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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第十一章:巨獣たちの咆哮

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◆第277話:ゴーレム対決の行く先◆

轟音が鳴り響く、大型開発工房の裏。

その音は自治区中に鳴り響いていた。だが、それを止めることは容易ではなかった。


ガッキィィィ――ン!!

ガイィィ――ン!!


刃が打ち合う音が鳴り響く。

しかし、規模がまるで違った。巨体が振るう刃のように重く、衝撃波を伴っていた。

《ガルダ》は喉も脚も狙わない。ただ押し返し、押し留める軌道を選び続けていた。


五度の打ち合いを行い、《ドロモス》が届かない高さまで退避する《ガルダ》。


「キョエェェェーーーーー!!」

「ガオ! ガオォォーーーン!!」


互いに何かを訴えるように喚き合う。


すると――ガゴ、ジャキーーン!

双方の背部の砲身が互いを向け合う。


キュイーーーーーン。

共に魔力を収束させ、砲身を熱くさせる。


そして――


ドン、ドドン!

ダ、ダダァァン!


獅子と大鷲はほぼ同時に解き放つ。

空中で接触し、バアァァン!!と爆発音が轟く。

白い煙に変わり、煙幕となる。


その中を――《ガルダ》は飛び出した。


「ーーーーーーー!!!」


嘴を開き、声なき声――音波を浴びせかけながら、再び突貫する。


「ガウゥゥウウ!!」


《ドロモス》は呻く。

よほど不快だったらしく、後ずさりを始める。


「ひるんだ! 何が起きているんですか!」

ティセラは低姿勢になる《ドロモス》を見て驚く。

「風魔法でしょうか? 私たちには聞こえない何かのような……」

ルゼリアは隣で自身の知識と照合をする。


「魔獣除けの音波だ……空気を微振動させると一部の生物がひるんだり、逃げ出したりする」

「まさか《ドロモス》にも有効とは……」


《ガルダ》の判断に、イーサリは驚いていた。

大鷲は獅子の挙動をしっかりと観察し、有効打を叩きつけていた。


「ーーーーーーー!!!」


滞空し、音波を浴びせ続ける。

このまま《ガルダ》の優勢で持久戦と思われたが―――


ガ、ガシャン!!と獅子から音が出る。

大刃の上部に杭の射出口が突き出す。


ダ、ダダ、ダン!――

そして、即座に空中へ向けて撃ち放つ。


それを見た《ガルダ》は音波攻撃を中断し、翻りながら回避を行う。

追尾してくる杭を次々と大翼でいなしていく。


その隙に、《ドロモス》は大口を開け、巨砲を伸長し魔力を流し込んでいく。

遺跡でセディオスとリゼルに撃ち放った切り札であった。


「おい、大丈夫なのか! あれはやばいぞ!」


セディオスはイーサリへ向き、必殺の攻撃であることを話す。

もちろん製作者の彼女は承知であった。


「……あの高さでは指令は出せない……《ガルダ》を信じるしかない」


イーサリは真っすぐに、二体のゴーレムの喧嘩を見守る。

口出しできない、もどかしい母の気持ちに似ていた。


ギュイイイーーーーン……ドオォォン!!


獅子は撃ち放つ。最後の悪あがきだ。

杭落としに夢中になっている大鷲に向けて放っていた。

魔力の波長を頼りに、盲目のままに。


《ドロモス》も理解していた、魔力がもうすぐ尽きると。

それでも――


(モウ マケナイ)


やられっぱなしでは終われなかった。

視えずとも分かる。押されている。削られている。奪われる――そう獅子の中で警告が鳴っていた。


全力には程遠い砲撃が《ガルダ》へ向かう。

気付いている大鷲は翻りながら難なく回避する。


《ドロモス》から、「ガウ」と嬉しそうな鳴き声が聞こえた。

ダダダダン!と、四連の杭を追加で撃つ。

避けられるのは織り込み済、本命は回避行動中の追撃であった。


「《ガルダ》! 《ドロモス》!」

イーサリはその光景を見て、思わず子に等しいゴーレムたちの名を叫ぶ。


《ガルダ》の尾翼、噴出口、大翼へ、襲い掛かる追尾の杭。

大鷲は上空へ飛び、当たるまいと動き続ける。

だが、挟み撃ちに合い、尾翼を砕き飛ばされてしまった。


《ガルダ》は理解した、墜落すると。

取るべき選択肢はひとつだけであった。


「クゥエェーー!」

ひと声嘶き、覚悟を決める。


一瞬だけ錐揉みとなる。

その動きを殺さぬまま、大翼で姿勢を制御し、《ドロモス》へ最後の突貫を仕掛ける。


「ガオォーーン!」

それを認めた獅子は迎え打つとばかりに吠える。


僅かな時間で二体の距離が縮まる。


《ドロモス》は最後の力を振り絞り、跳びはねると右爪で仕留めに掛かる。

《ガルダ》は避けない。獅子の喉元を狙い、最後の加速をする。


ドオオオォォーーーン!


ぶつかり合う二体巨獣ゴーレム。

《ドロモス》の爪は翼に突き刺さり、《ガルダ》の翼は喉元を打った。


ドッシーーーーン!


そのまま、二体は落下する。

ギ、ギギッと、金属がきしむ音だけが鳴る。


もう、戦える状態ではなかった。


耐えられなくなったイーサリは走り出す。

ようやく喧嘩が収まった二体へ向かっていた。


「イーサリさん、まだ危ないですよ!」

ティセラは制止を促すが、その横を走り抜ける少女がいた。


ライナはイーサリの背を追った。

「僕がついていくよ!」


《ドロモス》が気になるライナは護衛を買ってでて、ついていった。


「仕方ありませんね」

「俺たちも行こう」

ルゼリアとセディオスも後を追った。


「わかりました……」

ティセラも気になっていたため、ついていった。



抱き合うように微小に動く獅子と大鷲。

イーサリは、ようやく手が届く距離まで近づいた。


すると――

《ドロモス》の双眸に動きが見えた。

ライナがイーサリの前に立ち、右手で制止させる。


その手を優しく下ろすイーサリは微笑んでいた。

何故ならば、《ドロモス》の眼には魔法陣が浮かんでいたからだ。

ぶつかり合った衝撃で何かがかみあい、視えるようになったのだとイーサリは感じていた。

魔導術具にはそういった事象がよくあったからだ。


《ドロモス》の眼はイーサリを捉えていた。

その瞬間だけ、滑走路の風音すら遠のいた気がした。

黒かった双眸が、ようやく一点を見つける。


ジッと見ていた、身じろぎをやめて、見落とさないように、記録するように制止していた。


イーサリは《ドロモス》の眼を見つめ、体を震わす。

眼鏡の奥からは涙があふれていた。


「おかえり、《ドロモス》……やっと会えたな……」


本当の再会を果たした《ドロモス》。

もう魔力が無く、限界だった。


「ガウゥ……」と、小さく鳴く。


なんとなく、嬉しさ、優しさを感じる声のように聞こえた。

そして――双眸は再び黒くなり、完全に《ドロモス》は沈黙した。


イーサリはひたすらに涙を流し続けた。

《ドロモス》の脚を撫でていた。


「……よかったね。ほんとうに、よかったね……ありがとう《ガルダ》!」


ライナも隣で泣いていた。

そして、《ドロモス》の魔力枯渇という勝利条件をこなした大鷲型ゴーレムに手を振っていた。


「クエェェ!」

と、ひときわ大きく鳴くと、力なく動かなくなった。



ようやく獅子と大鷲の兄弟喧嘩が収まった。

母と雷の少女は泣き、追いついたルゼリアはライナを背中から抱いていた。

セディオスとティセラは静かにその光景を眺めていた。


次回は、『6月14日(日)13時ごろ』の投稿となります。

引き続きよろしくお願いします。


本日もお付き合いいただきありがとうございました!

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