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魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第三章:静穏と影の狭間

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◆第34話:静寂の中の誓い◆

戦いの余韻がようやく静まった戦場――崩れた岩壁、焦げた地面、散らばる影の残滓。

その中央で、三人の少女が静かに息を整えていた。

「……無事、終わった……んだよね?」

ライナは《魔斧グランヴォルテクス》を肩に担ぎ、疲労と安堵の入り混じる顔で呟いた。


「ええ……今は、ね」

ルザリアも《焔晶フレア・クリスタリア》を納め、空を見上げる。

その瞳には、まだ見ぬ“次”への覚悟が揺れていた。


エクリナは深く息を吐き、空間を見回す。

「“リゼル”は退いた。だが、あやつは何を計画しているのか……次なる戦いに備えねばな」


「……あいつの目、何かが欠けてた。感情じゃなくて……心が」

ライナがぽつりと漏らすと、ルザリアもうなずく。

「感情がないのに、あれだけ話せるなんて……逆に、怖かったですね。理屈だけで動いているなら、止まる理由がない」


やがて、ティセラとセディオスが戦場の外縁から現れた。

ティセラは魔力を保ったまま周囲を見回し、結界を解放する。

「魔力波動、安定しました。今のところ、転移痕跡も消失。リゼルも来ないでしょう」


セディオスはエクリナたちを見て、わずかに微笑みを浮かべる。

「よくやった。……本当に、よく耐えたな」

「当然であろう。我が臣下にして家族……その誇りは、決して折れぬ」

エクリナはゆっくりと歩み寄り、セディオスの隣に並ぶ。


「だが……」

彼女は空を見上げながら、静かに続けた。

「この世界には、まだ我らを脅かす者がいる。それが『何』であろうと、我は必ず打ち砕く」


「その時は、また戦うの?」

ライナが問いかける。


「ふむ……そうならぬためにも、今一度、備えを整える必要があるな」

エクリナは少し微笑みながらそう答える。


「帰りましょう、皆さん」

ティセラが穏やかに言い、全員がうなずいた。



──夜。

再び館に戻ったエクリナたちは、テラスで静かな時間を過ごしていた。


セディオスがバーボンの瓶とグラスを持って現れ、エクリナの隣に座る。

「今日は、本当にお疲れさま」


「ふ……我は王、当然の務めを果たしたまでのこと」

そう言いながらも、エクリナの声音はどこか柔らかい。


二人でグラスを傾け、夜空を見上げる。

「……思い出したくもない気配だった……あれは“魔哭神”に通じていた……」

エクリナが、ぽつりと呟く。


「過去からの逆襲か……」セディオスが静かに返す。「まあ、いざとなったら逃げよう……か」


エクリナは一瞬、驚いたようにセディオスを見た後、ふっと笑った。

「平穏な日々はどこへやら……だな」


二人のグラスが、静かに音を立てて重なった。

その音は、再び訪れるかもしれない嵐への覚悟と、今を慈しむ心を映していた。

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