◆幕間:旅路の道中で想うことは◆
『魔導船フォルネア号』は獅子型ゴーレムの重さをものともせずに大海を疾走していく。
快晴の空に静かな海、瞳に映る天と海の境目は蒼そのものであった。
船の甲板の先頭では、同じく蒼の魔装を纏った少女が揺れる髪を抑えながら進行方向を見つめていた。
「速い速い! 僕ほどではないけど早いね!」
迫りくる波をものともしない大型船と、なぜか張り合うライナは自身の神速と比べていた。
はしゃぐライナの少し後ろにいるセディオスとルゼリアは――
「こうしてみると、全部蒼いな……この風景にライナが混ざってもわからないほどだな」
セディオスは少し笑いながら、空と海と少女を見つめ、思いついたことを口に出していた。
水色の髪・水色の瞳・纏う装備も蒼、全身蒼の少女に蒼一色の景色――そう思うのも当然だった。
その声が聞こえた赤毛の少女はクスクスと笑った。
「確かにライナにふさわしい場所かもしれませんね。これほど見事な蒼は中々お目にかかれません」
楽し気な妹を見ながら、少しうらやましいと思うルゼリアであった。
「しかし、えらく速い船だが……甲板に立っていられるな。吹き飛ばされてもおかしくないはずだが……なんで大丈夫なんだ?」
セディオスは明らかに異常な速度の大型船の速度に疑問が出ていた。
「恐らくですが船首に暴風を散らすための仕掛けがありそうですね。あそこの突き出ている棒にいくつもの魔法陣が見えます」
目を細めながら遠くを見るルゼリアは、指をさしてセディオスに教えていた。
同じく目を細めるセディオスにようやく緑の魔法陣が見え始める。
「よく見ているな……言われなかったらわからないぞ?」
「実に興味深い船ですね。至る所に魔法陣が刻まれていて、細やかな工夫が見えます」
「きっとティセラは興奮したことでしょうね」
頭に浮かぶ笑顔のティセラの顔を思い出し、クスリと笑うルゼリアであった。
魔導術具士の前に、術具が大好きな金髪の少女がこの魔導船に興味がないわけがなかった。
師匠であるガンゴと共にはしゃいだり、感心したりを繰り返していることなど容易に想像がついた。
「もうじき会えるな……お前たちと出会ってから、ここまで離れたことはなかったからな。なんとも不思議な気分だ……」
「……私たちは家族ですからね、たとえ距離があろうとも関係ありません」
「私は本当に家族だと思っていますし、これからも一緒がいいですね」
蒼い空を見上げ、感慨深く言うルゼリア。
二週間という刻は、家族への依存を確かめるには良い機会だった。
それはセディオスも同様であった。
「ああ、俺たちは家族だよ。少し離れても、この関係は切れたりしない」
「ふふ、そうですね」
セディオスとルゼリアは笑い合う。
それに気づいたライナが近づいてきた。
「何か面白いもの見られたの? どこにあるの!?」
ライナは愉快そうに笑う二人が、自分では見かけてないもので盛り上がっていると勘違いしていた。
「……見えるけど見えないもので盛り上がっていましたね♪」
ルゼリアは笑いかけ、ライナに謎掛けをもって答えていた。
「何それ~、二人で盛り上がってずるいよ~」
頬を膨らませてのけ者にされたのを訴えるライナは腕をブンブン振っていた。
「そろそろ、昼食にしようか。食べたいものを好きに選べる仕組みらしいぞ」
セディオスはライナの機嫌を取るために船内へ行くことを促す。
「それ本当! お昼に近いもんね……行こ行こ!」
「あ、リア姉。さっきの謎掛けの答え教えてよ~」
ライナは機嫌を直すと、三人で移動しつつルゼリアに答えを聞いていた。
「ライナ、少しは考えることもしましょうね。思考は大事ですよ?」
ルゼリアは妹の懇願に答えを出し渋っていた。
「謎かけ苦手なんだもん……」
ライナは考えるのが苦手と自白していた。
微笑ましく話す炎雷の姉妹。
そのやり取りを見るセディオスは微笑んでいた。
自身よりも年上で、幼い心の神の子たち――大事な家族の一員。
にぎやかに昼食へと向かっていた。




