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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第二章:雷と炎が交わる刻

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26/201

◆第22話:喧噪後の夜は◆

その夜、月光の照らすテラスにエクリナが佇んでいた。

修復を終えた庭を見渡し、そっと微笑む。

ここで夜更けに一息つき、時おりセディオスと語らうのは、すっかり彼女の日課であった。


そこへ、セディオスが姿を現す。

手にはいつものバーボンの酒瓶とグラスを二つ持ち、隣に座る。


「今日は疲れたな。庭の修復だけで、一日が終わっちまった。……でも、良い共同作業だった。家族って、こういうものかもしれないな」


グラスをエクリナに渡し、琥珀色の液体をセディオスが注ぐ。


「ふ……うぬにしては気の利いた言葉であるな。受け取ってやろう」

その言葉が気に入ったのか、エクリナは微笑んだ。


「ただ……」とセディオスはため息をつきながら――

「おまえのやり方は、時に怖いな。でも……あいつらには、必要な存在なんだ。だから、次があったら手加減してやってくれ」

セディオスは諫めるようにつぶやいた。


「……そうだな。次はもっとうまくやらねば……」


エクリナはグラスに注がれた酒を口に運ぶ。

二人にしばしの静寂が流れる。


やがて、エクリナがぽつりと呟いた。

「我らは……本当に、家族になれたのだろうか? ……そう思うことが、時折あるのだ」


三年前の神の討伐を終えて、エクリナは決めたことがあった。旅をした五人と家族になると宣言した。

過去に孤独を味わっていた面々は、戸惑いながらも快く受け入れてくれた。


それから始まった共同生活は概ね平穏”だった”。だが、それは昨日までの話だった。

些細なことの積み重ねでの大騒ぎ、初めての大喧嘩であった――庭の損壊で済んだのは幸いだったが、エクリナは自信を失っていた。

グラスを持つ指が、わずかに震えた。


セディオスはグラスを傾け、静かに答えた。

「定義なんてどうでもいいさ。俺は家族だと思ってる。少なくとも、俺にとっては――な」

「家族だからこそ、庭での戦争は、”喧嘩”として収まったじゃないか」

微笑みながら、自信を無くしたエクリナに言う。


その声にエクリナはセディオスを見やる。少しだけ視線を伏せ、再び月を仰いだ。

「……ふ、うぬのそういうところが、我を惑わせるのだ」


だがその声には、どこか温かさが滲んでいた。

こうして、またひとつの夜が静かに更けていった。

彼らが積み重ねてきた日常が、月明かりの下でそっと形を確かめ合うように。



 * * *



そのころ――


世界の中央――かつての戦域、誰も近寄らぬ魔哭神の居城の奥。

廃墟となった城の屋根の上に、ひとりの影が静かに佇んでいた。


長く伸びた紺色の髪。その後ろ髪は、丁寧に三つ編みにまとめられている。

少年のような、少女のような――年頃も性別も、輪郭の定まらないその存在は、月明かりの中で静かに目を細めた。


「……みつけた」


長い時間、名を呼ぶことすら許されなかった想いが、ようやく言葉になったかのような声だった。

乾ききったその響きは、どこか人ならざる気配を孕んでいる。


「やっと……やっと、みつけました……」


影はひとつ息をつき、空に向けて右手を掲げる。

指先から淡い魔力の波紋が広がり、宙にいくつもの術具の光点が浮かび上がる。

その中のひとつ――煌々と輝く、金色の光を見据え、微笑んだ。


「そんなところにいたんですね……“エクリナ”」

目を細めるその瞳に、狂気と執着、そして微かな哀しみが混じっていた。


「今度は、わたくしが『奪い』に行きます。貴方という存在をね」

その「奪う」という言葉には、憎しみだけではない、歪んだ愛情のような色も滲んでいた。


風が吹く。

夜が静かに、深く沈み込む。

そして、少年または少女の姿もまた――月影とともに、霧のように消えていった。

お疲れ様です、ひげシェフです。

これにて第2章は終了です、家族としての在り方が歪かもしれませんが美しく見えるようにしているつもりです。

また、初めてのバトルシーンでしたが、かっこよく映っていると嬉しいです。

今後もバトルシーンは入れていきますので、うまく書けるように精進して行きます。

第3章も準備はできています、ようやく敵勢力が出せます。

引き続きよろしくお願いしますm(__)m


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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