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第78話 【二階層】

俺たちのパーティは路地裏を出て、蒼真が解析した際に表示されたマップをもとに2階層への階段を探し始めた。周囲の魔物が黒いローブを羽織った俺たちを怪しそうに見ながら通り過ぎていく。本当に綱渡りだ。


そこで颯真が思い出したように言った。


「おい!4階層に到達するまで5日間だろ?飯どうするんだ?」


俺は聞いた瞬間に踵を返し、駆け足で路地裏へと戻った。


「雪乃はまだいるか!?」


まだ残っていた雪乃に頼み込み、持っていたリュックいっぱいに食料を生成してもらった。ぎりぎり間に合った。


「危なかった……颯真、もっと早く言えよ」


「いや、俺も今思い出したんだって」


このまま食料なしで5日間行動していたら、普通に餓死していた。助かった。これも晴人の幸運補正の範囲内だったのだろうか。運の定義が曖昧すぎて判断がつかないが。


気を取り直して、俺たちは再びマップをもとに2階層への階段を目指した。距離はおよそ1キロ。


移動しながら気づいたことがある。魔物たちは「魔コイン」という通貨で取引しているらしい。露店でメビウスチキンの丸焼きが1500魔コインで売られていた。魔コインは円よりも価値が高そうだ。


……それはそれとして、メビウスチキンってモンスターの名前だよな。共食いになるとは思わないのか?魔界の感覚は分からない。


歩くこと10分ほどで、2階層へ続く階段に辿り着いた。そこには屈強な魔物たちが大勢集まっており、ものすごい人口密度だ。人混みをかき分けながらなんとか階段の入口に到達したが、密度は少し下がった程度でまだ大量の魔物がいる。


これを高度500メートルまで階段で登るのか。


「人……多すぎっ」


思わずそう口からこぼすと、隣に立っていたオークが俺を見て口を開いた。


「お前、新入りか。2階層はいろんな凶暴なモンスターが巣くっていて、そいつらを狩って生計を立てている奴らも多い。だからこんなに賑わってるんだ。3階層は2階層にいる4体のボスのうち1体を倒せば開放されるが、登ったら最後だから、そっちに向かう奴はまずいない。まぁ、階段は我慢するしかないな」


「ありがとうございます……」


なるほど、会社に出社するための満員電車に乗るサラリーマンのようなものか。そう思うと少し気が楽になった。


それから2時間、体力が限界を迎えた頃にようやく2階層に辿り着いた。


「ダァダァダァ……死ななくてよかった……」


他の3人も四つん這いになって地面に倒れ込んでいた。全員、死にそうな顔をしている。


「はぁはぁ……とりあえず行くぞ」


「「分かった……」」


おそらく、他の勇者たちの中では俺たちが一番乗りで2階層に到達したはずだ。


「蒼真、ここから俺たちはどこを目指せばいい?」


「今……解析にかける」


10秒ほどで蒼真が口を開いた。


「2階層は4つのエリアに分かれてる。森エリア、風エリア、火エリア、水エリアの4等分だね」


「それぞれの特徴は……水エリアは文字通り水中がメインで、行ったら溺死する。火エリアは耐火性の高い種族向けで、俺たちが行ったら焼死。風エリアは大きな木々が立ち並ぶ薄暗い場所で、家一軒を吹き飛ばす規模の暴風が絶えず吹き荒れてる。消去法で行けるのは森エリアだけだね」


「ただし——森エリアは環境が一番穏やかな分、ボスの強さは他の3エリアのボスより圧倒的に上らしい」


俺と颯真と晴人は顔を見合わせてから言った。


「俺たち、森エリアしか選択肢ないじゃないか」


「環境に殺されるよりはマシだよ。ボスが強いってことは、それだけ倒した時に得られるものも大きいってことだしな。ここは妥協するしかない」


蒼真の言う通りだ。


「じゃあ森エリアはあっちだ。行こう」


蒼真が指さした方向へ、俺たちは歩き出した。

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