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第69話 【ミルワーム】

何事もなく戻ってきた政宗先生は体についた埃を払いながら、峡谷の底について話し始めた。


「転移魔法を使わないと底には降りられない。崖の穴に生息しているメガミルワームが厄介だからな」


まぁ想像通りだ。


「底には敵影はなかった。真っ暗で視界ゼロだが、火属性魔法の【人工光源】を使えば問題ない。そして崖に大きな穴を見つけた。そこから地上に抜けられると思う」


クラスメイトたちが頷きながら話を聞いた。政宗先生はすぐに転移魔法を展開し、全員を地獄の峡谷の底へ送り込んだ。


辺り一面、完全な暗闇だった。魔界の地上ですら薄暗かったのに、これほど深く降りると光の欠片もない。


シュボッ。


政宗先生が【人工光源】を灯した。瞬時に周囲が明るくなり、近くにいた小さな魔獣が岩陰へガサガサと逃げ込んでいく。


「よし、俺が見つけた穴まで案内する」


全員が周囲を警戒しながら政宗先生の後ろについていく。蒼真は歩きながら静かに辺り一面へ神眼による鑑定を繰り返し、熟練度を稼いでいた。


しばらく進んだ頃、峡谷の底に近い崖の穴からメガミルワームが顔を出し、美月へ飛びかかろうとした。


美月はそれに気づいた瞬間、アサルトライフルとミニガンを構えて応戦した。


「あんたら、少し離れてて!」


クラスメイトたちを下がらせると、最後にロケットランチャーを一発叩き込み、メガミルワームの頭部を吹き飛ばした。


「楽勝ね」


その言葉が終わるか終わらないかのうちに、崖壁の穴という穴からメガミルワームが一斉に顔を出し始めた。数十……いや、もっと多い。穴全体が蠢いている。


政宗先生がそれを感知し、瞬時に全員を結界で包んだ。


「なんだなんだ!?」


恒一が興奮気味に叫ぶ。


次の瞬間、地面がガタガタと震え始めた。そして——浮き始めた。


「まずい!これはメガミルワームじゃない、テラミルワームだ!」


政宗先生が叫んだ。テラミルワームとは、つまりメガミルワームを遥かに上回る規格外の巨体を持つ個体ということか。


地面がどんどん隆起し、地獄の峡谷の縁すら越えていく。その浮き上がった地面ごと、俺たちは四方八方へと吹き飛ばされた。


空中を舞いながら下を見ると、隆起した地面が崩れ落ちていく中から、見るも凄まじい巨大なミルワームが姿を現していた。どこまでも吹き飛ばされ続ける感覚の中、クラスメイトたちと政宗先生の姿がどんどん遠ざかっていく。


そして俺は、意識を失った。



目が覚めると、巨大な木々が立ち並ぶ深い樹海の中にいた。


10km以上は吹き飛ばされたのかもしれない。それでも無傷でいられるのは、政宗先生が展開してくれた結界のおかげだろう。


俺は立ち上がり、辺りを見渡した。どこもかしこも同じような木々が続いており、方角すら定かでない。


「他のクラスメイトか政宗先生と合流しないと……」


最初の目標地点である幻の迷宮を目指すべきか。地獄の峡谷に戻っても、テラミルワームに全て抉られて原型は残っていないだろう。となれば、目的地へ向かいながら仲間と合流を図るしかない。


それ以上に問題なのが食料だ。政宗先生の空間ボックスの中に全員分の食料が入っている。先生とはぐれたということは、補給手段がなくなったということでもある。思っていたより早く、切実な問題になりそうだ。


俺は迷わないよう木にチェックの目印をつけながら歩き始めた。20分ほど進んだ頃、樹海の暗い奥の方に微かな光が見えた。


光がある場所には何かがある。俺はそこに向かって全力でダッシュした。


光の正体は、何らかの種族が暮らす集落だった。

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