第83話 【七天大魔王】
「なぁ智也……そろそろ周りを探索しないか?」
「そうだな」
4階層にテレポートしてから3時間、俺たちは広い青空をぼんやりと眺め続けていた。これだけ広い世界があるというのにモンスターが一匹も現れない。しかも他のクラスメイトも誰一人来ない。
「とりあえず、どこに向かう?」
俺が聞くと全員が「森に行きたい」と答えた。遠目に見える森は緑豊かで、人が住んでいる可能性も十分ある。政宗先生がいるかもしれない。
俺たちは立ち上がり、2キロほど先の森へ歩き始めた。
「本当に草原しかないな。遥か彼方まで見渡せる」
4階層はなぜこれほどモンスターがいないのか。どう考えてもおかしい。
10分後、何事もなく森に到着した。生物の気配が全くなかったため、俺たちは躊躇なく森の中へと踏み込んだ。
森の中を通り抜ける風の音、踏んだ小枝が折れる音、そして俺たちの話し声だけが響く。静かすぎて逆に不気味だ。
しばらく進むと、森の中でひときわ明るい一角があった。そこへ向かうと、縦長の石の台座の上に見慣れない真っ赤なボタンが設置されていた。異世界に来てから初めて見るような代物だ。
「蒼真、これ何か分かるか?」
振り返って聞くと、蒼真は首を振った。
「分からない。神眼を使っても反応しない」
やはり何者か判断できないか。
「一回押してみる?」
晴人がボタンの上に手を置きながら皆を見回す。特に問題なさそうなので「押してみれば」と答えた瞬間、晴人がボタンを押した。
カチッ。
特に反応がない。
「何もないな」
晴人がそう言った瞬間——目の前に人物が現れた。上半身は裸で、体表は紫色。澄んだ青い瞳に長い髪、全身から溢れ出る異質な力。屈強なおっさんだ。
「な、なんだこいつ?」
蒼真が解析を試みると、魔人らしいという結果が返ってきた。
その魔人が俺たちを凝視した。
「我は七天大魔王が一人、神の肉体を持つ剛力のデイベスト!貴様らをここで殺す為に生まれたァッ!」
宣言と同時に晴人が殴り飛ばされ、後方の木々を次々となぎ倒しながら遥か彼方へ吹き飛んでいった。
「なっ!」
速度すら見えない。何も捉えられない。
とにかく魔法を叩き込むしかない。俺は接着法で溜めた魔力球を全部使い、全身全霊のファイアビームを放った。
「いいぞ!いいぞ!貴様らよ!だが、その程度では熱湯にしかならないぞ?」
颯真も時空歩法でデイベストの背後へ回り込み、先端を鋭く尖らせた巨大な岩を火魔法の爆発で吹き飛ばした。デイベストに直撃し鈍い音がした——が、無傷のまま平然と立っている。
「颯真!智也!こいつのレベルは245だ!今の俺たちでは勝てない、逃げるぞ!」
プライドの問題ではない。ただ、背を向けた瞬間に腹を貫かれる可能性の方が現実的だ。
「逃げるだとぉ?挑戦者たるものが勇猛果敢に俺に挑まなくてどうする!?その二人は後回しにして、お前から先に始末するとしようか」
デイベストが不敵な笑みを浮かべ、蒼真へ向かって歩き始めた。俺たちが阻止しようとしても足を止められない。
デイベストが蒼真の目の前に立った。
「あっ、あっ……」
蒼真が後ろを向いて逃げた瞬間、頭を掴まれ地面へ叩きつけられようとした——その瞬間、デイベストが横から吹き飛んだ。
「ふぅ……間に合ってよかった」
政宗先生だった。
「お前たち、4階層に来るのが思ったより早かったな。俺、寝てたぞ」
「とにかく、あの七天大魔王のデイベストを倒してください!」
政宗先生がデイベストの着地した方向を見ると、吹き飛んだ衝撃で立ち込めた煙の中からデイベストが歩いて現れた。
「挑戦者は挑戦者でも、コイツらとは違う強いやつもいるんだな。4万年前を思い出すぞッ」
「4万年前だぁ?」
4万年前……七天大魔王という名前も気になるが、4万年前に一体何があったのか。
蒼真がゆっくりと立ち上がり、解析した内容を話し始めた。
「奴は4万年前に出現した、5万年前の魔王の残留物が分裂して生まれた7つの存在——七天大魔王の一人です。現在世界を支配している魔王は5万年前の原初の魔王の本体が回復し続けている状態のものですが、七天大魔王は原初の魔王から完全に分離した別個体です」
「そして、彼らは4万年前にある人物によって全員殺害され、魂の状態となりました。恐らくこの4階層は、その7つの魂を幽閉するための空間——七天大魔王にとっての死後の世界として機能していると思われます」
デイベストが蒼真をちらりと見た。
「解説どーも。まぁ、奴の言う通りだ。俺は昔変な奴に殺された。しかもそいつ、お前と似たような顔……というか、完全にそっくりだった」
政宗先生と似た顔。政宗先生が地球の記憶は持っているのに自分自身に関する記憶を持っていないことと、何か繋がりがあるのかもしれない。
「実力はお前の方が圧倒的に劣るけどな。さっさとやろうぜ?」
「分かった分かった」
政宗先生が瞬時にデイベストへ肉薄し、顔面に鉄拳を叩き込んだ。デイベストは金槌で打ち込まれる釘のように顔面から地面に沈み、さらに連打で押し込まれていく。
デイベストも抗うように馬乗りの政宗先生を殴って吹き飛ばした。
「クソッ……4万年前の奴がお前と重なりすぎてムカつく。さっさと殺してやりたい」
「ふーん、じゃあやってみろ。次の一撃は今まで以上の威力にすると約束してやる」
デイベストの全身が赤く染まり始め、青い瞳が赤へと変色した。
「本気で叩き潰すッッッ!」
デイベストが俺たちの視界から消えた。いや、消えたのではなく——政宗先生の方向から断続的な打撃音が聞こえ続けている。超高速で連打しているのか。
「はぁ……デイベストとやら、さっさとパンチを打ち込んでこいよ。さっきからずっと俺の肌を撫でてるだけじゃないか」
政宗先生の超然とした煽り文句。それに憤怒したデイベストが一瞬止まった。
「お前は絶対に殺す!右腕に全力の魔法と腕力を注ぎ込む!」
魔法と腕力の混合技。右腕が極限まで肥大化し、デイベスト本体の胴体すら超える大きさになった。
その拳が振り下ろされた瞬間——猛烈な轟音が響いた。
政宗先生は微動だにしなかった。
「なッ!?」
「やはり駄目か。俺の成長倍率のせいで、完全にお前に適応してしまったよ」
「せ、成長倍率だぁ?」
政宗先生はため息をついてから、軽くデイベストの胸にデコピンを当てた。
デイベストの胸に大きな風穴が空いた。
「がッ!?はッ!?」
デイベストの体がみるみるうちに萎み、干からびた魚のようになって消滅していった。
「よし、お前たちとりあえず来い。俺が設置した家まで案内してやる」
俺たちは政宗先生の後に続いた。
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■常時型上級スキル
肉体覇王(3)→肉体覇王(9)
超越肉体(2)→超越肉体(6)
拳法の覇者(160)→拳法の覇者(590)
レベリングモンスター(5670)→レベリングモンスター(10.2K)
性能加速(3000)→性能加速(8310)
極限的肉体(870)→極限的肉体(3790)
■基礎スキル
拳(78K)→拳(130K)
連撃(107K)→連撃(201.3K)
■新規取得
常時型上級スキル:
・シールドブースター:常時型上級スキル【フィールド】の効果を+[Lv]%する
・肉体の頂点:肉体覇王の最初の効果を+[Lv*10]%する
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