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第71話 【目印】

出口も分からない樹海を歩きながら、俺は食料も探していた。


ただ、魔界の木々に実っている果実はどれも独特の禍々しい色と形をしており、口に入れる気になれない。見た目だけで食欲が失せる。


「どうしたもんかな……」


頭をかきながらひたすら前へ進む。樹海の奥に向かっているのか、それとも元の場所に戻っているのかすら分からない。そんな時、木にバツ印がつけられているのを発見した。


俺がつけていたのはチェック印だ。バツということは別の誰かがつけたのか。俺はその印を辿り始めた。


魔界の薄暗い空が、少しずつ更に暗さを増していく。夜になったら凶暴な魔獣が獲物を求めて出てくるだろう。そう考えながらも、足を止めるわけにはいかない。


やがて、前方に人影が見えた。


「おーい!」


声をかけると、人影が振り向いた。


「誰!?」


驚いたような声が返ってくる。人間だ。走り寄ると、その顔が鮮明になってきた。同じクラスメイトの小鳥遊雪乃だった。


「あ!智也君、君もこの樹海にいたのね」


「雪乃か。俺も迷ってたんだよ。もうすぐ夜になりそうだし、早く出たい」


「それなら、私が向かっている方向に進めば出られると思うよ」


「まじで!?」


「政宗先生の結界に包まれて吹き飛ばされている途中、一瞬だけ意識が戻った時に見えた感じだと、この先にまた地獄の峡谷があるはずよ」


「なるほど。じゃあ一緒にマボロシ森を目指そう」


「そうしましょう」


二人で前へ進んでいくと、また光が見えてきた。


「樹海の出口かしら」


そう言いながら近づくと——さっきオーガと戦った村だった。


「あれ、この村……さっきここで戦ってたんだよ」


「そうなの?ていうか、村の端にあるオーガの死体に魔犬が群がってるから、迂回しながら行きましょう」


死体を放置したらああなるのか……というか待てよ。村から出て前へ進んだら雪乃を発見して、また村に戻ってきた。つまり——俺、ずっと樹海の奥へ向かって歩いていたのか。危なかった。


迂回しながら更に進み、空がすっかり暗くなった頃についに樹海から抜け出すことに成功した。


「うおっしゃぁ!!雪乃、サンキュー!」


「とりあえずここでテントを立てて、ご飯にしましょう」


「食料もテントもあるのか?」


「今から作る。固有スキルが【万象錬成】なもので」


「武器錬成や魔剣創世よりも強いじゃないか!」


「便利ではあるけど、そんな単純な話でもないのよ。器用貧乏みたいなものかしら。あらゆるものを作れるけど最高級品は作れない。テントや食料くらいならすぐ作れるけどね」


そう言うと、雪乃は地面に手をかざした。するとテントが二つ、四角いテーブル、その上に二人分のパンがポンッと現れた。


「美月の武器錬成なんかは、曖昧で抽象的なイメージでも形にできる。でも万象錬成は違う。作るものの分子構造レベルまで細かくイメージしないと形にならないの。このテントと食料を作るだけでも、相当な集中力が要るのよ」


「それは……それなりに大変だな」


万象錬成は頭の良さがそのまま威力に直結するスキルらしい。その点、特に深く考えなくても使える無限魔力炉は思ったよりも当たりな固有スキルなのかもしれない。


そんなことを考えながらパンを頬張り、テントの中へ潜り込んだ。そして、俺はあっという間に眠りに落ちた。

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