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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第十二章:ルゼリアと魔術学院の灯火

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◆第300話:エーデルの魔法◆

第一試験会場――

学徒たちが静かに観察を始める。

ルゼリアとエーデルは見つめ合っていた。


切り出したのはエーデルであった。

「戦具は禁止じゃが……魔装があるなら装備してよいぞ。あるんじゃろ?」


エーデルは腰の魔導鞄らしきものを見やって言う。


「お優しいですね」

その言葉に素直に感謝する。


「防具に関しては寛容にしているんじゃ、死なれては困るんじゃからな」

エーデルは口角を少し上げて返した。


「では――私の魔装、纏いなさい」


指の金の輪が煌めく。

《瞬装環アペリオ》は旅装束を一瞬にして、《紅蓮纏装ヴァル・アルディア》に変更させる。


真っ赤なジャケットコートに短いスカート。

先ほどまでの地味な服装とは打って変わって、可憐さを帯びる。


観客の学徒からはどよめきが起きた。

魔装を一瞬で装着できる姿など見たことが無かったからだ。


「おーおー、なんと珍しい! 特注の指輪じゃな?」

金の輪を眺め興味津々なエーデル。


「ええ、私の家族があつらえたものです」


「支度はできました……始めます!!」


奇襲とばかりに炎の矢を高速展開し、十本打ち放った。

ダン! ダン! ダン!と発射音が響く。


意表を突いた攻撃。

エーデルに急接近する炎矢。


バアァァ――ン と衝撃音が出る。


固唾を飲む学徒たち。

煙の先には――無傷のエーデルがいた。


「ひひひ。似合わず、したたかじゃな! 良いぞ!」

「だが、焦れすぎじゃな。目標を見失う攻撃は、勝てるときに行うものじゃぞ?」


快活に笑いながら、ダメだしするエーデル。


「……無傷ですか。該当属性は、少し絞れました」

「スカーレット・ニードル 断続発射!」


ルゼリアは背後に小さな魔法陣を二十展開し、炎矢を発射待機させる。

それはエクリナの闇魔弾を彷彿とさせる光景であった。

エーデルの属性を知るために一発ずつ間隔をあけて発射する。


「それが賢い。まあ、見せてやるのじゃ」


接近する炎矢の接近をものともしないエーデル。

接触間近になった瞬間――ピンッ!と指ではじいた。

炎の矢は明後日の方向へ飛ぶと、会場の結界に阻まれ爆発した。


「まあまあじゃな。ほれ、よく見ておくのじゃぞ? わらべ」


一発ずつ放たれる矢を両手の指で次々とはじいていく。

指先が触れた瞬間、炎矢の軌道が不自然に折れていた。

弾かれたというより、落ちる方向を変えられたようだった。


エーデルの背後では爆発音が鳴り響く。

会場の結界はかなり強固でほころびすらも出ておらず、学徒は過激な演目を見るように楽しんでいた。


十五発の炎矢をさばいたころ――

「どうじゃ? わしゃの属性はわかるじゃろうか?」


採点とばかりに確認するエーデル。

最後に放たれた〈スカーレット・ニードル〉を指で弄び、しげしげと観察していた。


「ええ、なんとなくですがね。これで確信が持てます」


「フレア・レイヴン!」


両手に魔法陣を展開し、炎の鳥を二鳥解き放った。

中級魔法の威力、ルゼリアはエーデルの回避策を観察していた。


「おお、これは見事じゃな! 指ではじくのはきついわい!」


そう言いながら、手のひらでバシッ! バシッ!と叩き落とした。

まるで虫でも払うような造作もない動きにルゼリアは少しだけ苛立ちを覚えた。


その代わりに見えるものがあった。


「なるほど……わかりました。エーデル殿の属性は『重力』ですね」

「魔法に物理干渉することで軌道を変えるとは、なんとも奇抜ですね」


ルゼリアは一つ目の回答を提出した。


「ひひひ! 大正解じゃ!」

「しかも回避の術すら答えるとは、やはり優秀じゃなぁ!」


魔法属性を看破されて満足げに笑うエーデル。

それを聞いていた学徒は驚いていた。

「回答早すぎ!」「それ以前にあの数の矢は凄くない!?」

どよめきが会場を占め始める。


「さて、あと七分くらいある。どうするんじゃ?」

二つ目の合格基準まで、まだ先があるというエーデルであった。


「折角ですし、胸をお借りします。重力魔法とまともに相対するのは初めてですからね!」

「クリムゾン・ハウリング! インフェルノ・チャージ!」


ルゼリアはそういうと、エーデルを囲むように赤い魔法陣を展開する。

乾いた熱が舞台を撫で、観客席の結界が薄く赤を帯びた。


螺旋渦巻く炎の刃と火球の雨を同時に発動し、襲い掛かった。

中級魔法とはいえ、逃げ場の無い包囲網。


だが――


「グラヴィティ・エアリア 再展開」


エーデルは重力場を改めて発動する。

真っすぐに向かっていた炎魔法の数々はエーデルの半径一メートルに近づくと、自然と逸れていった。

それは地面や外壁に当たり、バアァァン!、バン!、バンッ!! と連鎖するように爆発する。


「わらべよ、もっと真っすぐ飛ばさぬか。わしゃ、周囲の重力を少しだけいじっただけじゃぞ?」

「発動後に制御で照準を変えているようじゃが、無駄が多いのおぉ」


エーデルはルゼリアが放つ魔法をしっかりと見ていた。

魔法制御が得意なルゼリアは、"どんな"魔法でも巧みに操ってしまう癖がついていたのだ。

動かぬ標的ならば、精密射撃で十分と言うような言葉は、実に説得力があった。


少し考えるエーデル。


「……わらべ。戦具を使うのじゃ」


先刻放った規定を一部取り下げた。

それは試験としては異常な発言でもあった。


観客席がざわめいた。

「戦具解禁?」「入学試験で?」「学長、本気じゃん……」

歓声と困惑が、円形舞台を包み込む。


「ひひひ、本当の実力をわしゃに見せるのじゃ!」


面白くなってきたエーデルはルゼリアに命令する。

その言葉に構えを取るルゼリア。

入学試験は更に熱と圧を重ねていく。


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