表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第二章:雷と炎が交わる刻

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/338

◆第22話:喧噪後の夜は◆

その夜、月光の照らすテラスにエクリナが佇んでいた。

修復を終えた庭を見渡し、そっと微笑む。


以前よりも広くなった農園。

種を蒔いたばかりの花壇。

少し歪な境界線が見える地面。

一部だけ真っ白な外壁。

そして――僅かにこびりついている焼けた匂い。


それは、つい先日の騒動が残した過去の痕跡であり、家族で踏み出した新たな一歩の形でもあった。

エクリナはそれを満足げに見つめる。


そこへ、セディオスが姿を現す。

手にはいつものバーボンの酒瓶とグラスを二つ持ち、隣に座る。


「今日は疲れたな。庭の修復だけで、一日が終わっちまった。……でも、良い共同作業だった」

「それに記念日を迎えられて良かったな」


セディオスはグラスをエクリナに渡し、琥珀色の液体を注ぐ。


「ああ、そうだな。最後の贈り物も喜んでくれたな」

「ライナには帽子、ルゼリアにはスカーフ、ティセラには靴。どれも欲しがっていたものだ、いい品が見つかってよかった」


ライナは被っては感想を皆に聞き、ルゼリアはスカーフの締め方がわからずしどろもどろに、ティセラは革靴の履き心地を確かめていた。

三者三様の笑顔に、今年も渡せてよかったとエクリナは感じていた。

そのお返しに、エクリナは三姉妹から貰っているものがあった。


ライナからは大きな碧の石が輝く首飾り、ルゼリアからは重厚で雅なティーセット、ティセラはそれらを収納する木箱であった。

「我の瞳と同じ色だな、気に入ったぞ」「これは何とも珍しい塗りだ、大事に使うぞ」「この二つに合わせて作ったのか……流石だな」

エクリナはそれぞれにしっかりと礼を言い、宝物が増えたと小さくつぶやいていた。


エクリナは贈り物の渡し合いを思い出し微笑むと、グラスを少しだけ傾ける。

口に芳醇な味わいが広がり、僅かに喉が焼けた。

ふうぅ~と息を吐く。


「あの三人が選んだ酒だ。滅多に手に入らない珍しい品だ、深みが違うな」


セディオスも一口飲むと、いつもとは違う樽の香りを感じ取っていた。

酒を愛する男にとってこれほど嬉しい品はなかった。


「ふふ、それに我が贈った杯と――」

「俺が贈った杯が揃えば――」


二人は声を重ね、照れくさそうにして言葉をつぐんでいた。

主とメイドは、この時間だけ恋仲のようでもあった。


「家族って、こういうものかもしれないな」


「ふ……うぬにしては気の利いた言葉であるな。受け取ってやろう」


その言葉が気に入ったのか、エクリナは微笑んだ。

「ただ……」とセディオスはため息をつきながら――


「おまえのやり方は、時に怖いな。家族なんだから、次があったら手加減してやってくれ」

セディオスは諫めるようにつぶやいた。


「……そうだな。次はもっとうまくやらねば……」


エクリナはグラスに注がれた酒をさらに口に運ぶ。

二人にしばしの静寂が流れる。


やがて、エクリナがぽつりと呟いた。

「我らは……本当に、家族になれたのだろうか? ……そう思うことが、時折あるのだ」


三年前の神の討伐を終えて、エクリナは決めたことがあった。旅をした五人と家族になると宣言した。

過去に孤独を味わっていた面々は、戸惑いながらも快く受け入れてくれた。


それから始まった共同生活は、概ね平穏だった。だが、それはあの夜までの話だった。

些細なことの積み重ねから始まった、初めての大喧嘩だった――取り返しのつかないものを失わずに済んだのは幸いだったが、エクリナは自信を失っていた。


ライナの想いに気づいてやれなかった。ルゼリアの焦りを感じ取れていなかった。ティセラに多大な心配を掛けてしまった。

グラスを持つ指が、わずかに震えた。


背後の館では、三人の声が少しだけ漏れ出ていた。

実に嬉しそうで、まだまだ寝るには惜しいと言った声色であった。


セディオスはグラスを傾け、静かに答えた。

「定義なんてどうでもいいさ。俺は家族だと思ってる。少なくとも、俺にとっては――な」

「家族だからこそ、庭での戦争は、”喧嘩”として収まったじゃないか」

「たまにはぶつかって、たまには泣いて、たまには怒られて……それを家族同士で行う。それでいいじゃないか」


微笑みながら、自信を無くしたエクリナに言う。

その声にエクリナはセディオスを見やる。少しだけ視線を伏せ、再び月を仰いだ。


「……ふ。うぬのそういうところが、我を惑わせるのだ」


だがその声には、どこか温かさが滲んでいた。

こうして、またひとつの夜が静かに更けていった。

彼らが積み重ねてきた日常が、月明かりの下でそっと形を確かめ合うように。


お疲れ様です、ひげシェフです。

これにて第2章は終了です、家族としての在り方が歪かもしれませんが美しく見えるようにしているつもりです。

また、初めてのバトルシーンでしたが、かっこよく映っていると嬉しいです。

今後もバトルシーンは入れていきますので、うまく書けるように精進して行きます。

第3章も準備はできています、ようやく敵勢力が出せます。

引き続きよろしくお願いしますm(__)m


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

評価・ブックマーク・感想をお待ちしてます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ