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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第十一章:巨獣たちの咆哮

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◆第290話:総反撃、巨獣の魔晶を砕け!◆

魔晶の森を、大鷲の風切り音と獅子の咆哮が裂いていた。

《ガルダ》が空からけん制し、《ドロモス》が地を駆けてドラコタスを翻弄する。

その背後には、巨獣に抗える戦力がすべて揃っていた。


「ガオオオーーーーン!」

《ドロモス》は吼え、側部の四連杭を打ち放ち、右前足で風刃を放っていた。


それに負けじと――


「キュエエエーーーー!」

《ガルダ》は甲高く嘶き、収束砲を放ち、身を翻してかまいたちを浴びせていく。


しかし――

基本的には魔力による攻撃。中々決め手にならず泥仕合化していた。


「やはり、触手が邪魔だな……決め手に欠けておる」

ようやく俯瞰できるようになったエクリナは、魔力を喰らう姿を改めて見た。


「じゃあ、食べられないほどの速度で撃てばいいんだね!」


ライナは思い付きで話していた。

既に《魔斧グランヴォルテクス》は『雷殛槍刃ランス』形態に変形しており、準備は万端だった。


「ふふ、いい案かもしれませんね。巨獣に対抗できる私たちの魔法は――」


ルゼリアは陣地を再起動し、自身とライナの魔核に接続する。

荒れ狂う魔力が唐突に侵入してきた。


「ぐうぅッ!」

「がぁッ!」


「これならできるね……!」

「ええ、派手にやりますよ!」


ライナは左手、ルゼリアは右手を差し向け、背中合わせとなる。

《魔斧グランヴォルテクス》は浮かび、《焔晶フレア・クリスタリア》は地中から出て来て『紅蓮双輪』形態となる。


エクリナ含め、皆は固唾を飲み見守る――壱番槍が放たれる瞬間を。


「雷鳴よ、我が腕に集え。天を裂くは蒼き殛槍――」

「紅蓮よ、我が心に燃え上がれ。炎輪の奔流、いま咆哮せよ――」


姉妹の詠唱が始まる。

雷の大槍は回転を始め、赤き花弁がそれを加速させる。

螺旋になる紅と蒼――詠唱が進み臨界となる。


「「我らが信念で貫き正義を示せ――レグナ・インフェルヴォルツ!!」」


ダアァァァ―――――――ンッ!!!

と、射出後に空気を突破する音が響く。


ルゼリアとライナの複合極大魔法。

マナが助けてくれるからこそできる、最大の一撃を撃ち放った。


雷槍が光速に近い速度で射出された。

後方に炎輪を備え、回転加速していく。


ドラコタスの触手は本能のままに喰らおうとするが、喰いつけず、焼かれていく。

そして――背中の魔晶に見事に命中する。

炎雷槍はなおも唸りを上げ、ギュルギュル――ガガガンッ!と魔晶を削っていく。


その一撃が、総攻撃の号令となった。


「行くぞぉぉぉーー!!」


火ぶたが切って落とされたとばかりに、エクリナを先陣としてドラコタスへ駆けていった。


ドラコタスは体をひねり、螺旋の炎雷槍をいなし、巨大魔晶への攻撃を食い止めた。

「ギャオオオオオオーーーー!!!」と鳴くと、触手が追加され、エクリナたちへけし掛けていく。


「来るぞ! 堕とせ!」


エクリナは魔杖で打ち、円盾で弾き飛ばす。

サクネは動きを重ねるように援護をしていた。


エクリナは更に飛翔し、追撃を行っていく。



「うおお!!」

セディオスは吠えながら、横一線を見舞い、首切りで次々と数を減らしていく。


「やるね! ヴォトカスト、せっかくの槍だ、試すよ」

ガンゴとブロムの合作を振るう赤い騎士。石つぶてを放ちながら大槍で切り結んでいた。


「負けられんどぉぉ!!」

ジャバープルは巨腕で殴り飛ばし、レンジャーたちは短剣で肉薄していた。


「一斉射である!!」


アーク警備隊は二部隊に別れ、長身の魔導銃にナイフを付けて近接、背後から狙撃する様式で対抗していた。

リンデ本人も指示を出しつつ、大筒で触手を撃ち落としていた。


その背後では――


ティセラが陣地の力を借り、一団の守護を一手に担っていた。

ほぼ捨て身の突撃、判断が鈍れば倒れる者が出てくる。


だが、今日のティセラは一味違った。


「いつもは魔力の残量も気にしますけど……今日は常に全力です!」

「ミメシス・アークレイ、フォートレス・フィールド――最大展開!!」


ドラコタスの戦場を覆うように、広大な結界を展開する。

更に結界に補助魔法を掛け、守護を強固にしていく。


「周囲の魔獣も面倒ですが、これならば護れます」


ティセラの背には、ヴァレンシア・イーサリ・シルヴァがいる。

ドラコタス以外の強襲を受けるわけにはいかなかった。

まさに戦場そのものを囲う檻だった。



エクリナ一団の総攻撃で徐々に数を減らす触手。

だが、代償に少なからず魔力も補充されていた。


ガバアアァァーーーと大口を開けるドラコタス。

口内が真っ白に輝いていく――


「来たか!」


エクリナは歯噛みする。

すぐさま地上に降り、《ノクタルシア》を前に出す。


「皆、我の後ろに!!」


冥八天翼で周囲を囲み、球状の空間壁を五重に展開する。

サクネもすぐさま補助に加わる。


「エクリナ、頼むぞ!」

「ああ、任せろ!!」


背を支えるセディオスに応えるエクリナ。

その声を皮切りに極太の収束砲が発射される。


砲撃と障壁が正面から激突する――さらに、そこへ一手を重ねる者がいた。


「待ってましたよ♪ 多重リフレクト・ライト!!」


エクリナの空間壁に重ね掛けされるは、魔法反射の壁。

それを多段発動していた。


バアアアァァァーーーーン!!!!!

バババババババッ!!


乱反射した砲撃はドラコタスへ降り注ぎ、背の触手は受け止めきれずに次々と焼失していった。

魔法を喰らうことができなくなったドラコタスは無防備となり、吠えるしかなかった。


「どうですか? 自分の砲撃の威力は♪」


ティセラは口元を吊り上げ、珍しく底意地の悪い声音で言った。

まるで、エクリナを苦しめた意趣返しとばかりの行動であった。


「やれ! 《ガルダ》! 《ドロモス》!」


イーサリが声を張り上げる。


「クエエエーーーッ!」「ガオォォォン!」


大鷲と獅子は指令を受け取り、仕留めに掛かる。

《ガルダ》は大翼に風刃を、《ドロモス》は大刃に金属魔法で補助する。


ドラコタスの背の魔晶の根元を狙い、両脇から一閃をお見舞いする。

ズガガガガァァァーーーーと切り砕きながら、二体は疾走した。


「さて、コルネ。そろそろ仕舞いの一撃だ」


巨大魔晶を削られ、吠えるドラコタス。

もはや限界という状態であった。


その目の前に――《ヴォトカスト》が槍を携え立っていた。

だが、それは大地ではなく、射出路であった。


「エクリナ――やってくれ! プロモ・ガイア・カリス!」


コルネは、突撃のために《ヴォトカスト》の装甲と骨格強度を限界まで引き上げる。

物理で立ち向かうなら、もうこれしかない――そう腹を括った一撃だった。


「粋や良し! サクネ、同時に行くぞ!」


「レイヤー・スマッシュッ!」

「レイヤー・スマッシュ」


背後にいたエクリナとサクネが息を合わせ、空間膨張の砲撃を放つ。

かつてのとどめの一撃が、反撃の技となっていた。


ドオオォォーーーーーン! シュパアアアァァァーーーー!


轟音とともに射出される赤い騎士、大槍を構え突貫の姿勢をとる。

狙うは魔晶の根元――全ては折り砕くために!


「おおおーーーーー、根性だぁぁぁ!!」


吠え猛るコルネ、反応できないドラコタス。

ガッキイイイィィィーーーーーーン

的確に巨大魔晶に命中した突撃は、大槍を奥深くまで突き刺した。


ビキビキビキビキ――ボキンッ! ドオオォォォンーーーーー

ドラコタスの背中にあった魔晶が折れて堕ちた。


「ギャオオオオオオッ!!!!!!!」


その衝撃に轟音を上げたドラコタスは、身を翻して一団から逃げ出した。

エクリナらはそれを追わず、逃げるさまを見届けていた。


隣にいたサクネは礼だけすると霧散していた。

「次も頼むぞ……」


エクリナは微笑み、見送った。

「ふうぅ~~。ようやく終わりか……」

そのまま大きく息を吐き、ようやく一息ついた。


巨獣との戦いを制したエクリナ一団は歓喜に沸いた。

最初は死すら思わせた戦場が、仲間が次々と集い、逆転したのだった。

ねぎらうもの、万歳する者、抱き合うもの、涙する者、放心する者、様々であった。


エクリナたちはようやく、『星楔樹エトワコル』に出会う準備が整った。


次回は、『7月2日(木)13時ごろ』の投稿となります。

引き続きよろしくお願いします。


本日もお付き合いいただきありがとうございました!

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