◆幕間:氷紅茶の語らい◆
訓練場で一人、木剣を振るうライナ。
セディオスの指導を守り、黙々と素振りを重ねていた。
「はっ! とうッ!」
汗が滲んでも構わず、振りは止まらない。
そこに――
「少し休憩せぬか、ライナ」
紅茶とおやつ、そして顔拭き用の布を持ったエクリナが声を掛ける。
「ん? あ! 王様! ありがとう!」
おやつに気づいたライナは素振りを止め、二人で木陰の長椅子に腰を下ろした。
「ほれ、これで汗を拭くと良い」
「うん!」
ライナは全身の汗を拭き、グラスを手に取る。ちり、と氷が鳴った。
「うわ、冷えてるね! あ、氷が入ってる!」
ゴクゴクと飲むと、微かなレモンの香りが抜けた。
「最近ティセラが造った氷製造術具があってな。紅茶と合わせてみたのだ、悪くないであろう?」
「隠し味はレモンだ」
エクリナはどこか誇らしげに微笑んだ。
「冷たくて、おいしいよ!」
そういいながら、グラスを頬に当て冷たさを感じていた。
「菓子も食べるといい。特別に甘みを強くしておる、皆には秘密だぞ?」
エクリナは皿を差し出しつつ、人差し指で「しっーー」という動作を取った。
「へへ、ありがとう王さま。甘さが染みるね、これもおいしいよ!」
礼を言いつつ、しっとりしたケーキを口にする。甘さが広がると、ライナの顔は思わず緩んだ。
ライナが氷紅茶と菓子を交互に楽しんでいると――
「セディオスとの訓練はどうだ?」
エクリナが本題に入る。
「やっぱり、セディオスはすごいよね! 剣の技ってすごいんだ、知らないことだらけだよ!」
ライナは嬉しそうにまくし立てる。
「でも、昔みたいな『圧』を感じないときもあるかな……」
「温泉の時もそうだったけど、本当に魔力量が減ってるんだね。最初に会った時は、一瞬で僕は負けたのに……」
少し残念で、少し寂しげな響きが混じった。
かつて対峙したときは、魔法ごと押し返され、最後は剣筋だけで叩き伏せられた。
氷紅茶を一口飲み、ライナは胸のざわつきを静める。
「それが、セディオスの選択だからな。あの代償があって、今がある」
エクリナは氷紅茶を一口含み、続ける。
「神との戦いで負った魔核の減退の影響は大きい。それでも足掻き、藻掻いておる。それがセディオスの矜持だ」
「だったら、僕も全力でいかないとね……。実は真剣で戦ったとき、手加減した方がいいのかなって、一瞬思ったんだ」
「でも、それはダメだよね……」
「ああ、全力で戦ってやれ、ライナ。たとえ今は敗れても、あやつは必ず次に食らいつく」
エクリナは穏やかに微笑んだ。
「追い詰められるほどに感覚は研ぎ澄まされ、見えてくるものもある。そういった相手をしてやるといい」
「うん、そうだよね!」
ライナは力強く頷く。
成長するライナ、抗うセディオス。
二人の訓練は、今日も続いていく。




