◆第22話:喧噪後の夜は◆
その夜、月光の照らすテラスにエクリナが佇んでいた。修復を終えた庭を見下ろし、そっと微笑む。
そこへ、セディオスが姿を現す。手にはバーボンの酒瓶とグラスを二つ。
「今日は疲れたな。でも、良い共同作業だった。家族って、こういうものかもしれないな」
「ふ……うぬにしては気の利いた言葉であるな。受け取ってやろう」
「ただ…」とセディオスはため息をつきながら、
「お前のやり方は、時に怖い。でも……あいつらには、必要な存在なんだよ。お前って奴はさ」
と諫めるようにつぶやいた。
グラスに注がれた琥珀色の液体を口に運びながら、しばしの静寂。
やがて、エクリナがぽつりと呟いた。
「我らは……本当に、家族なのであろうか? そう思うことが、時折あるのだ」
セディオスはグラスを傾け、静かに答えた。
「定義なんてどうでもいいさ。俺は家族だと思ってる。少なくとも、俺にとっては――な」
エクリナは少しだけ視線を伏せ、再び月を仰いだ。
「……ふ、うぬのそういうところが、我を惑わせるのだ」
だがその声には、どこか温かさが滲んでいた。
こうして、またひとつの夜が静かに更けていった。 彼らが築いた日常の、その揺るぎない証として。
◇ ◇ ◇
そのころ――
世界のはずれ、誰も近寄らぬ廃墟の奥にて。
朽ちた石柱の上、ひとりの影が静かに佇んでいた。
長く伸びた紺色の髪。その後ろ髪は、丁寧に三つ編みにまとめられている。
少年のような、少女のような――輪郭すら定かでないその存在は、月明かりの中で静かに目を細めた。
「……みつけた」
その声は、乾いていて、どこか人ならざる響きを持っていた。
「やっと……やっと、みつけたぞ……」
影はひとつ息をつき、空に向けて右手を掲げる。
指先から淡い魔力の波紋が広がり、宙にいくつもの光点が浮かび上がる。
その中のひとつ――煌々と輝く、金色の光を見据え、微笑んだ。
「そんなところにいたのか……“魔王”」
目を細めるその瞳に、狂気と執着、そして微かな哀しみが混じっていた。
「――今度は、私が”奪い”に行く。おまえという存在を」
風が吹く。
夜が静かに、深く沈み込む。
そして、少年の姿もまた――月影とともに、霧のように消えていった。
お疲れ様です、ひげシェフです。
これにて第2章は終了です、家族としての在り方が歪かもしれませんが美しく見えるようにしているつもりです。
また、初めてのバトルシーンでしたが、かっこよく映っていると嬉しいです。
今後もバトルシーンは入れていきますので、うまく書けるように精進して行きます。
第3章も準備はできています、ようやく敵勢力が出せます。
引き続きよろしくお願いしますm(__)m
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
評価・ブックマーク・感想をお待ちしてます!




