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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第十一章:巨獣たちの咆哮

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◆第292話:星楔樹エトワコル◆

次回は、『7月5日(日)13時ごろ』の投稿となります。

引き続きよろしくお願いします。


本日もお付き合いいただきありがとうございました!

引き続き、評価・ブックマーク・感想で応援いただけると励みになります!

幻環山ミラネリオンの最奥。

魔晶の巨塔の中心に、この旅の目的地――『星楔樹エトワコル』はそびえていた。


「そろそろ、いくど。警備隊とレンジャーはここで留守番だど」

「リンデ様、ヴァレンシア殿、シルヴァ殿、エクリナ殿と、おいどんだけでいくどお。ここは神聖な場所、大勢では行けないどお」


ジャバープルはしばらく黙っていたが、時間には限りがあるため優しく促した。

リンデたちを連れて、魔晶の森の穴を通り、さらなる奥に進んでいく。


ほどなくして最奥にたどり着くと、そこは魔晶の部屋であった。

中は空洞だが、天は開いていた。

外よりもさらに美しく、日差しによって陰影が変わり、刻々と見え方が変わっていた。

まるで、極東の玩具――万華鏡のようであった。


しかし――それらすら前座と思えるほどのものがそびえ立っていた。


『星楔樹エトワコル』


この旅の目的地であり、世界にとって重要な大樹。

マナの生成をし、星を成長させるための器官。

それが目の前にあった。


「おお! これは――荘厳だな……それしか言葉がでない……」


エクリナは眩く光の葉、白く透明な枝、マナが行き来する幹。

すべてが美しかった。

無機質のようで、内部では植物特有の動きを見せていた。

まさに唯一無二の存在が、屹立していた。


星楔樹を見る一団。あまりに感嘆して身動きすら忘れていた。

「……エトワコルはこの星の創生のころからずっとここに立ち、マナを生成し続けているぬう」


シルヴァはゆっくりと神秘の大樹に近づき、透明な幹に手を当てる。


「今日も元気だぬう♪ さて、術具を回収するぬう」

大樹の根元を見渡し、探査術具を探すシルヴァ。


「我も手伝おう。どこを見ればいい?」

「ありがとうぬう。根の付近の魔晶を見て欲しいぬう、マナと一緒に排出されて魔晶に閉じ込められているはずぬう」


わかりやすく説明するシルヴァ。エクリナはうなずくと捜索に加わった。

リンデやヴァレンシア、ジャバープルも静かに参加していた。


「三つ送ったから、一つくらいは見つかって欲しいぬうが――」

シルヴァは大樹の周辺を回りながら、木の枝で頭を掻く。


「あ、ありましたわ! これですわよね?」


ヴァレンシアは魔晶に入った探査術具を発見した。

自身では引き抜けなかったため、声を上げて助けを呼んだ。


「見つかったぬうか!?」

「引き抜くどお!」


シルヴァが駆け寄り、ジャバープルがその巨腕で引き抜いていた。


「一つしかないであるな……仕方なしであるか」

発見された場所の周辺を見やるリンデ。


「元々帰ってくる確率を上げるために三つにしていたぬう。一つあれば十分ぬう――あ、ジャバープル! 丁寧に砕いて欲しいぬう! 術具は壊さないようにぬう」

シルヴァは説明し、ジャバープルに注意をしていた。


「む……むずかしいどお……」

「我が切ってやろう」


悪戦苦闘するジャバープルはエクリナに魔晶を渡した。

エクリナは宙に投げると指を振り、空間魔法と闇魔法で切り刻んでいく。

そうこうして、術具を壊さないように魔晶を砕いた。


「ありがとうぬう!」


シルヴァは術具を受け取り破損がないかを確認する。

術具の状態を確かめ、皆の意識がそちらへ集まっていた。


ヴァレンシアは、ふと足元の魔晶片を一瞥していた。

そこには、何かが抜け落ちたような浅い窪みがあった。

だが、ヴァレンシアはすぐに視線を戻し、シルヴァたちの話へ耳を傾けた。


「これなら、動くぬう」

鞄から、魔晶版を出すと探索術具と接合する。


ピ――、ピピ――。ピコン!

魔晶版に文字が浮かび上がり、下から上へと流れていく。

それを目で追うシルヴァ。


「うん、ちゃんと記録されているぬう」

探索術具がこれまで流れた命脈の軌跡を確認した。

「話が長くなるから、外の町で説明するぬう」


「そうであるな、早々にここから去るのである」


リンデはシルヴァの提案に同意し、先導して大樹の前から立ち去った。

エクリナは一度だけ振り返った。

生命の鼓動を担う『星楔樹エトワコル』――その荘厳な景色を脳裏に焼き付けていた。



それからは大移動だった。

オオトカゲは放たれ、森へ入っていた。


大鷲型ゴーレム《ガルダ》は客車だけを掴み、低空で運んでいた。

客車の中にはリンデやヴァレンシアたちが乗っていた。

獅子型ゴーレム《ドロモス》は、エクリナ一家とイーサリを背に大自然を闊歩していた。


巨大なゴーレムを襲う魔獣はいない。

《ガルダ》は懐かしい空を滑り、《ドロモス》は初めての外界を確かめるように歩いていた。


 ◇


三時間後――


《ガルダ》は空から着地し、《ドロモス》はカルデラの壁を下っていた。

そうしてようやく駐屯町にたどり着いた。

既に夕暮れとなり、一日の終わりを告げているように光を灯していた。


「今日はもう休むのである。ジャバープル、宴会でもしようではないか! 費用はアークが持つのである!」

到着早々、リンデが放った。


「気前がいいどお、リンデ様! こっちは秘蔵の酒も出すどお!」

「おめぇら! 特製の炭火焼きを振る舞うどお!!」


その発案にジャバープルはレンジャーたちに指示を出していた。

疲労困憊の面々をねぎらう宴会。

まだまだ元気な亜人属を見て笑うエクリナであった。


だが、シルヴァの手元には、この星の命脈を記した記録が残っていた。


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