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魔王メイド・エクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第九章:闇に芽吹く信頼

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◆第184話:禁じられるべき漆黒の円盾◆

それからは二班に分かれて準備を進めた。

エクリナ・ティセラ・ガンゴは戦具の修繕と強化。

セディオス・ルゼリア・ライナは遺跡探索に向けた買い出し。


特にエクリナらは、とある戦具の調整に集中する必要があった。

それは《冥盾翼書ノクタルシア》であった。今は解体され、使用はできなくなっている。

エクリナ専用魔導戦具であり、《魔盾盤ヴェヌシエラ》と合体して稼働する強化戦具。使い手の魔核を締め上げ、魔力を貪り、対価として強大な力を発揮する。

しかし、さすがのエクリナであっても《ノクタルシア》の制御は厳しく、稼働時間が短かった。


「さて、どうするティセラ? ようやく本題に取り掛かれるが……お前の理想は何だ?」

ガンゴは師匠らしく、弟子に問いかける。


「もちろん、効力はそのままで魔核への負荷を最小限に減らすことですね」

明確に回答するティセラ。


「エクリナ。正直に教えてください、魔核への影響はどれくらいですか?」

ティセラは《ノクタルシア》の調整の足掛かりにすべく、使用した感想を確認する。


「そうだな……円盾のみで空間魔法を展開すると、それなりに魔核に痛みが出て、使うほどに脱力感を覚えたな。まあ、我慢できる程度だが」

「加えて八翼を展開すると極大魔法の二重詠唱は可能であった。だが、その分、魔核への負荷は強くなり、魔力放出が乏しくなるのを理解した。今の段階では短期決戦でしか使えぬな」

エクリナはティセラが言うとおりに正直に答えた。


「……そうですか」

内容を聞いて思案するティセラ。


「う~む……」

腕を組み、天を仰ぐガンゴ。

二人の職人がエクリナの回答を聞いて悩んでいた。


「どうしたのだ……?」

沈黙する師弟に不安になるエクリナ。


「思っていることは言いますね……」

「本当にごめんなさい! 《ノクタルシア》はやはり欠陥でした!」

ティセラは頭を下げた。


「はあぁ~。間違いないなぁ……」

ガンゴもそれを肯定した。


「ティセラ、いいのだ。まずは謝罪の理由を教えてくれ」

突然謝ったティセラを許し、事情を聞くエクリナ。


「エクリナは《ヴェヌシエラ》を容易く操っています。魔力を多量に欲し、空間魔法を強化して発動できる戦具です」

「稼働に必要な魔力量は、若い魔術師二人もしくは三人分に換算できます。魔核の成熟は知っていると思いますが、肉体と違い魔核の成熟は遅く、極大魔法を扱うには二十年ほどは追加で時間が必要です」

ティセラは指をいじりながら、少しずつ説明をしていく。


「エクリナはさらに《アビス・クレイヴ》も使ってます。あれもそれなりに魔力を消耗するんです。それらから推測すると、恐らく神造生命体の中でも上位に位置する魔核を備えていると思います」

「そのエクリナが……魔核に痛みが発生するなんて……異常なことです。まさに死に至らしめる戦具……辛い思いをさせてすみませんでした」

説明を終え、改めて謝るティセラであった。


「改良せずに使わない選択肢もあるかと思います」

頭を上げて別の選択肢を提示するティセラ。


「……本来ならば封印されるべき戦具か」

目を瞑り腕を組むエクリナは少し悩んだ。

《ノクタルシア》により、強大な力の対価に魔核が締め上げられる――それはかつての《アルヴェルク》と重なった。


(ガンゴ殿が激昂するのも改めて理解できるな……いつかは死ぬか……もしくはセディオスのように魔核減退が起きる)



(だが、新たな魔剣たちはセディオスを支えておる……ならば我も……守るべき者がいる限り、代償から逃げぬ)


選ぶ道は決まった、目を開けて答える。

「……良いではないか、我にふさわしい」

エクリナは理解し、受け入れた。


「《ノクタルシア》が無ければリゼルに倒されていたのだ……やはり必要だ。だが何とか扱いやすいようにしては欲しい、我も痛いのは嫌いだからな」

微笑みながら要望を出す。


《冥盾翼書ノクタルシア》が存在していたことで生き延びたのは事実。

だが、魔核に大きく影響しているのも事実。

使い手はあくまでもエクリナ、それでも欲しいと願っていた。


王の返答に微笑むティセラ。

「わかりました、何とかしてみましょう。師匠、《ヴェヌシエラ》から改良したいのですが、どうでしょうか?」

期待に答えるために、まずは骨子である魔盾盤の効率化をガンゴに提案した。


「そうだな、《アルヴェルク》が成功したんだ、改良はできるだろうが……同じ魔力吸収ではエクリナを支えられんだろうなぁ……」

頭を掻きながら新たな設計を思案するガンゴ。


「う~ん、内部の魔力導芯と補助魔晶の増加……一層のこと、外殻内部の梁にも魔法式を刻みますか?」

ティセラも頭を掻き、想定を口にしながら悩む。

「それは既に行っている……もう少し妙案を――」

その声に応えるガンゴは、さらに悩む。


「だったら、内部を多層構成にして魔法式を刻む面積を増やして――」

「! それは面白そうだな。だが厚みが――」

ティセラの新たな提案にガンゴが深掘りをする。


(ふ、本当に師弟だな)

二人の悩む姿が同じで、内心笑うエクリナであった。


「紅茶を淹れてこよう、少し離れるぞ」

役目を果たしたエクリナは台所へ向かうべく立ち上がる。


「糖分が足りません~。何か甘いものもお願いします」

「そうだな、儂にも頼むぞ~」

師弟は語尾を伸ばし、要望した。


「ああ、わかった。とびきり甘いのを用意してやろう」

エクリナはにこやかに答え、その場を離れる。


台所につき、水を入れたヤカンに火を掛ける。

冷蔵術具を開け、材料を物色、手持ちの菓子も取り入れ、即興のお茶うけを作っていく。

これからも世話になる《冥盾翼書ノクタルシア》の改良を楽しみにして湯が沸くのを待っていた。

来るべきに備え、活躍する姿を想い描いて。

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