↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/140

第80話 【三階層】

草原のセーブポイントに辿り着き、置いてあったベンチに腰を下ろした。俺は自分の弱さを悔いていた。


魔熊に対してファイアビームが一ミリも通らなかった。政宗先生に教わった魔力ストックの技術も、今の実力では安定させるのが難しい。練習はしているのだが——魔力を包む際に漏れ出ないよう破れない頑丈な泡を維持する術式の構築が、思っていた以上に難しい。


2時間ほど休んだ後、俺たちは3階層へ向かうことにした。


「蒼真、3階層にはどうやって行くんだ?」


「手に入れたチケットを空にかざすとワープできるらしいよ」


「本格的に後戻りできないんだな……」


「よし、何があるか分からないから4人一緒にせーのでいくぞ」


全員の顔を確認してから「せーの」と言った。


次の瞬間、周囲が石造りの壁に覆われた空間に変わっていた。


「ここが3階層か」


「なんかダンジョンみたいだな。蒼真、詳細は分かるか?」


「うーんと……ダンジョン形式になってて、どこかにボス部屋があるから、それを探さないといけないみたい」


「ボス部屋の場所は?」


「それが……閲覧不可になってる。4階層の詳細も同じくダメだ」


「政宗先生のステータスを覗こうとした時みたいに、神眼の限界を超えてきたってことか」


「なおさら慎重に行かないといけないな」


俺たちは死角が生まれないよう固まって移動した。内部は迷路のように入り組んでおり、湿気が高く空気が重い。


そんな中、前方のT字路からひょこっとゴブリンが現れた。


「ゴブリンか……」


ただ、明らかに普通のゴブリンとは雰囲気が違う。


「蒼真、鑑定できるか!」


「できます。レベルは100前後です」


は?レベル100前後のゴブリン?ということはオークが出てきたら軽くレベル140を超えてくる可能性がある。モンスターの強さの上昇ペースがおかしすぎる。


「ギィィィ」


ゴブリンが突進してきた。俺は濃縮したウォータージェットを一気に解放する。ゴブリンの顔面が地面に叩きつけられ、ピクピクと痙攣しているところへファイアビームを追撃し、なんとか仕留めた。


「ゴブリン一体仕留めるのにこれだけかかると……先が思いやられるな」


「とりあえず進もう。地図か何か見つかるかもしれない」


颯真の言葉に従い、俺たちはさらに奥へと進んだ。


「なぁ蒼真、魔術の練度を上げるにはどうしたらいいかな」


「魔術かぁ……訓練の時みたいに、魔術に対する理解度を深めていくしかないんじゃないかな」


「やっぱり理解度か。同じ火でも、どうイメージするかで威力は変わるよな」


俺は歩きながら指先に火を灯し、想像力が与える影響を試し始めた。


「火が燃えているというだけで考えたら……この程度か」


ただ燃え盛るだけの火だ。


「酸素と魔力が着火剤として激しく反応しているものと考えたら……」


火力は変わらないが、火の造形が鮮明になった気がする。


「さらに、その火の粒子や原子レベルの動きまで考えたら……うっ、頭が痛い」


俺の脳みそではそこまでの演算は厳しい。ただ、今の段階的な思考を踏んでいくことで、少しずつ理解度が増しているのは感じる。


そこで気づいた。魔力を泡として全体を包むのではなく——密度を高めて接着剤のように固める方法なら、薄く頑丈な泡を維持するという俺には難しいプロセスを踏まなくて済む。しかも魔力同士を接着させるのは、泡を維持するよりも遥かに簡単だ。維持コストも低く抑えられる。


魔術の理解度が上がるということは、単に知識が増えるだけでなく術式の構造そのものが変化して効率が上がるということなのかもしれない。


早速試してみた。接着法で魔力を固めていくと——自身の最大魔力容量のおよそ12倍の魔力球を保管することに成功した。政宗先生が言っていたMAX4.6倍という数値は維持コストが1割の場合の話だ。俺は維持コストを0.25割程度に抑えられているから、それを超えられた。


「ファイアビームもウォータージェットもまだ改良できそうだけど……今はまず接着法の安定化を優先しよう」


そんなタイミングで——実験台が現れた。オークだ。


ただし、油断はしない。さっき、このオークより弱い魔熊に殺されかけたのを忘れていない。


「蒼真、レベルは?」


「138です」


「よし、俺に任せろ」


「また瀕死にならないでくれよ?」


「幸運神があるからって慢心するな。本当に頼む」


颯真と晴人が心配そうに声をかけてくる。ありがたい。ただ今の俺には自信がある。


「今までの12倍の威力でファイアビームを撃ち込んでやる」


手をオークへかざし、接着法で固めた魔力球を全力でファイアビームへ変換して放った。石造りの通路を目を焼き尽くすような光が満たし、轟音が響き渡る。


撃ち終えると、オークの胴体には大きな風穴が空いていた。オークはそのまま倒れ、レベルが8上昇したことを告げる音が頭の中に響いた。


後ろの三人が唖然とした顔でこちらを見ている。


「す、すげぇぇぇぇ!どうやったんだ!?固有スキルって魔力回復速度の向上だけじゃなかったのか!?」


「魔術に対する理解度が少し上がった……かな」


俺自身も想定以上の威力に顔を引きつらせながら答えた。


消費した魔力球を接着法で再び回復させながら、俺たちは3階層のダンジョンをさらに進み始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。