イラスト部 疑問に答える
イラスト部ルールその肆拾壱 真面目な疑問にはきちんと答えて
「真面目じゃなきゃ適当ってか?!」
「構わないけど」
「じゃあ二つほど」
木村先輩がコクリとうなずくと人差し指を立て口を開く。
「まず一つ。薄波先輩が居るのに何でオレなんスか?潜入やったらオレやなくてもええはず。次にもう一つ。オレがするにしてもオレのやり方やと、ここと繋がっているのを気取られるのは困るんスわ。やからここに頻繁に出入りするんは勘弁したい訳っスわ。しかもなんや聞いてる限りやと案外手ごわい相手みたいやし。なんでどうやってオレに伝えるんスか」
俊介はいつもの笑みを隠し真剣な顔をして聞く。
おそらくだが一つ目は自分の疑問を明らかにするためだろう。ただそれだけであってそこまで必要な訳ではないはず。木村先輩を始めとした三年の先輩たちが必要と言えば確実になにか理由がある。そこまでに自分の楽しい・面白いを入れる人ではないからだ。依頼の時は真剣だ、もちろんイラスト部の誰もが。いや普段が真剣ではないとは言わない。が、やっぱりどこか遊びが入るんだ。でも依頼は違う。自分ではどうにもならない、それでも泣き寝入りするにはつらい。という人が来ることはどうしても多い。そんな中誰が遊びを入れることが出来る?いや、出来る人はそういないだろう。あえて入れるとすれば相手を脅……ゲホッゴホン……注意するときぐらいだ。
木村先輩も真剣な顔をして答える。
「まず一つ目ね。確かに潜入っていう点だけで言えばちーちゃんも出来るわ」
そこで言葉を切り薄波先輩の方を見る。薄波先輩はそれを受けて口を開く。
「ん、基本的に私の潜入は人にばれないようにする。空気と同じ。だから見ることしか出来ない」
「…………今回は……話して、そこから情報がほしい……から」
ふと考えるような表情を見せて小さく
「つまり主催者から潜伏場所……その他もろもろ調べてくるって事……で良いんスかね」
そうつぶやく。木村先輩はそれを肯定するように小さく頷く。
薄波先輩と俊介は同じ潜入と言っても仕方が違うって事か。確かにほとんど何もわかってない今回はこっちの方が良いんだろう。上を逃せば結局同じだしな。
「それで、もう一つの疑問よね。そんなの簡単よ」
木村先輩はにっこりと笑い、とても演技がかった身振りで
「ごめんねしゅーくん、時間内に決まらなくて」
俊介はハッとしたように目を一瞬見開き意地の悪そうないつもの顔で笑い、イラスト部の何人かは面白そうに笑い残りはため息をつきつつも小さく笑う。そしてそれを俺は小さく笑いながら見る。
「しゃーないっスよ、急に来たんはオレっスし」
「でも本当にすいません。こんなに決めるのにかかるとは思いませんでした」
木村先輩と違って二人とも演技がかった身振りは無い。八神に至っては笑ってはいるものの少し困ったように眉を下げるなんて表現も入れている。
「まあ横道にそれるのはいつものことだしねっ、しょうがないよ」
「みんなわるノリしちゃったし」
「…………ストッパーが……ね」
「ん、いない」
「それ言っちゃお終いじゃないの」
最初の演技がかっていたのがまるで嘘かのように、自然にふるまう木村先輩。まあ最初のはわざとだろうけどな。
さてと、そろそろか。
「んじゃあ木村先輩決まってから俺が俊介を呼んだ方が良いよな」
「そうね。また待たせちゃうわけにもいかないしね」
木村先輩はにっこり笑いながら言う。首を俊介の方に向け
「それでも構わねぇか、俊介」
と聞く。
「もちろんや。……お前苦手そうやのに案外上手いなぁ」
俊介はしみじみとした風に言う。俺は笑って
「なんのことだよ」
ととぼけてみせる。俊介もフッと笑って
「なんでもないわ、ほんならオレそろそろ行くっスわ」
「ええごめんね。わざわざ来てもらったのに」
少し申し訳なさそうに眉を下げて言う。……今までにこんな態度を取ったことがあっただろうか、いや無い気がするぞおかしいな。
「ひーくん?」
「……んだよ」
「ううん、何か考えてるんじゃないかなぁって思って」
「そりゃある程度は考えてるけど」
「私のこと?」
俺は違うということが伝わるように首を振る。
……ほんとなんでわかんの?
「それじゃ」
そう一言言って俊介は鍵を開け出て行く。
「ひーくん」
そう言われもう一度鍵を閉めに行く。そして全員の方を見て小さく頷く。
「さてと聞き込みなんだけど出来るだけ早くしないといけないの。体育祭は待ってくれないし、それを逃すわけにもいかないからね。……だからりーちゃん、今回は私たちも動くわよ」
「…………了解」
夢田がふと何かを思い出したかのように口を開く。
「りーちゃん先輩は今回何か作ったりしないのっ?」
「…………必要なら」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
八神が焦ったように間へ入ってくる。何かいま聞き直すところがあったか?二、三年共に疑問に満ちた顔でそちらを見る。向こうは向こうで疑問に満ちていたが。
「作るってどういうことですか?」
「…………そのまま、だけど?」
「なつきがいいたいのは なにを?ってことじゃないの?」
「あ、はい。みやっちゃんの言う通りです」
何をって……見ていないんだっけ一年は。
木村先輩はうーんと唸りながら数分考え込んでいたが答えが出たらしく口を開く。
「そうね……時間も遅いし明日で良いかしら。まあ簡単に済むといえば済むのだけど……やっぱり時間がね」
そう言いながらちらりと時計を見る。針はそろそろ縦一直線に並ぼうとしている。
「はい、わかりました」
八神がうなづくのを見るとくるりと顔の向きを福谷先輩の方に変え、名前を呼ぶ。
「…………何?」
「作ってほしいのがあるの。家に帰って言うからそれでもいける?」
「…………いつまで」
「そうね、まだはっきりしていないんだけど大体一週間ぐらいかしら。大丈夫?」
「…………多分。…………そんなに難しくなけれ、ば」
「そうわかったわ」
「それじゃ明日から各自動くように。おそらく上は尻尾を出さないでしょうけど下にいけばいくほど見つけやすいだろうから」
そうまとめ明日以降各自で動くことになり解散した。
とても簡単には終わらなさそうな依頼。
まさかあんなことになるなんて誰が思っただろう。
いや誰も思っていなかっただろう。思っていたら、わかっていたら何とか回避しようとするはずだから。誰とは言わない、全員がだ。
__________波乱に満ちる体育祭まで残り五週間。




