イラスト部 顧問がきちんと来た
イラスト部ルールその肆拾参 何か話すときは鍵を閉めよう
「閉めていない時もあるけどな、あんたら!!」
「そうねぇ、でも今回はぁちゃぁんと来たわよぅ」
その言葉が聞こえた方を見ると俺たちが背にしていたドアの前にいた。
「かがりんいつから来てたの」
「そうねぇ……光くんが『あの人が……?』って言っていたあたりくらいかしらぁ」
そう言いながら後ろ手にドアを閉める。
「ドアをきちんと閉めていたら外に漏れないわよねぇ、彩ちゃん」
「一応ね」
「うふふ、きっとぉあなたたちが思ってるよりもだと思うわぁ。今度確認してみたらぁ?」
先生はまるで何か知っているような言い方だ。でもまあいくら咲子さんでもここの先生だからな。知っていて当たり前か。
「それで先生、一体何しに来たんだ」
「もぉ光くん先生なんてかたっ苦しい言い方しなくてもぉ大丈夫よぉ」
「で?」
「もぉ光くん冷たいわぁ」
……この人も本当イラスト部の人間だと思う。
「うふふ、まあいいわぁ。それにしてもぉまたやるんでしょぉ?」
こういう所が特に。
確かに咲子さんはサボり魔だし、授業に出ないこともある。はっきり言ってしまって先生としては最悪の人だ。っていうかどうしてなれたのかとも思えるほど。けれども咲子さんはこの学園の先生で、卒業者で、イラスト部の顧問なんだ。あの三人が任せた顧問なんだ。
こんな部活でも部活は部活だ。顧問が必要だ。無能じゃ学園の先生にはなれないだろう。けれどただの先生じゃこの部活の顧問は務まらない。この部活の顧問になれるのはどうあがいても
この先生だけだ。
「ん、何のこと」
動揺を悟られないように返す薄波先輩。そして薄波先輩、木村先輩、福谷先輩たちの目がスッと細くなる。先生の真意を探るように。でもそれが逆におかしく見える。
かえって先生は今までと変わらず先生はにこやかに微笑みを浮かべたままだ。
「そんな怖い顔をしなくてもいいわよぉ。他の職員はぁあななたちが何をするつもりは知らないわよぉ。ただぁ体育祭前だからあなたたちが動きそうだから見て来いってぇ言われただけよぉ」
それを言われても木村先輩たちの目は細められたまま。夢田も中井も顔は真顔。八神もいつも通り笑ってはいるけれどどこか顔が強張っている。
「うーん、信じられなくてもしょうがないかもねぇ。だからぁ一つだけ言わせてももらうわぁ」
先生はにこやかな顔のまま目を木村先輩たちのように目を細める。
ただ先輩たちとは違いどこか恐ろしさを感じた。いつもからは考えられないくらいの真面目な声音で
「あなたたち顔に出しすぎよぉ。またやるのぉって聞いた時ほぼ全員まず目が動いたわぁ。そのあと目を細めたりぃ、無表情になったりねぇ。知加ちゃんが誤魔化そうとしていたけれどぉ、顔がやりますって言ってたわよぉ。ねぇ今まではそれで大丈夫だったかもしれないけれどぉ、
これからそんなので戦えると思ってるの」
いつもの間のばしした話し方ではなくなった。ただそれだけ。それだけなのに
「この話し方も私は出来るわよ。でもどうしてあの話し方をするか分かる?」
誰も答えない。
いや答えられない
「簡単な話よ。いきなりこうなったら怖いでしょう?それが一番の理由。あなたたちが止める気なんてさらさらないのはわかるわ。あなたたち……彩ちゃん以外だけど美術部からの誘いを断り、未だにあの子と手を組んでいる時点でね。だからいやだからこそね。顔に出さないようにしなさい。何も無表情でずっといなさいって言っている訳じゃないの。言っている意味わかるわよね」
表情崩すな、動揺を顔に出すなって事だろ。
そして先生はいつもの顔に戻ると、
「それじゃぁそろそろ戻ろうかしらぁ。そうねぇ……動いているわねぇ。伝えなきゃぁ」
さっき言われたばかりであるのに俺が見ると全員の体が固まっている。そりゃそうだよな。俺も冷たい汗が背中を流れたような気はするが、気にしない。
「もぉ違うわよぅ。あなたたちは体育祭に向けて動いているんでしょう?」
誰も返事をしない。
先生は俺たちの壁を作ってくれている。いろいろと聞いて回っていてもそれは体育祭で勝つために情報を持とうとしているようにしか見えない。しかも後から何も言われない言い方。
嘘はついていない、ただぼやかしているだけ……
「…………ありがとう」
「何のことかしらぁ」
「いつも、よね」
「…………うん」
「あらぁ照れるわぁ」
両手を頬に当てかすかに赤く染める。……何だろうわざとらしく感じるな。
「じゃぁ頑張ってねぇ」
ひらひらと手を振りカギに手をかけたとき、何かを思い出したかのように顔だけをちらりとこちらに向け
「私の言った言葉覚えているかしらぁ。ほぼ全員ってところなんだけどねぇ」
全員がちらりと八神の方を向く。八神はフッと上を向き、コクリとうなずく。
「誰かっていうのは……教えてほしいかしらぁ?」
「…………教えてくれるの」
「そうねぇ」
そしてうふふと笑うと
「三年の中ではないわぁ」
それだけを言いがらりとドアを開き出て行く。
咲子さんのあんな顔久しぶりに見たな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ちょっとヒントあげ過ぎちゃったかしらねぇ」
でも言った通りなのは確かだ。あんな状態じゃやっていても意味がない。学生だから、そんなのは関係ない。あれをやるのなら、これからもやるのならあんな調子じゃいけない。
「あらぁ、着信?」
ブーブーっとマナーモードにしている携帯が鳴る。そこに書いてある名前はあの人。
「はいもしもしぃ?」
『相変わらずそんなしゃべり方をしているんですね』
笑いをこらえながらそんな事を言ってくる。はっきり言って余計なお世話だ。
『あなたのことだから余計なお世話とでも思っているのでしょうね』
「わかっているのなら言わないでくれますぅ?それで何の用ですぅ?用がないのなら切らせていただきますけどぉ」
『たくせっかちですね』
この人に言われたくない。
『それでどうですか』
「及第点という所ですかねぇ。少しお話したいことが」
『はい』
さてとある程度は先に手を打っておかないと。
誰にもばれないように、もちろんあの子たちにも。
たとえ私があの子たちの敵になってでも。
私が味方するのはこの人だけだ。
遅くなりました、すいません。
活動報告にも書きましたが目を盗んで書いている状態なのでこれからも遅くなる可能性が高いです。
本当に申し訳ありません!




