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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第十一章:巨獣たちの咆哮

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◆第279話:星楔樹へ続く道◆

オオザルの亜人、ジャバープルに案内され町に入る一団。

簡素に作られた町並みに、装備を整えた亜人たち、物々しい雰囲気だった。


「普通の町ではないのだな?」

ヴァレンシアの警備をしつつ町を見るエクリナはつぶやく。

「どちらかと言えば、駐屯所みたいな感じですわね」

ヴァレンシアも同感らしく、声を出す。


「ここはミラネリオンの調査と警備をするために作られた町である」

リンデは説明するように話す。


「ここは魔獣の強さが破格で調査が進んではいないのであるが、それゆえに金になりそうな未知の魔晶も多く存在しているのである」

「亜人領でも重要な土地である。ゆえに警戒は必要なのである」


本来は手だししてはいけない土地だが、しがらみもあるという声色であった。


「ここに町を作ってからは亜人属領の発展は著しいぬう。悪いことばかりではないぬう」

「濁流のなかにも清流はあるぬう」

シルヴァは付け加えて良い面もあると話した。


「リンデ様、このまま山に入るど? ちょうど繁殖期だから危ないどぉ?」


先頭にいたジャバープルは立ち止まり、管理者として今は危険であることを告げた。


「……なるべく刺激しないように最小限の手勢をそちらからも出してくれ。こちらは既に人選を終えて来ているのである」

ジャバープルに指示を出すリンデ。


アークから来た一団は、リンデ・シルヴァ・コルネ・ヴァレンシア・術具士二名・警備隊五名。

そして護衛のエクリナの総勢十二名とかなり絞った人数であった。

土地勘のない集団では危険であった。


「……わかったど」


パン、パァーンとジャバープルは手を叩き、町に響かせる。

それを耳にしたレンジャーたちが集まり始める。


「今は、六人どか……皆、おいどんたちについてくるど。リンデ様たちの護衛だど」

「先頭はおいどんがゆく、左右と最後尾に二人づつ配置だど」


指さししながら手際よく配置をしていく山の管理者。

エクリナは感心するように見ていた。


「リンデ様、ゆくど」

「ああ、頼むのである」


二人は短く交わすと、再び歩き出した。

ほどなくして洞窟へ入る。


滴る水音と靴音だけが狭い岩道に反響した。

長く続く暗がりを抜けた先で、一行は言葉を失う。――山の内側に、ひとつの大森林が広がっていた。


木々が生い茂り、カルデラ壁面は蔦と藻がはびこり、大小さまざまな気配が漂っていた。


「こ、これは………山の中なのか……」

「中に入ると、果てしない大きさなのがよくわかりますわね……」


エクリナとヴァレンシアは改めて見る規模に驚いていた。

それは初めて入った面々も同じで、唖然とするしかなかった。


「ここは亜人属領のどの街よりも大きいどぉ。広大すぎて、おいどんも把握しきれないど」

「ひとまず、エトワコルのところまでいくど。そこらに触ったり、魔獣を刺激しないように注意するど、でないと命の保証ができなくなるど」


ジャバープルは一団へ振り返り、管理者然として、厳しく言い渡す。

それは皆が無事に帰るために必要な最低条件でもあった。


一団はその忠告に息をのむ。

目の前の大森林はザワザワとしており、聞きなれない鳴き声が断続的に聞こえていた。

まさに未踏の地であった。


ジャバープルは一団の面々を見て理解できたことを確認すると、静かにうなずき案内を再開した。

なるべく静かに大森林に侵入していく。

最後部の《ヴォトカスト》もすり足で、なるべく音を立てないようにしていた。


「どの植物も巨大だな……」

エクリナは自身の背丈よりも高い葉物植物を掻き分けながら嘆く。

「ここは植物の成長が凄いぬう。オイラもここに住んだら大きくなれるかもぬう」

シルヴァは冗談めかしに説明した。


 * * *


しばらくして――

生い茂る木々と植物の隙間を縫うように進むと、突然草原に行きつく。

そこには小さな湖が見えた。

ジャバープルは皆を制止させ、注意深く湖周辺を見渡す。


「危険はないようだど……あそこで休憩するど。二人、先行で偵察だど」


二本指を立て、左右にいたレンジャーをそれぞれ一名ずつ斥候として行かせた。

それを追うようにゆっくりと進む一団。

危険があると分かればすぐに逃げられるように警戒していた。



斥候二名が問題なしと合図を送ると、歩む速度を早め湖に到着した。

「少し休憩だど、体を休めてくれだど」

ジャバープルはドカリと座るとレンジャーたちを集め、今後の指示を出していた。


「頼もしい案内役だな」

エクリナは木陰の岩に座り、ヴァレンシアにも差し出す。

「ええ、見た目は怖いですけどね」

ヴァレンシアも笑いながら言う。


「ほんと、すごいとこだよね。中には初めて入ったよ」

エクリナの隣に座るコルネも会話に参加した。

「警備隊はいいのか?」

ジャバープルの見事な働きぶりを見て、コルネに言う。


「もちろん、仕事はしているさ。うちらは要人警護が仕事だからね」

笑いながら答えるコルネだった。

「だったら、問題なしだな」

微笑み返すエクリナ。


ジャバープルがこちらに近づいてきた。

リンデとシルヴァも一緒だった。


「この先にオオトカゲの放牧地があるど。問題無ければそれに乗って、中心部を目指すどぉ」

今後の方針を伝えに来た。

「この前も乗ったから大丈夫ぬう」

シルヴァは問題ないと告げていた。


「ここにもオオトカゲがいるのだな?」

「実は珍しい種でな、ミラネリオンから移住してもらっているのである」


エクリナは顎に手を当て、低く唸る。

「なるほど――これほどの魔力波長を受けて育てば、神領なぞ怖くないのは納得だ」


「エクリナ殿はここの波長を感じるのか? 吾輩らには異様という以外には理解できておらぬが……」

平然と言うエクリナの言葉が、信じられないというような声を出すリンデであった。


「? 当然だ、我を誰だと思っておる……コルネもわかるであろう?」

「ああ、バシバシ感じるよ。何かが地中で流れている感じだね」


エクリナの呼びかけに答えるコルネ。

神造生命体は伊達ではなかった。


「うらやましいぬう! オイラもマナの流れを感じてみたいぬう!」


二人の言葉に心底うらやましいというシルヴァであった。

枝の手を握り、声を出していた。


これからの方針を聞き、少しだけ談笑に浸る一同。

少しばかりの休憩を得ていた。


エクリナは無言で空を見上げた。

胸の奥を、何か巨大な鼓動がゆっくり撫でていく。

――ただの山ではない。そう、肌ではなく魔核が告げていた。


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