その最中、ライナがクッキーをかじりながらティセラに首をかしげる。

「そういえば、魔術師と魔導士って何が違うの?」


「ああ……そういえば説明したことがありませんでしたね」

ティセラは苦笑しつつ紙とペンを取り出し、さらさらと書き始める。


「ざっくり言うと──“魔導術具”を使うかどうかです」

ライナは瞬きを繰り返し、クッキーを持ったまま固まった。


「こういうことです」

ティセラは紙に図を描きながら続ける。


■ 魔術師

・魔法式を自分で組み立てて唱える。

・詠唱や魔法陣を描いて直接魔法を発動する。

→ 現場で設計図を描き、組み上げる人。


■ 魔導士

・魔導術具に刻まれた術式を媒介に魔法を使う。

・道具が自動で魔法陣を展開してくれるため安定性が高い。

→ 完成品の道具を使って戦う人。


■ 魔導剣士(魔導騎士)

・近接戦闘+魔導術具。

・剣や槍を媒介に、戦技と魔法を両立させる者。


「つまり、魔術師は自作派。魔導士は道具派ですね」

「なるほど……でもさ、魔法式と術式ってどう違うの?」


ライナの問いに、ティセラはくすりと笑って別の紙を取り出す。

「いい質問ですね。こうです」


■ 魔法式

魔法の設計図。

頭の中で組み立てたり、詠唱で構築する理論そのもの。


■ 術式

設計図を刻み込んだ実物(魔導術具など)。

紋章や陣として固定され、条件に従って発動するもの。


「……つまり?」

ライナがきょとんとした顔をする。


「魔法式は“レシピ”。術式は“調理済みの料理”です。このクッキーみたいに、誰でもすぐに味わえるんですよ」

「おお~!なんとなく分かった!」


ルゼリアが微笑をこぼす。

「ライナは感覚派ですからね」


「ただ、私たちの場合は魔導術具はあくまで補助です。魔法を放つときは頭で魔法式を構築し、

〈魔法名〉を詠唱として放っています」

ティセラはそこで一息つき、さらりと補足する。


「……もっとも、最上位の〈極大魔法〉だけは別です。あれは魔法陣そのものを構築・発動するために、長大な詠唱が必要になります」


ライナはクッキーを握ったまま、目をまん丸にした。

「そうなの!?」


「私たちは〈魔術師〉ですからね。無意識にでもできるんです。

魔導士の場合は、詠唱や魔法名をきっかけに、術具に刻まれた魔法を展開します」

ルゼリアがさらりと付け加えた。


そこで、セディオスがふと思い出したように口を開く。

「俺も気になっていたんだが──結界魔法と空間魔法の違いは?」


「それは簡単です」

ティセラは迷いなく答える。


「魔力を広げて壁や箱を作るのが〈結界魔法〉。

座標や距離そのものを歪め、箱の形を変えるのが〈空間魔法〉です」


さらに彼女は続けた。

「どちらも“干渉して形を作る”点では同じ。

だから、結界と空間をぶつけても、同じ属性同士をぶつけても、互いに相殺し合うんです」


「なるほど。じゃあ《魔導充式剣ディスフィルス》でも空間魔法に対抗できるわけだな?」

セディオスの言葉に、エクリナがニヤリと笑い、鋭い視線を向ける。


「ほう……我と一戦交える気か?」


「違う。ただ、いずれそういう敵が出てくるかもしれないからな。想定はしておきたい」

理路整然と答えるセディオス。


「……ふん。我を相手にせぬとは惜しいことだな。せっかく相手してやろうと思ったのに」

頬をふくらませながらも威厳を保とうとするエクリナであった。


笑い声と香ばしいクッキーの匂いに包まれ、午後のティータイムは穏やかに過ぎていった。


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