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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第十一章:巨獣たちの咆哮

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◆第295話:神教団の設立◆

魔哭神城の地下工房――世界を滅びへ導く拠点。

薄闇の卓を囲むのは、リゼル、ネヴァ、ヴァイエルナだった。


「ネヴァ、クリシュニアの血とその歌を記録した術具です」

「その声に共鳴する装飾品を造ってください。形状は任せますが、多くの者が身につけやすいものを。数は大量に必要です」


リゼルは今夜の収穫をネヴァに渡しつつ、次なる指示を出す。


「わぁかりぃまぁしたぁ、リゼル様ぁ。すぐにぃ準備ぃしまぁすぅ」

ネヴァはいつもの間延びした声で返事をする。


「リゼル様」

「わらわは如何しましょうか?」


ヴァイエルナはリゼルの前に立ち、右手を胸に、左腕を腰の後ろへ回して命令を求めた。


「貴方には大事な役目があります。そろそろ、ここに来るはずですが……」

リゼルは四人目の訪れを待っていた。


すると――


「リゼル様~、お待たせどす。アーキュラ、ただいま戻りましたわ~」


工房の暗闇から現れたのは、奇術師めいた魔装を纏う女だった。

灰がかった薄茶の髪は狼を思わせるように軽く跳ね、背丈はヴァイエルナとほぼ同じだった。


「?? リゼル様、この者は……」

「初ぃめてぇですぅねぇ~?」


ヴァイエルナとネヴァは初めて見た者に驚きを隠せず、リゼルに紹介を求めた。

(誰ですの? わらわたち以外に神造生命体がいましたの?)


「あちしはアーキュラ。長~う、仕えておりますえ」

「表の世界を歩く役目が多かったさかい、初めましてやねえ」


柔らかな物腰で初対面の二人に自己紹介する。

仲間なのに、雅に礼をする姿は少しだけ歪にも見えた。


「アーキュラは長く外にいましたが、次の計画に必要なので呼び戻しました」

リゼルは少しだけ補足した。


「リゼル様~、お土産がありますわ」

ネコなで声で名を呼び、卓の上に術具を置いた。


「これは?」

小さな球型の術具を手に取るリゼルは、角度を変えながら眺めていた。


「マナの命脈が記録された術具どすえ。これも欲しがっていたやろ? 入手には難儀しましたわ……まあ、頑張っているのは魔王はんですがね」


アーキュラの言葉に、ネヴァとヴァイエルナは目を見開いた。


「エクリナの動きを、そこまで追っていましたの……?」

つい、聞いてしまうヴァイエルナ。


「それは――秘密やね♪」

笑顔で柔らかくも拒絶する。

「そのあたりは、リゼル様の特権やわ~。容赦してくれやす?」


「……わかりましたわ。リゼル様、そろそろご命令を頂きたいですわ」


アーキュラのつかめない性格に少し苛立つヴァイエルナ。

それでも忠義を尽くすためにリゼルへ声を掛けた。


「では、計画を話しましょう。貴方たちはこれから、神教団を設立して信者を作ってください」

「アーキュラは教祖、ヴァイエルナは教団騎士に扮してください。ネヴァは先ほど指示した術具の製造です」


アーキュラは妖艶に微笑み、ヴァイエルナは凛々しい顔をする。

ネヴァは術具のもたらす結果を楽しみにしていた。


「拠点は魔術都市イグナメル。設立資金は宝物庫から持っていきなさい。神殿は豪奢にするように」

「さて、神教団の名は……アーキュラ、何か案はありますか?」


リゼルは計画を伝えると、名づけを求めた。


「そうどすな……」

アーキュラは細く笑い、少しだけ視線を宙へ泳がせた。


「では、“アバルーンザ”でどうどす? 思い付きやけど♪」

アーキュラは微笑み、提案した。


「……」


「悪くない響きですね、それでいきましょう。大事な計画です。じっくりと這いより、滅びへ導きましょう」


リゼルは嗤い、作戦会議を締めた。


 ◇


コツ、コツ、コツ――

玉座へ続く階段を上がるアーキュラ。

ひとり、ゆっくりと進む。ついてくるのは影のみであった。


「ふふふ、アバルーンザ……懐かしい響きやわ……」


思い付きと偽った名を反芻しながら、遠い記憶に浸っていた。

後ろに手を組み、慰めるように自身の左手を撫でていた。


空の玉座へたどり着くと、アーキュラはゆったりと膝まずいた。

主のいない座を見上げ、その顔をほころばせる。

その時だけは、純真な少女のようであった。



「すべては滅びのために……舞台を眺めて嗤うために、ずっと尽くしやすえ。ヴァルザ様♪」



アーキュラは、そこに誰かがいるかのように微笑み続けた。

世界に滅びが訪れるための種は、静かに蒔かれた。

あとは、それが人の世へ根を張るのを待つばかりだった。


この話で十一章が完了となります。

十章を前編として、後編として書いてみた章になります。

特にスケール感にこだわり、巨獣を出してみました。最後の総攻撃が最大の見どころなのだと思います。

詳細は活動報告に書ければと思います。


次回の投稿より十二章に突入します。

主人公がガラリと変わり、あのキャラが奮闘します!


次回は、『7月12日(日)13時ごろ』の投稿となります。

引き続きよろしくお願いします。


本日もお付き合いいただきありがとうございました!

引き続き、評価・ブックマーク・感想で応援いただけると励みになります!

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