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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第五章:再起と絆の魔剣

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◆第76話:交錯する剣閃、試練の先◆

草原――それは、いつしか日課の訓練場となっていた。

少し離れた場所では、エクリナ、ティセラ、ルゼリアが静かに見守っていた。


幾度も繰り返された模擬戦。

日を追うごとにライナの動きはさらに鋭く、そして無軌道なまでに華麗さを増していた。


この日もまた、セディオスはライナを平原へと誘っていた。

「今日もよろしくお願いしまーーす!」


「……ああ、宜しく。今日は試したいことがあるが、いつも通りの模擬戦で頼む」

セディオスは静かに告げた


「セディオスにしては珍しい発言ですね」

ティセラはかすかに聞こえた声に首を傾げていた


「ルゼリア、セディオスと書庫で何かしておったな。対策があるのだな?」

「ええ、今のセディオスでも可能かと。あとは――楽しみにしましょう」


魔王と炎の少女は微笑み合う。

今日は始まる前から、いつもとは違う結末を予感させた。


「そうなんだ! 楽しみにしてるね!」

(リア姉が手伝ってるのは知ってる……本当に楽しみだ!)


表向きはいつも通りの笑顔。

だが胸の内では、ライナは誰よりもこの一戦を楽しみにしていた。


求めているのは全盛期のセディオス――今の自分で戦ってみたい。

恐らく、セディオスの言葉以上に期待しているのはライナであった。


「じゃあ……始めよう!」

ライナは元気に頷き、《魔斧グランヴォルテクス》を肩に担いだ。


そして、戦いが始まる。

ライナは魔力で身体を強化し、アクロバティックかつ猛スピードの連撃が嵐のように襲いかかる。

雷の如き斬撃が頬を掠め、熱を帯びた風が耳を切り裂いた。


(……ここまで速く、重くなったか。だが――まだ、譲れない)


押し寄せる連撃に翻弄されながらも、セディオスの表情に焦りはなかった。

むしろ――静かに、ある手応えを待っていた。


自身に巡る身体強化の感覚。

打つたびに強くなる腕力。

そして――反応の速さ。


かつては所持していながら、今はこぼれてしまった感覚。

ライナと剣閃を交えるたびに、その手に戻るのを感じていた。


(いなせている! ライナはこれまでの相手でも別格だ。俊敏で怪力――だが、負ける気がしないな!)


剣と魔斧が交差するたびに火花が散り、剣士は翻りながらニ閃目を微かに与えていた。

雷の少女はそれに気づかず、真正面から立ち向かっていた。



戦いが始まって数分。

近くで見守っていたエクリナが、小さく眉を寄せた。


「……おかしい。ライナの動きはいつも通りだが……傷が、少しずつ……?」


そう、ライナの腕や脚に細かな擦過傷が浮かび始めていた。

一方、セディオスはいつもよりも傷が少ない。


「しっかりと効果はあったようですね」

模擬戦の行く末を静かに見守るルゼリアは言葉をこぼした。


そして――次の瞬間。


「うわっ……!」


ライナが吹き飛ばされた。

土煙を巻き上げ、平原の地に背中から転がる。

セディオスはわずかに息を切らせていたが、大きなダメージは見受けられなかった。


「えっ……? なんで……?」


ライナは驚きに目を見開きながら立ち上がる。

いつもなら決められている一撃を躱され、カウンターを与えられていた。


「おかしい……僕の動きが読まれてる? そんなはずないのに……」


動揺を隠せず、ライナは再び踏み込む。

セディオスは落ち着いた体捌きでそれを受け流し、切り結ぶこと数合。

互いに離れ、息を整える。


「だったら! これで……どうだぁ!!」


ライナは見てみたくなった、剣閃以外にも対応できるのかを。

魔力を凝縮させ、雷の刃を作り出す。

その刃を勢いよくセディオスへと放つ。


閃光が一直線に走る――

だがセディオスは紙一重で身を捻り、足裏に草を裂く感触を残して避け切った。


「な、なんで……避けられたの……?」


咄嗟に行った行動。剣閃よりも早い一撃

紫電纏う飛翔の刃を避けられるものなどそこまでいない。通常ならば弾くか切り伏せる。

それを躱したセディオスに問いを投げかけた。


「……動体視力と反応速度の強化。低級魔法でも十分にできる。あとは――体捌きだ」

セディオスは静かに言った。


「ライナの突進力を、逆に利用しただけだ。お前の勢いを、別の方向に逸らせば……な」

ライナの胸中に、焦燥が広がる。


「それだけで……!」


「じゃあ、これならどうだッ!」


《グランヴォルテクス》が変形し、巨大な斧になる。

ライナは跳躍と同時に、一撃必殺の大技を振り下ろす。


だが、その隙を――セディオスは見逃さなかった。

低く構え、一気に踏み込むと、《グランヴォルテクス》の内側へ潜り込む。


そして、魔斧が振り下ろされる寸前。

「っ……!」


刃を喉元へ――冷たい鉄がライナの肌に触れる。


「……っ負けた……」

唇を噛みしめ、悔しさに目を伏せる。だが次の瞬間には、誇らしげに顔を上げた。


「やっぱり……セディオスは、すごいよ」


遠くで見守っていたエクリナとルゼリアは、満足げに小さく頷いた。

ティセラもまた、安堵の笑みを浮かべていた。


風が平原を渡り、二人の汗を冷やしていく。

ただの勝敗ではない。

互いを高め合う証として刻まれた剣閃の記憶が、確かにそこに残った。


次回は、『9月28日(日)13時ごろ』の投稿となります。

引き続きよろしくお願いしますm(__)m


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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