イラスト部 慣れという名の罰ゲーム
イラスト部ルールその参拾陸 体育祭でのコンセプトは大事
「必要性わかんねぇから!!」
「ってことで……応援に関してはまだ何となくしか決まってないから出来ないから……男装かしら」
そんな事を言いながら木村先輩は洋服を出す。
「今年のリレーのコンセプトは、『執事とお転婆お嬢様』って感じで」
そんなとんでもないことを口に出しながら。ちなみに言うとコンセプトなんてもの体育祭で決める必要性などない。つまりこの人たちが勝手にやっているだけ、楽しみたいだけなんだ自分たちが。俺的には何も楽しくない訳で
「一応聞くが……そのお転婆お嬢様って誰がやるんだ?」
すると夢田と先輩方は心底不思議そうな顔をして俺に指をさしてきた。ですよねー、わかってたよ。でもな……地球を一周回るどころか六週ぐらい回って許したとしよう。許さないけど、許したくないけど!!
「何で俺がお嬢様しなきゃなんねーんだよ!!」
ひらひらじゃねーか、スカートじゃねーか!走りづら過ぎるだろうが!!
「え……だって燕尾服彩夏着てみたいし」
「着てみたいってだけで、俺まで巻き込むなよ!!」
「…………でも光、去年のを見たら…………スカートでも…………走りづらいってことはない…………でしょ?」
「ん」
反論できない……
去年、男装女装リレーで大差をつけてイラスト部が一位になったのは俺が初めものすごく大差をつけたから。
ちなみにその時もどちらかというとロングに入るようなスカートで。周りの男子も何人かも同じようなスカートでおたおたしている中ぶっちぎってやりましたよ。で、その時のコンセプトが『真夏』って感じで麦わら帽子と白いワンピース姿で走りましたよ。寒かったね、あの時は何だか。服のせいなのか、心のせいなのかなんなのかは知らないけど。
「まあまあとりあえず罰ゲーム行こっか?」
ちょっとそこのスーパー行こっかでもいうように言ったよ、この人。
「あ、そうそうひーくんはそこに残っててね。私はちょっと服のサイズとかもいろいろ確認する必要があるから」
そして俺と木村先輩以外が一人一人試着室の中に燕尾服をもって入っていく。そして一番最後に残った福谷先輩がフッと後ろを振り向いて……相変わらず片目は隠れたままだけど
「…………覗いたらダメだから」
「覗かねーよ!」
「…………そう」
そして入ろうとしてまた振り向くと
「…………私のはともかく…………他の人…………見たら…………ね?わかるよね」
コクコクと急いでうなずくと安心したかのようにやっと中に入っていった。って、まてよ……?何であの人自分のはともかくなんて言い方したんだ?
「……ま、いっか」
深くは考えないことにした。
「ひーくん、私の目の黒いうちは誰も見させないからね?」
「だから見ねーって!!」
ま、とりあえず後ろを向いてゲームでもしておくことにした。
「さて、お披露目ね」
そう言う木村先輩の声が聞こえたので試着室の方を見る。
「ちゃんと見て、ちゃんと感想を言うこと。OK?」
「お、OK」
「よし」
何がよしなのか全然わからんが……まあ、感想ぐらい別に……なぁ?
そんな事を考えている内に次々に試着室のカーテンが開かれる。……が、一年二人がいつまでたっても出てこない。……恥ずかしいんだろうな。
しかし無情にも木村先輩はシャーと勢いよくカーテンを開ける。
「はい、さっさと出る」
「けど、恥ずかしいですから……」
「たしかに」
勢いよく開かれたカーテンを二人して体の方に持って行って隠している。
「こんなので恥ずかしがってどうするの?大体恥ずかしがってたら余計に恥ずかしいの!」
「…………今恥ずかしくても意味ない。…………体育祭で着るんだから」
『うっ…………』
二人はそう唸ると顔を真っ赤にして試着室の中から出てきた。髪の長い八神は後ろで一つにまとめていて、燕尾服を着てみたいとかほざいて訳のわからないコンセプトにした夢田も、ツインテールを下ろし後ろで一つにくくっている。他は髪が短いからかそのままで、元々眼鏡をかけている薄波先輩はあれとして福谷先輩もかけている……のだが何せ片目が隠れていて必要性があるのか……
全員着こなしていて……かっこいいなこいつら。なんかすごく負けた気がする。
「あの、どうですか……?」
心配そうに問いかけてくる。俺は真面目に全員を見ていたからか不安になったのだろうか。フーと息をついてニコリと笑って
「安心しろ、似合いすぎなくらいだ」
そう言うと全員が安心したようにホッと息をつき、いつものように騒がしくなり始める。
そんな中福谷先輩が目をしばたたかせ始めた。
「どうかしたのか」
「…………目、痛い」
「何か入ったか?」
そう思い隠していない方の目を見てみるが何も入っていない。ってことは……隠している方の目か。まあ、髪で隠しているからな。髪でも入ったか。そう思い、隠している方の髪に手をかけようとした。
「……っ!!」
‶パシン”
そんな音が部室内に響き渡った。
『えっ……?』
その音は俺の手を叩いた福谷先輩の手の音
その手は震えていて
その見えている方の目も震えていて
「…………ごめん」
そんな声も震えていて
気づいた
これは触れてほしくない
黒いところ
やってしまったな……
「俺の方こそ悪い」
そう言うことしか出来なくて。
部活はそこで解散となった。
最後に木村先輩には大丈夫だという風ににっこりと笑って小さな紙切れを俺に渡してきた。
見ちゃだめだよといつものように笑って
クラスで決めるときに司会の子に渡すことと一言付け加えて
でも、やっぱりどこか気にしているのが見え隠れしていて
全員少し気にしているのが見えたような気がして
明日もう一度謝るか……そう思い明日を迎えることしか出来なかった。
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やってしまった
もう大丈夫かなと思ってたのに
やっぱりダメみたいだ
部活の雰囲気も悪くなったし
きっと光のことだから気に病んでるんだろうな
明日もう一回謝った方がいいだろうか
でも、そうしたらまた気に病んでしまうだろうか
わからない
でも、あの調子じゃいけない
体育祭なんだから
私が不協和音になる訳にはいかない
中間でいなきゃ
間にいなきゃ
とりあえずいつもの私で
皆に接しよう
きっとそうしたら大丈夫
グッと目を閉じて
大丈夫大丈夫と呪文のように心の中で繰り返す
そんな事しか出来なかった




