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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第十一章:巨獣たちの咆哮

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◆第288話:次元を裂く魔王の剣◆

ルゼリアが陣地を敷き、エクリナが作戦を受け取る一方で、セディオスとライナは、巨大な魔晶が林立する中心部へ走っていた。

そこにはリンデたちが魔獣から身を護っていた。


「まだ、目が回るよ~」

ライナは走りながら愚痴を言う。


「家族のためだろ、頑張れ!」

セディオスは励ましつつも、まともに取り合う余裕はなかった。


ほどなくして、リンデたちの元へたどり着く。

背後から、コルネが乗る巨兵も来ていた。


「汝がセディオス殿か。その娘がライナ殿だな? なるほど、エクリナ殿の家族らしいな」


初めて会う二人の名を言い当てるリンデ。

《ガルダ》での突貫に彼らの再会。それらを離れたところで見ていたリンデは微笑ましさすら覚えていた。


「俺たちを知っているのか。嬉しいねえ、さて頼みたいことがある」


セディオスは感謝しつつ、早速本題に入った。


「これから、あそこの二人が魔法式の構築に入る。人手不足だ、手伝ってくれ」

セディオスは時間が惜しく、単刀直入に話をした。


「セディオス、それじゃわかりにくいよ!」


ライナはその言い方に異議を唱えるが――


「あい、わかった。細かいことは、移動しながら聞くのである」

「皆行くぞ!」


リンデは先陣を切り、走り出す。

驚くセディオスとライナだったが、すぐ横につく。


殿はサクネがついた。八体の意思なき影人形は既に役目を終え霧散しており一人きりであった。

コルネも殿に参加し、一団を護るように露払いをしていく。


「信じてくれるのか?」

「汝はエクリナ殿の主なのだろう? 当然である!」


視線を合わせ、笑うリンデ。

信頼する者の家族――信頼するのは当然であった。


「ありがとうよ! 話が分かる偉いさんだな」

「何か作戦があるのであるな? とりあえずエクリナ殿と……ルゼリア殿か? 何としても護るのである」


ここで生き抜けねば、すべてが終わる。

気合と覚悟がにじみ出ていた。


 * * *


その頃、工房では――慌ただしさが最高潮であった。


イーサリがマナ研究所からマナ収集機とマナ補充機をありったけ運び込んでいた。

オオトカゲ車を十台引き連れ、住民たちも助力していた。


「遅くなった! ガンゴ坊、準備はできているか!」


「だから坊呼びは止めてくれ! もう少しで交換が終わる。どんどん並べてくれ!」

ガンゴは"坊"にツッコミを入れつつ、進捗を伝えた。


「皆の者、転移門の脇に並べるんだ!」


イーサリは背後の術具士と住民の集団に指示を飛ばす。

おおーー!!と、気合の入った声で返事をし、一同は保管術具たちを運んでいった。


「これなら、何とかなりそうですね! 一メートル程度の穴が五分は保てると思います!」


ティセラは構築されていく転移門の動力源を見ながら、推測を立てていた。

ガンゴと共に、並ぶ術具へ魔力濃縮導管を繋いでいく。


「大喰らいな技術だな! 今後の課題にしよう」

イーサリは力不足を痛感しながらも作業に加わった。


「それで最後か? ティセラ、お前は制御術具に戻れ!」

運ばれた最後のマナ補充機を見やるガンゴは、ティセラに起動の準備を言い渡す。


「わかりました!」


タッタッタッ!と走り、制御術具の操作を始める。

ボタンを押し、魔法式の最終確認と調整を進めていく。

転移門の起動準備が間もなく完了する。


 * * *


セディオスら一団が戻ると――ルゼリアの陣地は赤く、とても紅く輝いていた。

それはまるで、星の血を分けてもらっているようにも見えた。


「エクリナ、ティセラ! 支度は整いました!」

ルゼリアが準備完了と報告する。


「さすが、いい頃合いです!」

「師匠、皆、動かします! 避難してください!!」


実験で爆発した転移門。

念のためと避難指示を出していた。

術具士や住民たちは壁際に走り、結界術具を動かした。


「ふうーー……」

ティセラは皆を一瞥し深呼吸をする。


そして――「転移門起動!」と、高らかに声を上げた。

ボタンを押すと――ゴウン、ゴウンと転移門から唸りが上がり始めた。

マナ収集機とマナ補充機が緑に輝き、魔力濃縮導管は刻まれた文様が次々と起動していく。


ひと時して、バアァァァーーーーンと空間を穿つ音が工房を支配した。

転移門の中央に濃紺の穴が開いていた。


「「やったぞ!」」


小さな穴とはいえ、無事に稼働した転移門を見て歓喜するイーサリとガンゴ。

その声は開いた穴から、魔晶の森にも届いていた。


「エクリナ、魔核と陣地を繋げます!」

ルゼリアは次元の穴を確認すると、最終工程へ移った。


「ぐうぅぅぅ! があぁぁ!!」

強制的に流れ込んでいく魔力の量に苦しむエクリナ。


「大丈夫か!」

「王さま!」


セディオスとライナが心配し近寄ってくる。


「大丈夫だ……うぬらは役目を果たせ……」


胸を押さえ、気丈にふるまうエクリナ。

その視線の先には高密度の魔力に魅入られた獣たちが這い寄っていた。


「早いな……」

セディオスは数多の獰猛な気配を感じとる。


「護るぞっ!!」

一団に号令を掛ける。


「警備隊、右方を護れ!」

アーク警備隊はコルネの指揮に従い、二列配置で長身の魔導銃を構えた。


「おいどんたちは左だど!」

レンジャー部隊はジャバープルを中心に弓を構えていた。


「ライナ……」

「分かってるよ、王さまとリア姉の背中は僕らが護る!」

その声に応えるようにサクネは頷いた。


剣士と蒼の少女、影人形は三人で守護に入る。


「冥八天翼――展開!」


エクリナは護られ、準備を進める。

《冥盾翼書ノクタルシア》から改めて、装飾が射出され、杖先を中心に刃列のように再配置されていく。


翼が並んだ姿は牙のような巨剣を形造った。

「おおおおおおーーーーーー」


エクリナは吠え猛る。

漆黒の円盾、魔杖、そして翼。

それらに魔力を限界まで注いでもなお、胸中で暴れまわる魔力。


エクリナは巨剣へ魔法陣を展開し、さらなる魔力を集中させる。

それを目指した魔獣たちは、守護の壁に阻まれ討伐されていく。


「我は征服する――この力、この空間、この刹那に在る全ては我が手中。我に切れぬものなど無く、我に隔てられる理など無い」


新たな空間魔法を編み出したエクリナは、極大魔法の詠唱を始めた。

ルゼリアが魔力をとめどなく補填し、セディオスらが時間を稼ぐ。


「視える世界の縫い目を暴き、重なり合う次元の境界ごと裂け!」

「魔王の究極斬撃――ディメア・シュナイデン!」


紡ぎ出したのは次元を掌握し、空間そのものを断ち割る大一閃であった。

空間の巨剣を掲げ、大きく振りぬく。

その先には転移門の穴――真っ二つにするように下ろした。


瞬間、ズバンッ! ズズズ――と縦にズレが生じた。

そして、ドッパアァァァーーーンッ!! と爆発したかのように異空間が広がる。


「はあはあ……冥八天翼……楔となれ」


高出力の極大魔法を放ったエクリナは疲弊していたが、悠長にしていられなかった。

魔杖の冥八天翼を射出し、裂けた異次元の穴をこの空間へ縫い留めた。

巨獣ドラコタスの対抗策が出番を待っていた。


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